「そろそろ教育費が家計を圧迫しだしたな…」というときに活用できるのが教育ローンです。実際に教育ローンの利用を考えて、各商品を比較してみたいと考えている人もいるのではないでしょうか。

教育ローンも借金の一種であることには変わりないため、できることなら支払い時の負担を抑えたいもの。負担軽減を考えるあまり、「低金利のものであればいい」と思っていませんか。確かに金利も大切ですが、低金利にこだわりすぎると大事な部分が抜け落ちてしまうかもしれません。教育ローンの正しい選び方を紹介します。

教育ローンとは?

教育ローンは、子どもが成長していく過程で活用できる教育費のためのローンのこと。教育ローンには主に、国のものと、民間の金融機関のもの2つに分けられます。それぞれどのような特徴があって、どのようなときに利用すべきものなのでしょうか。教育ローンの基本的なことから、教育ローンの種類、教育費を補う点が共通している奨学金との違いまで解説していきます。

■教育ローンとは?

教育ローンは、目的ローンの一種で、子どもの教育にかかる費用に特化したローンです。借りたお金は、学校へ支払う入学金や授業料といった学費をはじめ、教育にかかわるものに使うことができます。“教育”という限られた部分を目的としたローンになるため、カードローンやフリーローンなどのような目的を定めないローンと比べると金利はお得な設定になっているのが特徴です。

中には、国の制度だけで教育ローンは必要ないのではという意見もあるかもしれません。確かに、国の制度により高校の授業料無償化など一部所得の少ない世帯ではお得な制度が利用できるようになりました。ただし、全ての世帯で適用されるわけではありません。

しかも、私立や大学など進学先によっては制度や奨学金だけでは追い付かない部分もあります。教育ローンは、そうした子どものかさばる教育費を補うためのひとつの選択肢なのです。

■国と金融機関の教育ローンの違い

教育ローンは、国が用意しているものと、銀行などの金融機関が用意しているものに分けられます。どちらも教育のためにお金を借りていることは同じですが、借入の条件や金利、保証人、担保の設定などが変わってきます。

まず国の教育ローンは、担保や保証人のいらない固定金利の教育ローンです。担保や保証人を必要としない代わりに、保証料が発生し、借入の上限額もやや低めに設定されています。また、借入では年収の条件が設定されているのが特徴です。

国の教育ローンの場合、年収が一定額以下でなくてはならず、子どもの数に応じて条件の年収は変わってきます。子どもが一人なら世帯年収790万円(※緩和により条件に当てはまれば990万円まで可)が上限です。なお、年収の条件からもわかるように低所得者世帯を主な対象にしているため、世帯年収200万円以下など一部の世帯には優遇があります。

一方、金融機関の教育ローンは国の教育ローンとは違い、年収の上限はないものの、一定の収入がないと利用できないローンです。国の教育ローンより選択の幅が広く、金利は固定金利と変動金利から選べます。担保や保証人に関しては基本的に不要ですが、上限額拡大のために一部金融機関では設定することも可能です。

■奨学金と教育ローンの違い

奨学金は、教育ローンと同じように教育費の準備を目的としたものです。返済の必要がない給付型と、返済の必要がある貸与型がありますが、日本の奨学金の多くは貸与型になっています。ここでは、貸与型の奨学金と教育ローンを比較してみましょう。

貸与型の場合は、奨学金も教育ローンも返済の義務があることに変わりないですが、奨学金は第一種と第二種があり、親の所得によっては無利息タイプのものを利用できることがあります。貸与の対象者も、奨学金が学生自身なのに対し、教育ローンは保護者です。そのため、教育ローンは貸与後すぐに返済の義務が保護者に発生するのに対して、奨学金は学生が卒業した後に返済が始まります。しかも、教育ローンの支払いが一括なのに対して、奨学金は毎月支給する形です。

奨学金も教育ローンも同じ教育費の貸与になりますが、内容やしくみは全く異なります。奨学金は月々の教育費に、教育ローンは入学金や授業料などまとまった費用の支払いに向いた貸与です。

教育ローン契約前に注意したいポイント

ここまで、教育ローンとはどういった金融商品なのか、奨学金と何が違うのかご紹介してきました。教育ローンは借金であるため金利がつきますが、どうせ借りるならできるだけお得に借りたいと思うのが通常ではないでしょうか。

低金利で借りることは、最終的な支払額を抑えることに繋がるため、確かにメリットがあります。しかし、お得な金利だからという理由で教育ローンを選ぶのはおすすめしません。金利以外にも重要なポイントがあるためです。教育ローンを利用する前に押さえておきたい3つのポイントを紹介します。

■用途はどこまで幅があるか

教育ローンと聞くと、どういった内容で利用できるものだと思いますか?入学金や授業料はもちろんですが、同じ教育ローンでも商品によって用途の幅が異なります。

通学のために借りた部屋の家賃代や引っ越し代、通学までの交通費、中には塾や習いごとに利用できるものもあります。教育費といっても金融機関によってその考え方が違うので、意外なものが含まれていることも少なくありません。たとえば国の教育ローンなら、留学の費用、国民年金保険料、パソコン購入費用に充てることも可能です。

教育ローンがどのような用途で利用できるかは重要で、利用用途が広いとそれだけ柔軟に教育ローンを活用することができます。入学金や授業料についてはどの教育ローンでもカバーしていますが、ほかに教育費として教育ローンを活用したいものがあるなら、利用用途に含まれているかどうか確認しておきましょう。

■借り方は自分や家族の生活スタイルに合っているか

金利方式だけでも、固定金利と変動金利という選択肢があります。ほかにも、担保が必要か、保証人は必要か、直接振り込み式なのか…など確認しておきたいことは金利だけではありません。まず、どのような状況で、どのような目的で利用したいのか明確にする必要があるでしょう。

たとえば入学金の用意など、できるだけ早く融資してもらいたい場合は、審査終了から融資のスピードが速い教育ローンがおすすめです。入金まで20日程度かかる国の教育ローンは向いていません。また、融資が口座振り込みなど複数対応している方が良いでしょう。

融通の利く教育ローンが向いているケースは、教育ローンで借りた分以外にも教育費がかさむ場合です。上限金額が広く設けられている教育ローンでも実際にいくらまで借りられるかは、借りる人の属性などにもよるため、希望額が借りられないこともあります。そんなとき、国の教育ローンなどで在学期間中は利息分だけの支払いで良いなど支払い方が柔軟な教育ローンであれば、一時的に月々の負担を抑えることが可能です。

■いくらまで融資がうけられるか

もうひとつ、確認しておきたいのが融資の上限額はいくらかということです。教育ローンの融資可能額が低いと、いくらお金を借りたくても、融資可能額の範囲までしか借りることができません。

入学金のみなど、一時的な少額の借入であればそこまで気にする必要はないかもしれませんが、実際に学校に入ったら予想以上にお金がかかったということもあります。融資可能額は金融機関などによっても判断が変わってくるため、十分な融資額でない場合は、ほかの金融機関などで検討するのも選択肢として考えておきましょう。

また融資可能額以外にも合わせて注意しておきたいことがあります。それは、教育ローンにもともと設定されている上限額です。いくら借り入れる人の個人的評価が良くても、そもそもの上限額が高くないと、融資可能額も上限額の範囲内でしかなくなってしまいます。高額な教育費を借りたい場合は、融資可能額と合わせて、借入上限額も確認しておきましょう。

教育ローンのメリット・デメリット

ここまで教育ローンとは何か、教育ローンを選ぶとき何に注意すれば良いのかお話ししてきました。教育ローンは、確かに教育費を補う魅力的なものではありますが、教育ローンでなくてもほかに選択肢はあるはずです。

先に紹介したような奨学金でも教育費を補うことができます。少額の借入であれば、カードローンを利用する方法もあるでしょう。それでも教育ローンを利用するのに意味はあるのでしょうか。教育ローンのメリットとデメリットを洗い出して、教育ローンの必要性を考えてみましょう。

■教育ローンのメリット

教育ローンのメリットは、利便性の高さです。教育ローンは、大手銀行はじめ、地方銀行などさまざまな金融機関で取り扱いのあるローンです。取り扱いが多いということは、それだけ競争があるということ。

教育ローンの内容を金融機関ごとに見ていくと、教育費の範囲が広かったり、上限額が1,000万円以上あったり、特色のある商品が多いです。さまざまなタイプの教育ローンがあるので、それだけ自分のライフスタイルや教育費の確保のための教育ローンが見つけやすくなります。また、幅広い教育費に利用できること、一括でお金を受け取れることなど便利さも教育ローンのメリットです。

たとえば、教育ローンと同じ教育費という目的を持った奨学金は、申請できる時期が限られていたり、受取が毎月少しずつだったりと、教育ローンのような便利さはありません。しかも、奨学金の振り込みは6月からです。教科書や教材費の購入など、集中するのは4月や5月であるのに、肝心なときにお金を受け取れません。

■教育ローンのデメリット

奨学金は、子どもが将来返済することを条件にお金を借りるのに対して、教育ローンは保護者がお金を借りるものです。教育ローンの借入は保護者になるため、どうしても保護者の年収や属性など、保護者が審査対象になります。

ここで問題になるのは、低所得者といわれる世帯です。お金がないからこそ借りたいにもかかわらず、金融機関だと十分な収入がないという理由で借入できないか、あるいは希望の額に満たない可能性があります。

それでは、低所得者向けの優遇がある国の教育ローンを利用すれば良いのではと思われるかもしれませんが、国の教育ローンは条件が多く、審査も厳しいといわれています。状況によってはお金を借りられない可能性もあります。

これに対し、奨学金は親の収入が一定以下でないと対象にならないなど、低所得者を対象とした優遇が充実しています。世帯収入や利用者の所得によっては、教育ローンの利用が難しい場合があるでしょう。

まとめ

ローンは低金利の方がお得というのは、教育ローンには当てはまらないかもしれません。融資額がいくらか、どのような教育費に利用できるのか、教育ローンは金利だけでは判断できない要素が多いためです。

教育ローンを選ぶうえで金利も大切なポイントではありますが、金利だけで判断しないようにしましょう。それよりは、教育ローンの商品の中身をよく理解して、家族のライフスタイルに照らし合わせることが大切です。教育ローンの利用が適切かわからないときは、銀行の窓口を活用してみましょう。実際に窓口で相談すると、どんな教育ローンが必要なのか具体的にイメージしやすくなります。