銀行などの金融機関側が保険料分を支払うか、あるいは住宅ローンの割合に加算されるかになるので、住宅ローン加入時に団体信用生命保険に入るケースが多いですが、実際に加入していることを意識していない人も少なくありません。

通称・団信といわれる団体信用生命保険とはいったい何なのでしょうか。団体信用生命保険の商品の内容と、住宅ローン加入時に契約する必要性についてお話ししていきます。

住宅ローンで加入する団体信用生命保険とは?

住宅ローンにほとんどといっていいほど付いてくるのが、団体信用生命保険です。金融機関では、住宅ローン利用の条件に、団体信用生命保険の加入を義務付けているところも少なくありません。それでは、住宅ローンと団体信用生命保険にはどのような関係があるのでしょうか。団体信用生命保険の商品の特徴と一般の生命保険との違いを解説します。

■団体信用生命保険とは?

団体信用生命保険は、住宅ローンの契約とともに加入する、一般的な生命保険とは違う特殊なタイプの生命保険です。通常、生命保険は被保険者(保険の対象者)が指定した受取人に保険金として支払われますが、団体信用生命保険の保険金は、住宅ローンの契約をする金融機関が受取人になります。

被保険者が死亡あるいは高度障害を持ったときと、保険金の支払いは通常の生命保険と同じですが、保険金が住宅ローンの残高に充てられることが通常とは異なります。団体信用生命保険の特約を含めても保険金の支払い条件は限られるものの、万が一被保険者が死亡などしたとき、残された家族に団体信用生命保険を使って自宅を残すことが可能な生命保険です。

残された家族は、団体信用生命保険の保険金により、ローン返済の心配をしなくて済みます。また、引き続き自宅に住むことも可能です。

■団体信用生命保険の種類

通常の団体信用生命保険は、被保険者の死亡と高度障害のみを保険金支払いの条件としています。ほか、団体信用生命保険の主な種類としてあげられるのが、3大疾病特約付き団信、8大疾病特約付き団信です。3大疾病特約付き団信は、3大病といわれる、がん、脳卒中、急性心筋梗塞の特約が付いたもの。脳卒中も急性心筋梗塞も、手術のほか60日以上ある特定の症状がないと保険金はおりません。一方、がんは確定診断があれば保険金が支払われます。いずれにしても、日本人に多い病気3つをある程度カバーできるのが特徴です。

もうひとつは、8大疾病特約付きのもの。3大疾病であるがん、脳卒中、急性心筋梗塞のほか、糖尿病や慢性腎不全、高血圧症、肝硬変、慢性膵炎において一定の条件に当てはまった場合、保険会社によってローン返済が行なわれます。通常の団体信用生命保険よりも広範囲をカバーできるのがポイントです。

■団体信用生命保険の保障内容

団体信用生命保険の保障内容は、住宅ローンの返済のみを対象とした死亡保障です。どういうことかというと、被保険者が死亡した場合、あるいは高度障害を負って住宅ローンの返済が難しくなった場合、死亡保障によって住宅ローンの残債が支払われます。

つまり、住宅ローンの残高が団体信用生命保険の死亡保障によってなくなるということ。残された家族が自宅を失くしてしまうという不安を消すことができます。

■一般の保険と何が違うのか

先に説明したように、団体信用生命保険は被保険者が指定した受取人ではなく、住宅ローンの契約先である金融機関に保険金が支払われる生命保険です。支払先からまず違いますが、ほかにも一般の生命保険とは違い、年齢によって保険料が上がらない特徴があります。これは、一般の生命保険とは違い、経過年数が多いほど保険料支払いのリスクが減るためです。

また住宅ローンの利用者が特約を付けない限り、団体信用生命保険の保険料は、金融機関側が負担することが多いです。その代わり、金融機関は団体信用生命保険の分を住宅ローンの金利に少し上乗せしていることもあります。このように、団体信用生命保険は生命保険という名前はついているものの、一般の生命保険とは大きく異なります。

団信加入で生命保険は解約しても良い?

団体信用生命保険と一般の生命保険とは違うことを紹介しましたが、仮に住宅ローンの利用で団体信用生命保険に加入した場合、これまでの生命保険を解約しても問題ないのでしょうか。団体信用生命保険に加入したときの、ほかの生命保険の扱いについて見ていきましょう。

■保障が重なる保険は見直したほうが良い

団体信用生命保険に加入すると、これまで加入していた生命保険の保障内容が被ることがあります。この場合、団体信用生命保険は見直せませんので、生命保険の保障が被っている部分を見直すことになります。ただ、生命保険を見直すとはいっても、ほんの一部。

団体信用生命保険は、住宅ローンの死亡保障に限定された生命保険になるので、一般の生命保険で見直すのは、家族の生活の保障のうちの住居費の部分です。団体信用生命保険で、住宅ローンが完済されるので、住居費分がまるまる必要なくなります。

一般の生命保険に加入していても、これまで家族の保証を考えずに死亡保障金額を設定している場合は、住宅ローン利用の機会に、家族の生活がカバーできるように生命保険の見直し、あるいは新たに生命保険の新規加入を考えてみましょう。

■団信ではカバーできないリスクに注意

団体信用生命保険は、被保険者が死亡するなど万一のことが被保険者に起きたときの生命保険です。死亡に高度障害に、生命にかかわるようなことが起きたときには効果を発揮できますが、一方で団体信用生命保険だけでは十分とはいえない部分もあります。

被保険者の死亡や高度障害以外にも、住宅ローンの返済が滞ってしまうことがあるためです。たとえば、会社をリストラされて就業していない状態になったり、病気やけがにより長期の療養を余儀なくされたり、病気の特約はありますが病名が限られているので、すべての住宅ローンの滞納のリスクに適応するわけではありません。

加入前の注意点

ここまで団体信用生命保険とは何か、一般的な生命保険と何が違うのか、生命保険の見直しと団体信用生命保険の関係は何かを順を追ってお話ししてきました。団体信用生命保険がどういった保険なのかは把握できたかと思います。

ここまで団体信用保険の特徴や加入した後のことばかりでしたが、それでは加入前についてはどうでしょうか。団体信用保険の契約する前に知っておくべき加入前の注意点2つを紹介します。

■健康状態に注意

一般の生命保険も同様ですが、団体信用生命保険に加入する際は、健康状態の告知の義務があります。金融機関によって問われる項目が違う場合もありますが、おおむね確認されるのは、3つのことです。

まず、過去3カ月以内に医師による治療や投薬を受けたかどうか。住宅ローンを組む場合は、少なくとも直近で健康状態の悪化で病院を受診することにないように、健康管理には気をつけたいです。

次に、過去3年間の間に特定の病気で手術を受けたことや、2週間の長期にわたり治療を受けたことがあるか。該当する病気は、狭心症や脳卒中、がんなど健康が懸念される病名が並びます。ほかにも精神病やうつ病など体の健康だけでなく心の病気も特定の病気になるので注意しましょう。

最後に、障害の有無について。手足や視力、聴力など機能面に著しい障害がある場合は、団体信用生命保険を利用できないこともあります。

このように、団体信用生命保険は、生命保険の一種であることから、健康のことに関しての質問があります。正しく回答しないと、最悪の場合契約が不履行になる可能性もあるので注意しましょう。健康状態が芳しくないからと必ず加入できないわけでもないので、正しい状況を正しく伝えることが大切です。

■ローン完済すると団信も終了する

団体信用生命保険の保障は、住宅ローンが完済すると自動的に終了します。住宅ローン終了後も保障を受けられるものではありません。あくまでも、住宅ローンの支払いが難しくなったときのための保険だからです。

ローンの完済とともに、保障が必要な住宅ローンの残債がなくなるので、ある意味当たり前のことなのですが、継続しての利用ができない点には注意しましょう。

なお、ローンが完済する時期には、家庭の状況もローンを組んだ頃とは大きく変わってきているかと思います。団体信用生命保険は終了してしまいますが、この機会に再度生命保険を見直してみるのも良いでしょう。ローンを組んだ当時と状況も変わってきているので、思ったより無駄に保険料を払っているかもしれません。

まとめ

今回は、住宅ローンの契約においてほとんど必須になっている団体信用生命保険についてお話ししてきました。団体信用生命保険の魅力は、万が一のことがあっても家族に財産として自宅を残せること。しかも、保険金の支払いによってローン残高がなくなるので、家族の住居費の心配がなくなります。

ただし、あくまで団体信用生命保険は住宅ローンの完済のための生命保険。そのほかの、家族の生活費などは保証してくれません。団体信用生命保険の契約が保険の見直しのタイミングだからといって、安易に一般の生命保険を解約しないようにしましょう。保障内容をよくみて見直すことが大切です。