住宅ローンを返済していると、繰り上げ返済をするべきか気になってきますよね。繰り上げ返済は確かにメリットがありますが、損をしてしまう場合や、行わないほうが良い場合もあります。

この記事では、繰り上げ返済で失敗しないために、仕組みや方法、効果や注意点などを詳細にお伝えします。

繰り上げ返済とは?

繰り上げ返済とは、本来の決められた返済額(毎月の返済額・ボーナス返済額)とは別に、借入額(元金)の一部または全額を返済することです。繰り上げ返済をすると全額が元金に充当されますが、タイプによって効果に違いがあるので、それぞれの特徴やメリットを確認しておきましょう。

■ローンの繰り上げ返済の仕組み

繰り上げ返済には、「期間短縮型」と「返済額軽減型」の2つのタイプがあります。どちらも繰り上げ返済を行う時期が早ければ早いほど、利息軽減効果は大きくなります。

【期間短縮型】

毎月の返済額は変えずに、返済期間を短くする方法です。毎月の返済額が変わらない分、繰り上げ返済の効果は実感しにくいですが、トータルの利息軽減効果は返済額軽減型より大きくなります。

<向いているケース>

★利息の支払いをできるだけ減らしたい人

★早くローンを完済したい人

【返済額軽減型】

返済期間は変えずに、毎月の返済額を減らす方法です。期間短縮型より利息軽減効果が小さいですが、変動金利では金利が上がる前に繰り上げ返済をすることで、毎月の返済額の増加を抑えることができます。

<向いているケース>

★今後の教育費などの支出増や、収入減(共働きではなくなるなど)に備えたい人

★毎月の返済額が負担になってきた人

■ローンの繰り上げ返済のメリットは?

繰り上げ返済は、利息の負担を減らしたり返済期間を短くしたりできるだけでなく、「借金をしている」という精神的なプレッシャーも軽くしてくれるメリットがあります。しかし、つぎの3つの点には注意が必要です。

<手数料>

銀行によって、繰り上げ返済にかかる手数料は異なります(無料~数万円)。積極的に繰り上げ返済をして利息を減らしても、手数料がかさんでしまっては意味がありません。手数料はいくらか、無料になるための条件はあるかなどをチェックして、繰り上げ返済のしやすい銀行を選ぶことも大切です。

<住宅ローン減税>

繰り上げ返済で残高が減ると控除額も減り、返済期間が10年未満になると減税の対象外になります。繰り上げ返済が有利か、住宅ローン減税のフル活用が有利かは条件によって異なるので、試算をして比較しましょう。

<万一の場合の保障>

住宅ローンの条件として、団体信用生命保険(団信)に加入する人がほとんどだと思います。団信は、ローンの返済中に契約者に万一のことがあった場合、保険金でローンを完済してくれます。

もし、繰り上げ返済をして手元の資金が減った状態で万一のことが起きたら、団信のおかげでローンはなくなりますが、家族の生活資金(現金)が足りなくなる可能性があります。繰り上げ返済をする前に、万一の場合の保障は十分か確認が必要です。

繰り上げ返済は結局お得なのか?

やはり気になるのは、「繰り上げ返済はお得なのか」ということですよね。実は、繰り上げ返済でお得になることもあれば、損(失敗)してしまう場合もあります。ここでは、繰り上げ返済の効果をシミュレーションして見ていくとともに、繰り上げ返済に向かないケースも合わせて確認しておきましょう。

■繰り上げ返済で利息はどれくらい変わるのか?

繰り上げ返済でどれくらいの効果があるのか、返済期間短縮型と返済額軽減型で比べてみました。

【条件】

借入額3,000万円、返済期間35年、全期間固定金利、金利1.5%、元利均等返済(ボーナス返済なし)、3年後に100万円繰り上げ返済

<返済期間短縮型>

<返済額軽減型>

同じ時期に同じ金額で繰り上げ返済をしても、タイプが違うと利息軽減額には2倍以上の差がでています。しかし、トータルの利息軽減効果が大きいからと単純に期間短縮型を選ぶのではなく、「定年までに完済したい」「毎月の家計の負担を軽くしたい」など、繰り上げ返済をする目的も含めた上で適した方法を選ぶのがポイントです。

■繰り上げ返済しないほうが良い事例は?

魅力のある繰り上げ返済ですが、つぎのような場合には繰り上げ返済はおすすめできません。

・生活予備費が残らない

・教育費など、今後出費を予定している資金の貯蓄ができていない

基本的に、繰り上げ返済は余裕資金で行うことが大切です。繰り上げ返済をしたことでお金が足りなくなり、それを補填するために別の金利の高いローンを借りてしまうことになったら元も子もありません。無理に繰り上げ返済をしようとせず、まずは貯蓄を優先しましょう。

このほか、住宅ローン減税を優先させたほうがお得な場合や、借り換えをしたほうがお得な場合もあります。もし、繰り上げ返済するべきかどうか自分では判断が難しければ、銀行の窓口やファイナンシャルプランナーに相談してみるのもおすすめですよ。

まとめ

住宅ローンの繰り上げ返済は、利息軽減や返済期間短縮の効果など、メリットが大きい返済方法です。しかし、繰り上げ返済することで逆に家計が苦しくなってしまったり、損をしてしまったりすることもある、ということがお分かりいただけたと思います。

「失敗した!」と後悔することのないように、繰り上げ返済のタイミングや金額は慎重に検討することが大切です。