資産を運用、または形成する方法に、不動産投資という方法があります。不動産投資とは、他人に貸し出すための物件を所有して、家賃収入を得て資産を増やす方法のことです。しかし、不動産投資は投資の要である不動産を用意できなければ意味がありません。

しかも、不動産を用意するには少なくとも数千万円の資金が必要です。ただ、数千万円の資金をなかなか用意するのは難しいもの。そこで不動産投資のための資金として活用できるのが不動産投資ローンです。不動産投資ローンの特徴から住宅ローンとの違いまでお話しします。

不動産投資ローンとは?

不動産投資は、入居者さえ途切れなければ、毎月安定した収入を得られる魅力的な金融商品です。実際に不動産投資をしてみたいと考えている人もいるかもしれませんね。しかし、ネックとなるのが投資のための不動産の用意です。貸し出すための不動産を所有(購入)していないと不動産投資ができません。まだ物件を所有していない場合は、投資用の不動産を購入する必要があります。そのためには、通常不動産を購入するだけの自己資金が必要です。

しかし、不動産を購入するだけの蓄えがなくても不動産投資はできます。金融機関からお金を借りることで不動産投資用の物件を用意できるためです。今回はそんな不動産投資にかかわるローンサービス、不動産投資ローンについて特徴と商品の内容を紹介します。

■不動産投資ローンとは?

不動産投資ローンとは、不動産投資用のマンションやアパート、一軒家など居住用住宅を購入する場合に利用できる金融機関のローンサービスです。不動産投資は、自分で賃貸用のマンションなどを購入しなければならないようなイメージがあるかもしれませんが、自己資産の用意は必須ではありません。

こうした不動産投資ローンが出てきたことで、不動産購入のための資金をすぐに用意できなくても不動産投資ができるようになりました。つまり、不動産投資ローンを活用することで、資産家でなくても不動産投資に手を出しやすくなったということです。

実際に、平日は会社員として働いて、休日は不動産を持つオーナーとして不動産会社と不動産投資の話をつけたり、ワンルームだけのマンションオーナーになったりする人もいます。

■住宅ローンとの違いは?

不動産に関連するローンには住宅ローンがありますが、住宅ローンと不動産投資ローンとでは内容が大きく異なります。まず、ローンの目的の違いです。住宅ローンは、新築や中古住宅の購入のほか、リフォームでも利用できるローンですが、いずれも対象はローンを利用する本人や家族が居住する住宅に限られます。不動産投資用の住宅に利用することはできません。

一方の不動産投資ローンは、不動産投資のための住居購入で利用できるローンサービスです。住宅ローンとは逆に、自身の居住用住宅には利用できません。

このほかにも、住宅ローンと不動産投資ローンとでは審査の基準、金利の設定が異なります。金利については、一般的に住宅ローンよりも事業用の不動産投資ローンの方が設定は高めです。このように、住宅ローンと不動産投資ローンは、同じ不動産に対するものではありますが、まったく性質の異なるものであることがわかります。

■不動産投資ローンを受けられる金融機関は?

個人の住居購入で利用できる住宅ローンは豊富にありますが、かたや不動産投資ローンとなると取り扱っている金融機関は限られています。個人の住宅購入よりも規模の大きい事業用の不動産は、金融機関にも多大なリスクがかかるのが理由です。

それではどういった金融機関で扱われているかということですが、大手銀行では取り扱われているケースも多いです。しかし、大手銀行の場合貸出先を絞る傾向にあるため、基本的には富裕層を対象にしものになっています。

一般の会社員などが不動産投資ローンを利用したい場合は、大手銀行ではなく都市銀行や地方銀行などが狙い目です。住宅ローンの審査と比べて厳しいといわれる不動産投資ローンですが、中小の銀行なら、大手銀行と比べてさまざまな角度から柔軟に判断してもらえることがあります。

■不動産投資ローンの審査基準は?

勤務先や勤続年数、年収など住宅ローンでも審査される項目は共通していますが、いくら勤務先や年収などの個人の属性の評価が良くても不動産投資ローンが利用できるわけではありません。不動産投資ローンでは個人の評価のほか、自己資金がいくらあるか、物件の評価はどうかという部分も審査の対象になります。

特に注意したいのが、個人の努力ではどうにもならない対象となる物件の評価です。物件の評価は、立地がどうか、耐震性はどうか、建物診断はどうかなど、金融機関が独自に収益性を評価して融資をするかどうか決めます。不動産評価の材料には、不動産投資ローンの利用を希望する人によるレントロール資料と呼ばれるものも重要になるので注意しましょう。

レントロール資料は、実際に貸し出した場合をシミュレーションするもので、家賃や契約条件など事業計画として問題がないか判断するときに確認される資料です。

このように、不動産投資ローンの審査基準は特殊で、将来の収益性を確保できるかという部分まで見られるので、住宅ローンと比べると厳しいといわれます。

不動産投資ローンを利用するメリット

ここまで不動産投資ローンの特徴、住宅ローンとの違いをお話ししてきました。不動産投資ローンは、住宅ローンとはまったく異なるもので、不動産投資をしたい人向けのローンサービスであることがわかったかと思います。

それでは、不動産投資において不動産投資ローンを利用するメリットは何なのでしょう。不動産投資で不動産投資ローンが生きる理由3つを紹介します。

■自己資金が少なくても不動産投資ができる

不動産投資をはじめるなら、少なくとも1,000万円程度の資金は用意しておきたいところ。たとえば、都市部で不動産投資をする場合、購入額の低いワンルームマンションでも1,000万円前後するためです。不動産の場所にもよりますが、アパート1棟分、一軒家となるとさらに資金が必要になります。

仮に1,000万円が必要な場合、年間100万円の貯金ができたとしても不動産投資を開始するまでに10年もかかってしまいます。しかし、不動産投資ローンを利用すれば、不足分を補えるので自己資金が十分になくても不動産投資が可能です。

不動産投資ローンの審査をクリアするには、ある程度の自己資金があった方が望ましいですが、物理的には資金がそれほどなくても不動産投資ができるということです。不動産投資=富裕層の投資というイメージもあったかもしれませんが、不動産投資ローンによって敷居は低くなっています。普通の会社員であっても、不動産投資に挑戦することは可能です。

■投資のスピードを早められる

不動産投資を成功させるためのポイントのひとつが、所有する不動産を増やすことです。なぜなら、所有する不動産がひとつだとリスクが大きくなるためです。所有する物件が1部屋の場合、空室になると空室の期間は家賃収入が得られないという問題が発生します。しかし、3部屋所有していて1部屋空室になっても、2部屋分の家賃収入は発生するため、収入がゼロにはなりません。

不動産は空室のリスクだけでなく、経過年数のリスク、災害のリスクなどさまざまなリスクを抱えています。リスク回避を考えるなら、所有する物件ひとつだけで運用していくのはおすすめしません。

不動産投資ローンがあれば、自己資金に加え不動産購入の足しにできるので、うまく使うことで、所有する不動産を増やし投資のスピードを上げることができます。うまくいけば家賃収入をローンの繰り上げ返済、あるいは自己資金にプラスして、さらなる投資拡大を狙うことも可能です。

■家賃収入でローン返済ができる

住宅ローンは、自身が得た会社での給料などから返済していきますが、不動産投資ローンは返済の原資が異なります。不動産投資ローンで返済資金になるのは、家賃収入です。不動産投資ローンを組んでいる不動産オーナーは、家賃収入から毎月の不動産投資ローン返済分を差し引いた額が実質の収入になります。

なお、家賃収入で不動産投資ローンの毎月返済分が補えるということは、マイナスにならない限り日々の生活費などに影響しないということです。ローンを組んだところで毎月の支払いをコンスタントにこなしていけるか不安に思う人もいるかもしれませんね。家賃収入がローンの返済額を下回ることなく継続的に入ってくるようであれば、いくら高額なローンを組んだとしても心配いりません。

だからこそ、返済を滞納するリスクを抑えるために、さきほどお話しした投資のスピードを上げることが重要になります。投資のスピードを上げて毎月滞納することなく不動産投資ローンを返済していけば、実績も生まれ、金融機関からの融資をさらに受けやすくなります。

不動産投資ローンを利用するデメリット

ここまで不動産投資ローンを利用するメリットについてお話ししてきました。不動産投資が成功し、毎月しっかり家賃収入が入ってくれば魅力的な商品であることがわかります。さらに、投資スピードを上げ、投資の良い流れを作ることにも役立つので利用しない手はありません。

しかし、不動産投資ローンの利用は良いことばかりではありません。不動産投資ローンを利用することによるデメリットもあります。

■ローン返済が困難になる可能性もある

実際のデータでは1%未満といわれているものの、不動産投資ローンの返済が困難になる可能性もゼロではありません。不動産投資ローンのデメリットを上げるとすれば、家賃収入を思うように得られないことで、ローンの返済が困難になり、返済額を滞納してしまうことでしょう。

ローン返済ができなくなることで、担保にしていた不動産が競売にかけられる可能性があるだけでなく、返済が追い付かない場合は破産にまで追いつめられる可能性もあります。不動産投資と不動産投資ローンの利用によって、経営が思うようにいかなければ生活が一変してしまうこともあるのです。

なお、ローン返済が困難になる可能性というのは、空室ができ居住者が見つからない状態が続くことを指します。逆に考えれば、居住者がつくように、入居者を獲得するための募集をかけたり、リフォームを行ったり管理を怠らなければ、よっぽどのアクセスが悪い場所でない限り居住者をつけることはできるということです。

そもそも、不動産投資ローンを提供している金融機関は、将来の収益性を見越して融資を実行します。評価の低い物件に関しては融資の対象としない可能性が高いため、基本的にはオーナーの努力次第で、デメリットであるローンの滞納を回避することができます。

まとめ

不動産投資ローンは、不動産投資を考えている人にとって、活用しがいのあるローンサービスです。ただし、同じ住宅の購入を目的とした住宅ローンとは対象や審査が異なります。住宅ローンと混同しないようにしたいですね。

なお、不動産投資ローンは、自己資金が十分にない場合はもちろん、自己資金がある場合でも次の投資に回すことができるので、不動産投資の拡大にも役立ちます。ただし、経営次第では将来ローンの返済が困難になる可能性があることに注意しましょう。