フラット35は、住宅金融支援機構と金融機関が提携して扱っている、全期間固定金利型住宅ローンです。金利が固定できること、近年固定金利が下がっているため以前に比べて割安感があること、公的機関の住宅金融支援機構が提携していることなどから人気を博しています。
全期間固定金利の特徴や仕組み、今後の固定金利の推移、フラット35の金利や返済額が変わる要因について解説します。
フラット35の全期間固定金利とは?
住宅ローンの金利は、固定金利と変動金利の2種類があります。金融機関が提供している住宅ローン商品では、この2種類の金利の組み合わせ方により、全期間固定金利型、一部期間固定金利型、変動金利型と一部期間固定金利型の選択型など、さまざまなプランが提供されています。
フラット35は、全期間固定金利である点が一番の特徴です。その仕組みやメリットは何でしょうか。また、全期間固定金利が向いているのはどのような方でしょうか。
■全期間固定金利とは?特徴や仕組みは?
フラット35に適用されている全期間固定金利は、借り入れ時に適用される金利が確定し、その金利が35年間固定されます。全期間固定金利の特徴は2つあります。
1つ目は、35年間の借入金利と月々の返済額、借り入れ総額が事前に確定することです。そのため、安定した返済計画を立てることが可能です。
2つ目は、金利が固定されることによる安心感です。変動金利はいつ借入金利が変わるか予想がつきません。金利が上昇することで返済額が増加し、返済が難しくケースも考えられます。一方、全期間固定金利は借りている間に金利が変わることはないので、安心して返済していけます。
また、金利が固定される仕組みのため、今後金利が上昇する場合にその上昇の影響を受けず、割安感を感じられるというメリットもあります。
■全期間固定金利が向いている人は?
全期間固定金利が向いているのは、以下に当てはまる人です。
・多少金利が高くても、一定額の返済を続けたい人
全期間固定金利型は、変動金利や一部期間固定金利型と比較して一番金利は高くなりますが、35年間の返済額が確定するため、返済計画を立てやすくなるメリットがあります。
35年の間には、子どもの入学や卒業、親の介護などさまざまなライフイベントが予想されます。事前に住宅ローンの返済額を確定し、安心して返済を続けたいという方は、全期間固定金利が向いています。
・金利の変動を不安に感じる人
変動金利では、いつ金利が変わるかわからないという不安感があります。対して全期間固定金利であれば、金利変動を気にする必要がないため、安心して返済を続けることができます。金利変動を心配したくない方は、全期間固定金利が向いています。
全期間固定金利の推移
フラット35の公式サイトでは、2003年以降の借入金利の推移を公開しています。
2003年以降の35年全期間固定金利で最高金利をつけたのは、2004年の4.500%、次いで、2008年〜2009年の4.020%でした。それ以降はリーマンショックの影響から世界的な不況に陥ったため、多少の上下をしながら下降し、2016年8月に最高金利で1.570%と底を打ちます。その後やや回復し、ここ1年の最高金利は2%前後と安定しています。
■2018年の金利は?これからどうなる?
住宅ローンの固定金利は、長期プライムレートという長期金利の変動に合わせて推移しています。
金利の変動に大きく影響を与える要因は、国内景気・物価・為替・金融政策などです。国内景気が良くなり、物価が上昇し、日本円が円安になると、金利は上昇します。一方、金融政策が緩和の方向になると金利は下落します。
2018年の金利はどのように推移するのでしょうか。
現在の政府は景気回復・物価上昇を掲げているものの、同時に金融緩和政策も行なっているため、今後も金利の低水準は続くと思われます。
景気回復が顕著になると金利が上昇する可能性があるため、固定金利を組むならば金利が低水準である今のうちに検討するのがおすすめです。
フラット35の金利はどんな要素で変わる?
金利は0.1%違うだけで、借り入れ総額に大きな差が出ます。
例えば、金利2.0%・35年間・5,000万円を借り入れた場合、借り入れ総額は約6,956万円です。一方、金利1.9%・35年間・5,000万円を借り入れた場合の借り入れ総額は6,849万円と、約107万円の差があります。
フラット35の金利はどのような要素で変わってくるのでしょうか。
その要素は、金融機関、返済期間、融資率による違いです。
■金融機関による違い
フラット35は、住宅金融支援機構と金融機関が提携して扱っているため、借入金利は各金融機関によって変わります。
住宅金融支援機構では借入金利水準を毎月に発表しており、金融機関はその金利水準を参考に借入金利を毎月定めています。例えば、2018年8月に住宅支援機構が発表した借入金利水準は、年1.340%〜年2.510%です。この金利を参考に各金融機関はそれぞれ金利を設定しているのです。
またフラット35シリーズには、省エネルギー性や耐震性などに優れた物件に対して、当初10年間もしくは当初5年間金利を年0.25%引き下げる「フラット35S」という商品もあります。優良物件を購入してフラット35Sを適用することで、さらに低い金利でローンを組むことができます。
■返済期間による違い
フラット35は、返済期間によって金利設定が分かれています。
金利設定は、返済期間15年〜20年と21年〜35年の2種類があり、21年〜35年の方が金利が高くなります。
基本的に、返済期間が短くなるほど借り入れ総額は減少します。なぜなら、返済期間が長くなるほど金利部分が増えるからです。
例えば、5,000万円を金利2.0%で35年借りる場合、借り入れ総額は約6,956万円、月々返済額は約16.5万円です。一方、同条件で30年借りた場合の借り入れ総額は6,653万円、月々返済額は18.4万円。返済期間を5年間短縮するだけで、借り入れ総額が303万円も減少します。
ただ月々の返済額はその分増加しますので、キャッシュフローとのバランスを加味して借入期間を設定すると良いでしょう。
■融資率による違い
フラット35全期間固定金利は、融資率によっても借入金利が異なります。
融資率とは、ローンを借りて購入する物件の購入金額に対する融資金額の割合のことです。
例えば、5,000万円の物件に対して4,000万円のローンを組む場合の融資率は80%です。
フラット35は、融資率90%以下と90%超の2種類に分けて金利を設定しており、90%以下の方が90%超に比べて金利設定が高くなります。
例えば、2018年8月のフラット35(借入期間21年〜35年)借入金利水準だと、融資率90%以下は年1.340%~年2.070%、90%超は年1.780%~年2.510%と、0.4〜0.5%程度の差がありました。
可能であれば自己資金を多めに用意して融資率を90%以下に抑え、借入金利を下げることをおすすめします。
まとめ
フラット35は全期間固定金利で借り入れるため、金利が変動せず安定する、毎月一定額を計画的に返済し続けられるなどのメリットがあります。現在の変動金利や一部期間固定金利よりは金利は高くなりますが、今後金利が上昇した場合は、割安感を感じることが可能です。
全期間固定金利で組むかどうかは、あなたの収入状況や考え方次第です。もし全期間固定金利を希望するなら、金利が低水準である今のうちに借り入れを検討すると良いでしょう。