住宅ローンの金利のタイプは、大きく分けて固定金利と変動金利の2つがあります。どちらを選ぶかによって将来の支払いを左右することにもなるので、迷ってしまいますよね。実際のところ、固定金利と変動金利のどちらを選ぶのが良いのでしょうか。

固定金利と変動金利の基本的なことから、メリット・デメリットまで住宅ローンの金利を徹底解説します。

固定金利とは?

住宅ローンの金利の種類のうちのひとつが、固定金利です。住宅ローンで固定金利を使うとどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。住宅ローンの固定金利のしくみと、固定金利を利用した方がいい人について解説します。

■固定金利の特徴

文字通り、固定金利は金利が固定されるタイプのもの。一般的に固定金利というと、契約期間中ずっと金利が固定される全期間固定金利型を指します。全期間固定金利型は、契約を開始したときから契約終了まで、ずっと同じ金利で計算される特徴があります。金利情勢が変わっても、金利が変更されることはありません。

この全期間固定金利のほかにも、固定金利の一種に固定金利期間選択型というものもあります。これは、一定期間のみ固定金利が適用されるタイプのものです。金融機関によって設定できる期間は異なりますが、5年や10年などで設定できることが多く、設定した期間中は金利が固定されて変動しないという特徴があります。ここでは固定金利の一種として紹介しましたが、変動金利の性質も持ち、ちょうど固定金利と変動金利の中間のような立ち位置の金利方式です。

■固定金利のメリット

固定金利の中でも、主に全期間固定金利型のメリットとしてあげられるのが、金利が途中で上がっていく心配がないことです。固定金利期間選択型の場合は途中で変動金利に切り替わるため、将来金利が上がる可能性がありますが、全期間固定金利型では市場金利が上昇しても金利が上がることはありません。途中で金利が上がることによって家計を圧迫し、ローンの支払いが難しくなる状況にはならないということです。

さらに固定金利は毎月のローンの返済額が一定になるため、どのくらい返済していくか、老後に差し掛かっても返済できるかなど、将来の返済の見通しが立てやすいです。ローンの返済計画に限らず、将来の資金形成の計画も立てやすくなります。

■固定金利のデメリット

固定金利(全期間固定金利型)は、契約が終了するまで金利がずっと変わらないと説明しましたが、固定金利で金利が変わらないことにはカラクリがあります。各金融機関では、将来の金利の変動を見越して金利を決めているためです。

2000年代はずっと低金利が続いていているため、住宅ローンの固定金利は、将来金利が上がることを想定して変動金利よりも高めに設定されています。今後金利が上がれば良いですが、この先も金利が低い状態が続くと固定金利を選ぶメリットはなくなってしまいます。固定金利の強みである金利変動リスクの回避が裏目に出てしまうためです。

固定金利の種類には、選択した期間を超えると変動金利に変わる固定金利期間選択型があると先に紹介しましたが、これは固定金利の低金利が続くことでのリスク、変動金利での金利変動リスクをバランスよくとっている存在だといえるでしょう。

■固定金利が向いている人は?

固定金利(全期間固定金利型)が向いているのは、住宅ローンを利用している間、金利の動きに左右されたくない人です。たとえば、長期的な返済計画をしっかり立てたい人、老後資金の形成も視野にコツコツとローンを返済していきたい人に向いています。固定金利なら途中で金利が変更されて、計画が崩れることがありません。

また、子どもが小さい子育て世帯にも全期間固定金利型の固定金利がおすすめです。子どもが小さいうちは教育費に割く割合もそこまでではないですが、子どもが中学校、高校、大学と進学していくと教育費がかさんできます。そんな中、変動金利によって金利が上がり、住宅ローンの返済負担が増加すると家計を圧迫してしまいます。固定金利の方が将来の教育費も含めた計画を立てられるので、子どもがいる家庭においては将来設計がうまくいくのです。

変動金値とは?

住宅ローンの金利で、固定金利と対をなすのが変動金利です。変動金利は、住宅ローンの契約から払込終了まで、期間中何度も金利が見直され、金利が変わる可能性のある金利のこと。変動金利のメリット・デメリット、向いている人をみていきましょう。

■変動金利の特徴

変動金利は、住宅ローンの返済中にも金利が見直されます。金利情勢に左右されやすく、市場金利が低ければ金利が低くなりますが、反対に市場金利が高いと住宅ローンの金利も上がります。ただし毎日の金利の変動に左右されるのではなく、半年に1回金利の見直しが行われ、必要があれば金利が変更されるというしくみです。

変動金利というと、市場金利が上がれば上がるだけ際限なく住宅ローンの返済にかかわる金利も上がるのではと思われますが、実際には上げ幅は限定されています。いくら金利が急上昇しても、前の金利の1.25倍までしか上がらないというルールがあるためです。仮に1回目の見直しで市場金利が1%から2%に推移していても、住宅ローンの変動金利は1.25倍の1.25%までしか上昇しないということです。ただし上げ幅は前回の金利が基準になるので、この場合ずっと市場金利2%が続くと結果的には4回目の見直しで金利2%に到達してしまいます。

■変動金利のメリット

変動金利のメリットは、低金利の影響もあって固定金利よりも金利が低く設定されていることです。今後金利がどのように変動していくかはわかりませんが、金利があまり変動しないうちは、固定金利よりも利息分の負担を抑えて返済できます。元利均等方式(元金と利息を合わせた返済額が一定)の返済の場合は、毎月支払う一定額のうち利息分が減るので、固定金利よりも早く元金の返済が可能です。

しかも、低金利が続けば続くほど、変動金利の方が固定金利よりも有利になります。固定金利は期間中金利が変わらないこともあり、固定期間=安心と考える人もいるかもしれませんが、必ずしも固定金利の方が良いとは言い切れません。

■変動金利のデメリット

変動金利のデメリットは、金利の変動リスクに弱いことです。はじめのうちは固定金利と比べて金利が低くても、この先もずっと金利が低い状態が維持されるとは限りません。国の経済状況はもちろん、諸外国の影響も受けるため、低金利が続く保証はどこにもないのです。

仮に市場金利が上昇した場合、変動金利も半年に1回の見直しのタイミングでアップします。金利が上がれば、人によっては家計のバランスも変えていく必要が出てくるでしょう。まだ貯金に入れる分を削って返済に充てるのであれば良いですが、食費や学費などその他を削れないとならない場合、これまでのように生活に余裕を持てなくなるかもしれません。

家計のバランスや金利上昇による住宅ローン返済額によっては、返済自体が難しくなってしまうこともあります。

■変動金利が向いている人は?

変動金利が向いているのは、たとえ金利が変動したとしてもどっしり構えていられる人です。どっしり構えるというのは、いちいち金利に左右されない精神的な部分もですが、ある程度の余裕を持った生活ができる金銭的な部分も重要です。金銭面に関しては、契約時に金利の上昇を見越して将来の返済計画を立てることで、ある程度回避はできます。

また、長期の返済ではなく、繰り上げ返済を活用して短期間のうちに返済したい人にも変動金利はおすすめです。20年、30年先の金利を予測することはほぼ不可能ですが、短期間であればそこそこ金利の上昇を予測することができます。しかも変動金利の場合、金利の上昇は前回の1.25倍まで、利息と元金の返済比率は変わるものの、5年間は返済額が変わらないという特徴があります。変動金利の特徴を生かせば、短期返済で変動金利のリスクをできるだけ回避しての計画的な返済が可能です。

固定金利と変動金利で返済額はどう変わる?

ここまで、固定金利と変動金利はどう違うのか、どのような人に向いているのか紹介してきました。ただ、言葉だけの説明では2つの金利の違いがピンとこない人もいるかと思います。もっと視覚的に両者の違いを知るために、住宅ローン契約時に気になる毎月の返済額に固定金利と変動金利がどのように影響してくるのかをみていきましょう。

■毎月の返済額の違い

固定金利と変動金利は、毎月の返済額にどのくらいの影響を与えるのでしょうか。以下、同じ条件の場合で固定金利と変動金利を計算してみましょう。

(例)借入額3,000万円、期間30年、元利均等方式でボーナス払いなし、融資手数料、保証料を考慮しなかった場合

・固定金利の場合(金利は2018年7月の相場に近い1.7%とする)

総返済額:38,318,062円

毎月の支払額:106,439円

・変動金利の場合(金利は2018年7月の相場に近い1.0%とする)

総返済額:34,736,908円

毎月の支払額:96,491円

まず、変動金利1.0%が30年間変化しなかった場合の比較です。実際には30年の間に変動しない可能性は低いですが、仮に低金利がずっと続いた場合、1.7%の固定金利、1.0%の変動金利では、毎月の支払額に1万円もの差が生まれます。総返済額の差は、なんと350万円以上です。

それでは、今度は将来金利が上昇すると仮定して、ちょうど11年後に2%、21年後に3%に上昇したときの変動金利の毎月の支払額をみていきましょう。

総返済額:37,682,129円

毎月の支払額(10年目の終わりまで):96,491円

毎月の支払額(11年目から):106,141円

毎月の支払額(21年目から):111,386円

将来の金利の上昇は予測できないので正解はないのですが、仮に10年につき1%上昇すると仮定した場合、総返済額は固定金利を超えないものの、21年目からの毎月の支払額は固定金利を超えるようになりました。

■変動金利なら借りられるという考えはNG

住宅ローンの契約時、固定金利にするか、変動金利にするか迷うところかと思います。低金利がずっと続いているため、変動金利の方がお得な状況が続いていますが、契約時に変動金利の金利であれば借りられると安易に判断するのはNGです。

変動金利でも金利が今後ほとんど変動しなければ問題ないですが、各金利の毎月の支払額の計算でも触れたように、将来金利が上昇すると毎月の返済額が固定金利を上回る可能性があります。変動金利の方がお得と思って契約しても、将来金利が上がれば、はじめの支払額よりも月々の支払いがプラス2万円、プラス3万円と増えることもあるのです。

固定金利と変動金利はどちらにすべきか

固定金利と変動金利、毎月の支払いのイメージをみてきましたが、これはあくまでも想定です。何十年も先の将来で金利が上がるのか、あるいは低金利状態がずっと続くのかは誰にもわかりません。したがって、固定金利の方がお得、変動金利の方がお得と安易に判断することはできないのです。ただ、将来がわからないといっても、ある程度の指針は知っておきたいもの。固定金利か、変動金利かをどんな基準で選べば良いのでしょう。

■借りたあとに金利の変動チェックをするのか

住宅ローンを固定金利にするか、変動金利にするか、どちらにするか迷いが捨てられないなら、住宅ローン利用後に金利の変動を確認して、適宜見直す可能性があるかどうかで考えましょう。

契約後のことは特に気にしないのであれば、固定金利で問題ないです。反対に、住宅ローン契約後も金利が気になるようなら、変動金利を選んだ方が良いでしょう。なお、全期間固定金利、あるいは固定金利選択型でいずれも固定金利に設定されている場合、基本的に適用中は変動金利に変更することができません。

金融機関によっては固定金利から変動金利への変更を可にしているところもありますが、手数料が発生するほか手続きもあるので、少しでも見直す可能性があるなら変動金利が良いでしょう。

■変動金利から固定金利に切り替えは?

固定金利から変動金利への切り替えはできないこともあると紹介しましたが、反対に変動金利から固定金利への切り替えは可能です。しかし、変更には手続きが必要ですし、手数料がかかります。

また、固定金利は契約した場合満了まで金利が変更しない金利方式ではありますが、売り出されている住宅ローンの商品に関しては変動金利同様見直しが行われています。切り替えたいと思っても、実際に適用されている変動金利よりも高く設定されている可能性も濃厚です。

ただ、同じ金融機関の場合の切り替えで大きなメリットがなくても、ほかの金融機関への借り換えで金利がお得になることもあります。変動金利を選択するなら、契約している金融機関の住宅ローンの金利の状況、他金融機関の金利の状況にもアンテナを張り巡らせていたいですね。

まとめ

住宅ローンの固定金利と変動金利、どちらを選ぶかは判断が難しいところです。低金利状態が続くなら変動金利の方がお得ですし、反対に金利が上昇すれば固定金利の方が毎月の負担が軽くなることもあります。

住宅ローンの金利は固定金利で設定しなければ変更できるので、固定金利と変動金利で迷い、今後見直す可能性があるなら変動金利がおすすめです。自分で判断するのが難しい場合は、住宅ローンを取り扱う金融機関の窓口で相談してみましょう。