海外旅行、あるいは海外出張に行くとき、お金はどのような形で準備しているでしょうか?多額の現金を持ち歩くのは防犯面で良くないため、クレジットカードメインの方も少なくないと思います。しかし、クレジットカードは限度額があるため、思うように使えないこともありますし、海外にいる間ずっと限度額を気にしなくてはなりません。一時増額もありますが、カード会社によっては対応してもらえないこともあります。そんなとき、1枚持っておくと安心なのが国際キャッシュカードです。
国際キャッシュカードとは?
「国際キャッシュカード」といっても、普通の銀行のキャッシュカードのように一般に浸透していないため、聞きなれない方もいるかもしれませんね。国際キャッシュカードは、海外に短期滞在する際、クレジットカードの代わりとして、あるいは補助として活用できるキャッシュカードです。どんな特徴があるのか、一般的なキャッシュカードとの違いも織り交ぜながら紹介します。
■国際キャッシュカードとは?
銀行など金融機関で口座を開設する際、通帳だけでなくキャッシュカードが発行されます。キャッシュカードが発行されるのは、銀行のATMはじめ、コンビニのATMなど、銀行の窓口で手続きすることなく、少額な現金の預け入れや引き出しを可能にするためです。これにより、ある程度はお金を口座から引き出したいときに引き出すことができます。
しかし、こうした一般的なキャッシュカードは日本国内のATMで、日本円で引き出すことを想定して作られているため、海外で使用することはできません。海外でお金が必要になっても、ある程度現金として換金しておくか、クレジットカードを持ち歩くか、という選択肢しかないのです。クレジットカードも限度額があるので、海外で急にお金が必要になったとき対応できない可能性があります。
そんな海外でお金が必要になったときに活用できるのが、国際キャッシュカードです。国際キャッシュカードは、海外のATMでも使えるキャッシュカードのこと。海外でお金が必要になったとき、日本と同じようにATMからお金を引き出すことができます。引き出しは現地通貨で、引き出しのときのレートですぐに口座から引き落とされる仕組みです。
■国際キャッシュカードの特徴は?
国際キャッシュカードの大きな特徴は、自分の金融機関の口座から、好きなタイミングでお金を引き出せることです。しかも、日本円ではなく現地通貨で引き出せるため、換金する必要がありません。そのまま引き出した通貨を使用することができます。
しかも、200カ国以上の国で国際キャッシュカードの使用が可能です。ちなみに世界の国の数は325カ国といわれることもありますが、日本で承認されている国の数は196カ国なので200カ国以上で利用できるなら、ほぼどこでも使えると考えて問題ないでしょう。
それでは、なぜ世界のほとんどの国で国際キャッシュカードが利用できるのか、理由は国際ブランドであるVISAのPLUSやMASTERCARDのCirrusがバックにあるためです。VISAやMASTERCARDといったら、クレジットカードやデビットカードでも使われている国際ブランド。国際キャッシュカードが世界のほぼどこでも使えるのは、こうしたネットワークで世界とつながっているからなのです。
■国際キャッシュカードを利用する方法は?
国際キャッシュカードを利用したい場合は、国内で使っているキャッシュカードを国際キャッシュカードへ切り替える必要があります。一部金融機関では海外対応のものもあるので、はじめから国際キャッシュカードとして利用できるものであれば手続きの必要はありません。国内専用のカードは海外では使えないため、海外に行く前に事前準備を済ませておきましょう。
いざ海外に行ったら、国際キャッシュカード対応のATMを見つける必要があります。国際キャッシュカード利用可能かどうかは、VISAのPLUS、あるいはMASTERCARDのCirrusのマークが貼ってあるかどうかが目印です。
目印のあるATMを見つけたら、国内のATMと同じように国際キャッシュカードを入れて取引を開始します。言語の違いはあるものの、暗証番号の入力、引き出しや預け入れの指定、金額の指定など、操作は国内のATMと同じです。ATMによっては、日本語対応のものもあります。メジャーな海外渡航先になりますが、心配であれば日本語対応のものを探すのも良いかもしれません。
日本語に対応していない場合でも、基本的に英語に対応しているので、「PIN(暗証番号)」「WITHDRAWAL(引き出し)」などの簡単な英単語さえ覚えていれば問題ありません。
国際キャッシュカードのメリット
ここまで、国際キャッシュカードがどういったカードなのか、一般的なキャッシュカードとどう違うのかをお話ししてきました。それでは、国際キャッシュカードを持つメリットはどこにあるのでしょうか。国際キャッシュカードを作る前に、押さえておきたい国際キャッシュカードの4つのメリットをみていきましょう。
■いつものキャッシュカードで外貨が引出可
国際キャッシュカードと聞くと、新たにカードを作らなければならないのでは?と思われるかもしれませんが、一般的なキャッシュカードからの切り替えになるため、カードが増えるのではなく、変わるだけになります。カードが増えるわけではないので財布もすっきり。スマートに使えます。
もちろん、海外で使える機能がプラスされてはいますが、キャッシュカードであることに変わりないので、国内のATMでも今まで通り使うことが可能です。国際キャッシュカード1枚で国内でも海外でも使えるなら、切り替えておいた方が便利は良いでしょう。
なお、海外のATMでの利用は、日本円でなく現地通貨で引き出せるのが特徴です。現地でお金を引き出したいということは、今すぐにでも現金を用意したい状況になるかと思います。そんなとき、ATMで日本円が出てきても扱いに困りますよね。現地で日本円が使えることはまずないですから、すぐに必要なのに、換金所などで換金してという手順を踏まなくてはなりません。しかも、換金所はいつでも空いているとは限りません。
換金所が閉まっていて現地通貨にできないので、諦めるという選択肢があるでしょうか。切羽詰まった状態なら厳しいのではないでしょうか。そんなとき、現地通貨で引き出せる国際キャッシュカードは、心強い味方になります。
■金利の支払いが不要
国際キャッシュカードは、自分の口座からお金を引き出すものであって、借金ではないため金利は発生しません。たとえばこれが、クレジットカードのキャッシング枠からの利用だと金利が発生します。
クレジットカードはショッピング枠だけでなく、キャッシング枠で現金として引き出せるためです。もちろん、海外のATMからの引き出しであれば、現地通貨で引き出すことができます。しかし、キャッシング枠の利用はカードローンなどの借金と同じ扱いのため、金利が発生してしまいます。同じカードを使った現地通貨の引き出しでも、国際キャッシュカードを使ったものなのか、クレジットカードを使ったものなのかで大きく違うのです。
なお、クレジットカードのキャッシングは、カード会社にもよりますが、だいたい年利15%程度で設定されていることが多いです。仮に20万円を30日間、15%の金利でキャッシングしたとすると2,465円程度の利息が発生することになります。利息にお金を費やすぐらいなら、現地でその分ショッピングなどを楽しみたいものですよね。
また、クレジットカードのキャッシング枠は、20~30万円程度の少額になってしまうため、キャッシング枠以上にお金を用意したいと思ったらクレジットカードでは限界があります。国際キャッシュカードにも引き出し額の上限はありますが、1日経てば限度額が回復するケースが多いです。
■クレカ同様に決済可能
クレジットカードのショッピング機能は、後日銀行口座などから引き落とすことを条件に、カードを提示することで決済ができるシステムになっています。実は、国際キャッシュカードでも少し仕組みは違いますが、クレジットカードのようにして決済することができます。
クレジットカードのように使えるのは、国際キャッシュカードがデビットカードとしての機能も持つ場合です。デビット機能は、利用時に契約している銀行口座などから利用額が都度引き落とされる機能のこと。
クレジットカードは後払いですが、デビットカードはその都度払いになるため、口座の残高がなくならない限り使用することができます。しかも、クレジットカードのように後払いではないため、後からの請求に不安を覚えることもありません。使い勝手としては、目に見えない財布のようなイメージです。しかも実際には財布ではないため、現金を持ち歩かなくて済むメリットがあります。
現金が必要なときはキャッシュ機能で現地通貨を引き出して、ショッピングで使いたいときはデビット機能を利用して、マルチにかつ便利に使えるのは国際キャッシュカードの魅力です。ただし、すべての国際キャッシュカードにデビット機能がついているわけではないため注意しましょう。
■審査が不要
クレジットカードは信用取引といわれることもありますが、利用者が後から支払うことを前提に、クレジットカード会社が一時的にお金を立て替えてくれる取引です。一時的に、利用者にとって借金が、カード会社にとっては債権が発生するため、立て替えても後日料金を支払う余力があるか調べるため、カード会社は契約成立の前に利用希望者の審査を実施しています。
審査の基準は勤務形態であったり、勤続年数であったり、持ち家の有無であったりカード会社によって異なります。利用したくて申込をして、借金などあからさまなデッドカードでなくても審査に落ちる人は少なくありません。そうしたとき、海外でクレジットカードを利用できないのは結構な痛手です。
そんなクレジットカードを作れないとき、あるいは利用限度額が十分でないときに便利なのが国際キャッシュカード。国際キャッシュカードは、口座の残高の範囲でしか利用できないですし、利用後すぐに口座から引き落とされるため、クレジットカードのような信用取引にはなりません。信用取引ではないので、申込時の審査も不要です。
なお、国際キャッシュカードは自分の銀行口座などを利用する性質のカードであるため、一部年齢の制限はあるものの、金融機関によっては未成年者でも作成することができます。海外留学などで留学先の子どもへお金を送りたいときにも便利です。
国際キャッシュカードのデメリット
国際キャッシュカードのメリットをいくつか紹介してきましたが、現地通貨で引き出しができたり、デビット機能付きのものであればショッピングで利用できたり、海外で幅広く利用できるカードであることがわかったのではないでしょうか。便利で使い勝手の良い国際キャッシュカードですが、一方でデメリットもあります。知っておくべき2つのデメリットを確認してみましょう。
■予定外の出費には対応不可
海外旅行や海外出張などで、国際キャッシュカードを使おうと思っている場合、ある程度は渡航先で使う額を予想して、口座に入れてから出国するかと思います。金融機関によっては1日10万円までなど、国内よりも引き出し可能額が厳しめに設定されているものもありますが、基本的に口座の残高内なら日数をまたいで利用することが可能です。
しかし現地でケガをしたり、盗難にあってしまったり、予想外のトラブルが起きたときはどうでしょうか。海外旅行保険などの保険商品もありますが、すべてをカバーできるとは限りません。場合によっては全額、あるいは一部自己負担になるケースもあります。数百万、数千万単位になると一括では厳しいですが、20万円、30万円など現地でも払えそうな額なら現地で払ってしまった方が、トラブル回避には良いかもしれません。
しかし、そうしたトラブルを想定していないと国際キャッシュカードが使える口座にはそれほどのまとまった額を入れていないこともあります。また、支払える分入れていたつもりでも、為替の影響で少し足りないかもしれません。便利ではあるものの、国際キャッシュカードは予想外のトラブルに強くありません。
■手数料が割高になることもある
国際キャッシュカードでの海外からのお金の引き出しは便利ではありますが、いつでも気軽に利用できる商品かというと、コスト面で不安な部分があります。国際キャッシュカードの現金引き出しは、基本的に手数料がかかるためです。
手数料については国内のキャッシュカードでの引き出しをイメージしてみるとわかりやすいでしょう。だいたいの金融機関では、時間外など一部の引き出しは手数料が発生するようになっています。海外で利用するということは、金融機関ではレートの計算などの手間が増えるということ。手数料が発生しても何も不思議ではありません。
金融機関によっても異なり、手数料無料の場合もありますが、だいたいは引き出し1回につき200円ほどの手数料が引き落とされます。
もう1つ手数料絡みで気を付けなくてはならないのが、現地のATMでも手数料が発生することがあることです。海外の場合、ATMのオーナーにもよりますが、利用時に手数料が差し引かれることもあります。この結果、手数料が思ったよりも高くなることもあるため、現地での少額の引き出し、利用するATMの選択には注意が必要でしょう。
海外での国際キャッシュカードの活用方法
ここまで、国際キャッシュカードのメリットやデメリットを紹介してきましたが、「こんなはずではなかった…」と後悔しないためには、どう活用するのがベストなのでしょうか。特に海外旅行は気が大きくなって使いすぎたり、予想外のトラブルが発生したりすることがあるので、海外渡航前にできる対策をしておきましょう。国際キャッシュカードをうまく活用するための4つの方法を紹介します。
■口座には必要な分の金額を入れておく
いつも利用している銀行口座だからと安心して確認せずに海外に渡航すると、後で困ったという状況になるかもしれません。まだ口座に残高があると思っていても、実際には残高が必要な分なく、結局海外で国際キャッシュカードを活用できないという残念な状況になることもあります。
普段利用している口座だから大丈夫と思わずに、海外に旅行する前はしっかり残高を確認しておきましょう。また、海外でどのくらい使うかある程度予想を立てておくと良いです。海外での利用の予想を立てておくと、必要分の残高を確保しておくことで、海外での予想外のトラブル以外、ある程度は解決できます。
なお、海外旅行中に為替レートが大きく変動する可能性もありますが、現地通貨の日本円への換算を考慮して、旅行先の国の通貨と為替レートも確認しておくと良いです。さきほど口座には必要な分を準備していた方が良いといいましたが、日本円で準備しても足りなくなる可能性があります。しっかり準備したいなら、レートを考慮したお金の準備が大切です。なお、計算には引き出す際の手数料なども計算に入れておきましょう。
■利用前にATM引出限度額の設定をする
国際キャッシュカードを作成しても、すぐに海外で使える状態にあるとは限りません。多くの金融機関では、悪用を防ぐために海外でのATMの引出限度額が初期値0円に設定されています。どういうことかというと、いくら銀行に残高があっても1円も引き出すことができないということです。それでは、せっかく国際キャッシュカードを用意した意味がなくなってしまいます。
海外に行く前に、必ずATM引出限度額の設定をしておきましょう。ある程度の額を現地で引き出すつもりなら、少し多めに限度額を設定しておいても良いです。なお、海外のATM引出限度額は国内のATM引出限度額よりも上限が低めに設定されていることがあります。国内のようにある程度まとまった額を引き出せないケースも多いので注意したいです。
また、海外から戻ってきたら、少し面倒ではありますが、悪用を防ぐために再び海外のATM引出限度額0円で設定しなおすことをおすすめします。合わせて、海外のATMで利用した暗証番号も変更しておくと安心です。実際にショルダーサーフィンといって、海外のATM利用中に背後から盗み見された情報を不正に利用されたというケースもあります。自分は大丈夫と思わずに、念には念を入れて対策しましょう。
■要注意!緊急デスクは押さえておく
ショルダーサーフィンなど、海外での不正利用の事例も実際に発生しているとお話ししました。こうした不正に限らず、いつどこで、どんな金融トラブルがあるかわかりません。肝心の国際キャッシュカードをなくしたり、あるいは盗難にあったりする可能性もあります。そんな異常事態で、冷静に対処することができるでしょうか。
もしものときを考えて、海外渡航前に緊急デスクの連絡先を調べておくこと、また海外旅行時は肌身離さず緊急連絡先を持ち歩いていることをおすすめします。海外のよくわからない土地で、しかも滅多に起きないトラブルに見舞われたら冷静な判断もできなくなってしまいます。
金融機関によっては、国ごとに細かく緊急連絡先を分けていることもあるため、誤った連絡先にかけてしまうと、二度手間になって、すぐにトラブルが解消できない可能性もあるでしょう。すぐに対処してもらうためにも、正しい緊急連絡先を把握しておくことが大切です。
まとめ
自分の金融機関の口座を利用して、海外のATMで気軽に外貨での引き出しができる国際キャッシュカードは便利です。デビット機能があれば、クレジットカードのようにショッピングで活用することもできます。海外渡航時の、現金確保のための方法として1枚は持っておくと安心ですね。ただし、手数料が発生する、多額の引き出しには向かないなどのデメリットもあります。デメリットも頭に入れたうえで、うまく国際キャッシュカードを活用していきましょう。
なお、国際キャッシュカードは金融機関によってサービスの有無が分かれるものです。国際キャッシュカードを利用したいなら、窓口などを通して利用可能か、どのように切り替えるか、相談することをおすすめします。