家族のため、あるいは自身の身の回りの整理のため、生命保険に加入している人は多いかと思います。生命保険は、自分に万が一のことがあったとき、遺された家族にできる金銭的な手助けになる大切な保障です。

ずっと内容を見直さずに生命保険を支払い続けている人もいるかと思いますが、住宅ローンを組むことがあれば、それは生命保険の見直しのチャンス。住宅ローンと生命保険の関係から、生命保険を見直すべき理由を解説します。

住宅ローンと生命保険の関係性

住宅ローンと生命保険、一見何のつながりもないように見える2つの関係ですが、実は住宅ローンを組むことで加入がほぼ必須になる、ある保険とのつながりが関係しています。まったく関係ないようにも思える住宅ローンの利用が、なぜ生命保険の見直しにつながるのでしょうか。

住宅ローンと生命保険の関係性と、住宅ローンの利用が生命保険を見直すべききっかけになる理由をお話ししていきます。

■住宅ローンを組んだら生命保険を見直すべき理由

住宅ローンを組む場合、ほとんど加入が必須になってくるのが、団体信用生命保険といわれる、住宅ローンに特化した生命保険です。

団体信用生命保険は、住宅ローンに特化しているといったものの、生命保険であることに変わりありません。すでに生命保険に加入している場合、加入している生命保険の内容によっては、団体信用生命保険とのバランスで契約の内容を見直した方が良いことがあります。

■既存の生命保険と保障内容が重なることも

住宅ローンの利用を考えているということはまだまだ現役の世代でしょうから、生命保険も配偶者や子どものことを考えた保障内容になっているかと思います。家計を支えているのが世帯主なら、世帯主がいなくなることの損失はかなりのものです。

遺された配偶者が1人で子どもと一緒に生活できるだけの資金を働きながら作って、さらに子育てもしてというのはかなり厳しいものがあります。万が一のことを考えると、世帯主がいなくなっても問題なく生活できるように生命保険の保障を厚くしておく必要があるでしょう。

それでは万が一のときの死亡保障はどのように考えていくべきなのでしょう。現実の生活をベースに、世帯主がいなくなったときの生活費をまずは試算していく必要があります。生活費として含まれるのは、住居費や水道光熱費、食費、通信費、日用品、医療費、教育費など。

生活費の保障が必要な月数、さらに年数をかけて計算した生活費から、死亡退職金、遺族年金を差し引いて生命保険の死亡保障の額を出します。

ここで注意したいのが、死亡保障を出す前に生活費に住居費が含まれていることです。住宅ローンの団体信用生命保険に入れば、既存の生命保険と保障の部分が被る可能性があります。

住宅ローン契約後の生命保険見直しポイント

住宅ローンの契約をすると団体信用生命保険の契約も同時に行うことになるので、生命保険も同時に見直した方が良いことをお話しししました。団体信用生命保険への加入により、すでに加入済みの生命保険の保障内容と被る部分についても見直しの必要がありますが、ついでなので全体的に見直すことをおすすめします。生命保険を見直す機会はなかなかめぐってこないためです。

それでは、生命保険のどういった部分を見直すべきなのか、住宅ローンの加入とともに見直すべき生命保険の4つのポイントを紹介します。

■団体信用生命保険の仕組みを理解する

住宅ローンの契約では、ほとんどのケースで団体信用生命保険にも同時に加入します。団体信用生命保険とは、被保険者つまり住宅ローンの契約者が死亡、もしくは高度障害になったとき、住宅ローンの残りの残高を保険金の支払いによってゼロにするという内容の生命保険です。

保険金の支払いよって住宅ローンの残債はなくなるので、遺された家族は住宅ローンの支払いが免除されることになります。これにより、住宅ローン返済額の滞納によって、自宅が競売にかけられることがありません。また、遺された家族は、住居費の支払いなしに、引き続き自宅に住み続けることができます。

住居費の支払いが必要なくなるということは、生命保険の計算で組み込んだ生活費のうち、住居費の部分がまるまる必要なくなったということです。生命保険の見直しでは、生活費の計算時に住居費部分をなくして再度計算していきます。

■必要保障額はどのくらいか

仮に60歳までを必要保障額設定のゴールにしたとします。30歳からの60歳までの必要保障額と40歳から60歳までの必要保障額は同じになるはずがありません。

住居費分を差し引いた必要保障額が月々25万円だった場合、30歳から60歳、40歳から60歳までのそれぞれの必要保障額を出してみましょう。

・30歳から60歳の必要保障額

25万円×12カ月×30年= 9,000万円

・40歳から60歳の必要保障額

25万円×12カ月×20年= 6,000万円

このように、必要保障額は年数の経過とともに減少していきます。以前に生命保険の契約をした際は、以前の契約時ベースで、60歳などの目標までの計算になっているため、必要保障額が適切ではありません。住宅ローン契約時の年齢で必要保障額を再計算する必要があります。

■遺族年金はどのくらい受給されるのか

厚生年金や国民年金の加入により、家族が遺族年金の対象になることがあります。遺族年金は、被保険者が死亡したときに妻(※遺族基礎年金は対象外)や子などに支払われる年金のことです。どのくらい支払われるかは、これまでの被保険者の公的年金の払い込み状況などにもよるため、いくらとはっきりさせることはできません。

仮に遺族年金の受給額が月々10万円だった場合、必要保障額25万円から差し引いた残高は15万円です。必要保障額の部分で、遺族年金の部分を差し引かず計算しましたが、遺族年金が発生する場合は遺族年金の支給額を差し引いて保障額を出していきましょう。忘れがちですが、生命保険を見直す際は、こうした遺族年金のことも計算に入れて見直していきます。

ただし、遺族年金の支給は、被保険者の受給資格期間が25年以上ないと対象になりません。20代、30代夫婦の場合、遺族年金が支給されない可能性もあるので、合わせて受給資格も確認しておきたいです。

■収入保障保険・就業不能保険を活用

ここまで生命保険の見直しで、必要保障額を出すにはどこを見直していくべきか紹介してきました。生命保険の死亡保障の額を適正な額に変更することも大切ですが、生命保険の種類自体の見直してもしていきたいです。必要保障額が年々減少していくとお話ししましたが、生命保険によってずっと一定の額を保障する必要はありません。

必要保障額を年々減少させる生命保険のタイプで十分です。家族の生活費ベースで、必要保障額を年々減少させていくタイプの生命保険が、収入保障保険や就業不能保険。定期保険など、死亡保障の額が一定の生命保険を契約しているなら、住宅ローンの契約を機会に、生命保険を収入保障保険や就業不能保険に切り替えましょう。

これにより、無駄な保障をカットできるので、月々の生命保険料の支払いも軽くなります。住宅ローンの契約によって住宅ローンの支払いがはじまるので、ぜひ生命保険の見直しは実施したいです。

生命保険の見直しの注意点

住宅ローンの契約が、生命保険の見直しの良い機会であることは間違いないです。しかし、何もかも見直して生命保険の保障を削れば良いというわけではありません。生命保険の見直しをするなら注意したい部分があります。生命保険の見直しを図る前に確認しておきたい2つのポイントを押さえましょう。

■団信では教育費や生活費の負担は軽減されない

団体信用生命保険は、被保険者が亡くなった場合などに、遺族の住居費の支払いが免除される生命保険です。住居費が免除される点は大きいですが、あくまでも対象となるのは住宅ローン残高、つまり住居費のみです。

いくら団体信用生命保険が魅力的でも、住居費以外はカバーしてくれません。たとえば、子どもの教育費に食費、水道光熱費など住居費以外の生活に関する負担は依然として残ります。こうした生活費の負担を軽減するのに使えるのが、一般的な生命保険です。団体信用生命保険の加入によって、生命保険を見直そうとつい張り切ってしまいますが、生命保険が不要になるわけではないので注意しましょう。あくまで生命保険の内容の見直しであり、生命保険を切り捨てることではありません。

■住宅ローン完済後に必要な保障は削らない

住宅ローン完済後の必要な保障とは、いわば老後の保障のことです。住宅ローン完済となると、子どもも成長して手が離れ、配偶者の生活費の保障も年金で賄われるようになるので、現役時代に契約していたような生命保険の保障は必要なくなります。

それよりも考えたいのが、死亡した後、葬儀費用はどうするか、遺品整理にかかる費用はどうするかです。終活を見据えて、死亡時に遺族が困らないようにするために早めに終身保険を掛ける人もいるでしょう。生命保険の見直しは大切ですが、こうした老後の保障である終身保険の見直しは不要です。

まとめ

住宅ローン契約時に、生命保険も一緒に見直した方が良いといいますが、見直した方が良い生命保険は配偶者や子などの生活保障のための生命保険です。生活保障を目的とした生命保険の見直しはいくつかポイントがあるので、ひとつひとつ確認していきましょう。

なお、すでに加入している生命保険では見直さない方が良いものもあります。葬儀費用を目的としたものなど、家族の生活保障にかかわらない部分についてはあまり触れないようにしましょう。不安なときは、住宅ローンを販売している金融機関の窓口で相談されることをおすすめします。