近年、インターネットを通したさまざまなサービスが拡充してきています。ネット銀行の住宅ローンもそのひとつです。自宅にいて簡単に申込の手続きを済ませられることから、じわじわと注目を集めるようになったネット銀行ですが、本当に便利なものなのでしょうか。金利が安いことが魅力ではありますが、デメリットはないのでしょうか?ネット銀行の住宅ローンの実態をみていきましょう。

ネット銀行の住宅ローンの特徴は?

住宅ローンを比較していると、金利がぐっと低いお得な商品が見つかることがあります。だいたいは、ネット銀行の販売している住宅ローンであるケースが多いのですが、なぜこんなにも金利が安いのでしょうか。ネット銀行の住宅ローンは大手銀行の住宅ローンと何が違うのか両者の違いを確認してみましょう。

■ネット銀行の住宅ローン

銀行は店舗を持つことが当たり前という時代もありましたが、インターネットが普及したこともあって、店舗を持たないネット銀行も登場するようになりました。ネット銀行は、インターネット上を通してさまざまな取引や申込を行うタイプの銀行で、お金の引き出しや預け入れなど以外、ほぼすべてインターネット上のやり取りに集約されています。

ネット銀行の住宅ローンは、そうした店舗を持たないネット銀行が販売している住宅ローンのこと。インターネットが窓口の代わりとなり、申込手続きや審査結果の報告などもすべてインターネットを通して行われることになります。オンラインの環境でないと利用できない住宅ローンです。

■大手銀行との違いは?

大手銀行などを中心に、従来の店舗型の銀行でも幅広く扱われている住宅ローンですが、ネット銀行の住宅ローンと何が違うのでしょうか。

まずひとつが、金利の違いです。ネット銀行の場合、店舗を持たないことから店舗を維持するための費用が掛かりません。そのため、住宅ローンに限らず、全般的に通常の店舗型の銀行よりも金利を低めに設定することができます。銀行によっても対応は異なるので、必ずしも大手銀行より金利が低いとは限りませんが、大手銀行と比較して金利が低く設定されているケースが多いです。

もうひとつ知っておきたい違いが、相談ができるか否か。大手銀行の場合、住宅ローンの契約は窓口対応となるため細かく相談して、最終的に納得してから契約が進められます。一方、ネット銀行は無駄なコストを限りなくカットしていることからか、住宅ローンは形式的な処理でしか対応していません。電話での相談はできても、大手銀行のように担当者とじっくり相談することは不可能です。

ネット銀行の住宅ローンのメリットは?

ここまでネット銀行の住宅ローンはどのようなものかお話ししてきました。大手銀行との違いにも少し触れましたが、ネット銀行の住宅ローンを選択するメリットはどこにあるのでしょうか。ネット銀行の住宅ローンを利用する4つのメリットを紹介します。

■金利・手数料が安い

ネット銀行の住宅ローンで大きな特徴となるのが、金利や手数料が、店舗型の銀行と比較して安いことです。さきほども少し触れましたが、ネット銀行は店舗を持たないことによって、大幅なコストカットができます。店舗の建設費に土地代、そして各店舗に配置する従業員への給与、光熱費がかかりません。

これが1店舗や2店舗であれば話は変わってきますが、多くの店舗型の銀行は何十店舗、何百店舗も店舗を構えているケースが多いです。そうすると、店舗型とネット型銀行ではかかるコストに大きな差が生まれます。このコストが直接金利や手数料にも影響しているわけです。

ネット銀行の住宅ローンは、大幅なコストカットができる分、銀行の利益となる金利や手数料を店舗型の銀行よりもお得に設定することができます。金利が低かったり、あるいは手数料があまりかからなかったりするのはこのためです。

■来店不要で契約可能

ネット銀行はそもそも店舗を構えていないことが多いため、来店して手続きすることがありません。お店に足を運ぶことなく、契約まで完了させることができます。

そんなネット銀行の主な連絡ツールとなるのが、メールや郵送です。中には、郵送の必要がなくすべてインターネット上のやり取りで契約が完了するネット銀行の住宅ローンもあります。

来店不要で契約できることのメリットは、自分の空いた時間を使って申込や契約ができることです。仕事が忙しくてなかなか来店できないという方も、ネット銀行の住宅ローンを利用すれば、隙間時間にさっと手続きを進めることができます。

■保証料がかからない

長期の契約になる住宅ローンは、金融機関がリスクをできるだけ回避するために、契約時に保証会社を利用することを義務付けているものも多いです。保証会社は、住宅ローン利用者の返済が滞ったときに弁済し、立て替えてくれる会社のこと。契約者は、契約時に保証人を立てずに済みます。

なお、保証会社を利用する場合は、保証料がかかるため、通常の住宅ローンで契約者は、月々の返済に上乗せして保証料を支払わなければなりません。

しかし、ネット銀行の住宅ローンの場合は、店舗型の銀行ではほぼ当たり前になっている保証会社の契約を義務としていないため、保証料なしで契約することが可能です。ネット銀行での住宅ローン契約者は、月々の支払いを抑えることができます。

■一部繰り上げ手数料が無料

長期的なローンである住宅ローンは、将来何があるかわからないため、できるだけ早く完済したいものです。一部繰り上げ返済によって、そうした将来の不安を軽減できるため、繰り上げ返済の活用はメリットとなります。しかし、住宅ローンによっては、一部繰り上げ返済で手数料がかかることも少なくありません。店舗型の銀行であれば1回につき数万円が目安です。

あまり頻繁に一部繰り上げをしないのであれば大きなデメリットにならないかもしれませんが、お金に余裕ができたら都度返済していきたいと考えている人にとって一部繰り上げでの手数料は、大きな痛手になるでしょう。

ネット銀行の住宅ローンの場合は、全てではないものの一部繰り上げ返済を無料にしているところもあるため、頻繁に繰り上げ返済していきたい人にとって魅力的な部分になります。

ネット銀行の住宅ローンのデメリット

ネット銀行は金利がお得だったり、保証料がかからなかったり、さまざまなメリットがあることを紹介しました。しかし、金利がお得という部分に隠れて、意外に知られていないデメリットもあります。ネット型の住宅ローンは、本当にお得で、メリットばかりなのでしょうか。知っておくべきネット銀行の住宅ローンのデメリット5つを紹介します。

■審査が厳しい

ネット銀行の住宅ローンは、店舗型と比較した場合、審査が厳しめになるといわれています。店舗型と審査の違いが出てしまうのは、ネット銀行がコストカットのために自動で審査できるようなシステムを取り入れているため。

その分、仮審査の回答が早いというメリットがありますが、システムに適合しないような申込内容だとすぐに審査で落とされてしまう可能性があります。ネット銀行の住宅ローンの審査は平均的な判断には強いですが、個別の判断には弱い部分があります。

1つ1つの内容で判断せずに、常に平均的な部分から判断しているためです。そのため、店舗型で契約できるような人でも、ネット銀行だと審査が通らないことがあります。

店舗型の住宅ローンは1つ1つ丁寧に見ていき人が判断するため、それなりに審査までの時間がかかってしまうことがありますが、ネット銀行よりは個別の状況をしっかり見てもらえるでしょう。

■郵送なので審査に時間がかかる

ネット銀行の中には、インターネットですべて手続きができるようにしているところもありますが、ネット完結を導入しているのはほんの一部です。住宅ローンの契約では提出するものも多くなるため、だいたいは郵送での対応になります。

郵送対応になることのデメリットは、審査に時間がかかるかもしれないということ。ネット銀行は、審査までの回答が店舗型よりも早い傾向にありますが、それはあくまで契約手続き前の仮審査での話。申込書類のほか、必要な書類がそろわないと本審査は進められないため、書類に不備があったり、添付書類が漏れていたりすると、また郵送で送りなおさなければなりません。

郵送で何度もやり取りをすると、書類を送ってから届くまでの時間もありますからその分時間がかかります。本審査に入るまでに時間を要することもあるので注意したいです。

■事務手数料が高め

金利が安く、保証料などの諸費用もカットされることがあるネット銀行の住宅ローンですが、思わぬところで出費が発生することがあります。それは、住宅ローンの借入で支払わなければならない事務手数料です。

大手の店舗型の銀行の場合、住宅ローンの事務手数料は、借入額にかかわらず3万円前後で設定されています。一方、ネット銀行は定額ではなく、定率制を取り入れていることが多いです。借入額に対して何%と設定されるため、借入額が多いほど事務手数料が高くなってしまいます。

目安は借入額の2%になるため、3,000万円の借入なら60万円の事務手数料がかかる計算です。同じ3,000万円の借入でも、60万円と3万円だとずいぶん差が出てしまいます。金利が安くても、事務手数料が高いために、店舗型の住宅ローンよりトータルで損をすることもあります。

■対面での相談ができない

ネット銀行は店舗を構えないために、相談したいと思ってもメールか電話かのどちらかになります。メールや電話だとどうしても伝えきれない部分が出てくることも少なくありません。微妙なニュアンスが相手に伝わりづらいためです。そのため、本当に聞きたかったことに対して、的外れな回答をされることもあります。

また、対面での相談ができないデメリットは、込み入った相談ができないこともあげられるでしょう。店舗型の住宅ローンの場合、担当者がついて、担当者にいろいろと確認したり、相談したりができます。期間が空いても、担当者が顧客の状況を把握しているため、自分が欲しかった回答をもらいやすいメリットもあります。

一方、ネット銀行は店舗型の銀行のように担当者という概念がありません。一度相談をして、また相談したいと思っても、また一から説明しなくてはなりません。これでは、本当にしたい込み入った相談も難しいでしょう。

■書類作成や管理は自分でしなければならない

対面で販売している店舗型の住宅ローンは、相談にのってもらえるだけでなく、書類作成や管理のサポートをしてもらえるメリットがあります。住宅ローンの申込書や必要書類は複雑で、どこに何を書いたらよいかわかりにくい部分もあるため、こうしてサポートしてくれる人が近くにいると安心です。

しかし、ネット銀行の場合は書類の作成も管理もすべて自分でしなくてはいけません。電話で相談したり、メールで相談したりすることも可能ですが、さきほどもお話ししたように言いたいことがうまく伝わらず、的外れな回答になることもあります。また、聞きたいことが多すぎると連絡の往復が多くなり、やり取りが面倒です。さらに作成した書類に誤りがあったら、再度郵送などで送る手間がかかります。

すべて自分で調べて完璧にできれば問題ないですが、なかなか難しい部分もあるでしょう。

ネット銀行の住宅ローンを利用する注意点は?

ここまで、ネット銀行の住宅ローンのメリット・デメリットをお話ししてきましたが、ネット銀行が良いものだという認識は捨てた方がよさそうです。本当に満足できる住宅ローンを契約するには、金利だけにとらわれず、もっと広い視点で考えることが大切です。最後に、ネット銀行の住宅ローンを利用する場合の注意点についてお話しします。

■破綻の可能性はある?

ネット銀行は、店舗を構えておらず実態を把握しづらいことから、破綻してしまうのではないかと不安に思う方も少なくないかと思います。店舗型の銀行と比べて実績年数が少ないという点も不安をあおっている原因になっているかもしれません。

しかし、ネット銀行=破綻のリスクが高いとは限りません。むしろ、店舗型の銀行のように中小企業向けの融資に力を入れていないため、破綻する可能性は高くないでしょう。しかも、有名なネット銀行の多くは、バックに大手銀行がついています。

仮に破綻に向かいそうになったら、バックについている大手銀行が救済措置を行う可能性高いため、破綻の可能性についてはそこまで心配する必要はありません。ネット銀行の住宅ローンを利用する場合は、バックにどのような銀行がついているか確認しておくと安心です。

■金利だけで選ばず、自分にあった借入先を選ぶ

店舗型の銀行の住宅ローンと比べたとき、ネット銀行は金利がお得であることが多いため、魅力的に感じる方も多いかと思います。確かに、ネット銀行の金利は魅力的です。しかし、お得なポイントが金利だけになっていないでしょうか。金利は長期間の住宅ローンに影響してくるため大きな部分でもありますが、金利が安い代わりに事務手数料などの諸経費が高ければ、ネット銀行の金利の魅力も薄れてしまいます。場合によっては、金利や手数料、サービスのトータルで考えると、店舗型の方がお得かもしれません。

金利だけを優先させず、どこを重視したいのか、いつでも相談できるようなところが良いのか、あるいは手続きの手間をなくしたいのか、自分が重視したいポイントを決めて借入先を選ぶことをおすすめします。

まとめ

住宅ローンの手続きもインターネットでできる便利な時代になってきましたが、ネット銀行の住宅ローンには問題点も多いです。たとえば、一生にそうない住宅ローンの契約で満足に相談ができないという欠点があります。金利も大切ですが、もっと広く考えることが大切ではないでしょうか。住宅ローンの契約を考えるなら、銀行での直接の相談をおすすめします。