家の購入は人生でそう何度もない大きな買い物です。多くの方は、一括で購入するよりも、ローンを組んで毎月返済していく方法をとることが多いのではないでしょうか。家のローンも、他のローンと同様、借り入れする人が返済できるかを金融機関が確認したうえで初めて利用できる金融商品です。希望する額を借りられるとは限りません。

年収に合った借入額の設定と住宅購入にかかる費用など、家のローンを組む前に知っておきたい知識をまとめました。

住宅の購入にかかる金額は?

物件価格のみであればシンプルで分かりやすいですが、家を購入するのにかかる費用はそれだけではありません。仲介手数料や不動産取得税などの税金をはじめ、さまざまな費用が発生します。中には現金で用意しなければならない費用もあるので、事前に用意しておかないと「こんなはずではなかった」と後悔する羽目になるかもしれません。

具体的にどんな費用があるのでしょうか。不動産購入時やローン契約時などでかかる費用を確認してみましょう。

頭金

頭金とは、家を購入するとき初めに払う費用のことです。実際には頭金という費用の項目があるわけでなく、さまざまな不動産に関わる費用の一部を先に支払うというイメージです。一般的には、物件価格2割程度を頭金として用意しておいた方が良いとされています。

なぜ頭金を用意するべきなのでしょうか。1つは家のローンの支払期間を短くするためです。家のローンは20年や30年の長期で組むのが一般的ですが、借入期間が長いと定年間近、または老年期に差し掛かってしまいます。収入が減った老後にローンを払い続けるのは、金額にもよりますが、なかなか厳しいものです。もちろん家のローン審査では今後の支払い予想もみられるので、できるだけ老後に差し掛からない方が印象が良いです。

もう1つ頭金を用意した方がいい理由は、売却したときにローンの支払いが残るリスクがあるためです。売却時は購入時の価値よりも下がるのが一般的ですので、ローン残高が売却額を上回ると、家はないのにローンだけを払い続ける状態になってしまいます。

ただし、頭金の用意はマストではなく、実際に頭金なしで家を購入する人も少なくありません。住宅ローン控除を有効活用したい場合、消費税が上がる前に購入したい場合は頭金なしで購入するのも1つの手段かもしれません。

不動産購入取得に関わる費用

まず購入代金の一部として用意するのが、手付金と申込証拠金です。手付金とは売買契約時の前払い費用のこと。契約内容によって変わりますが、一般的には購入代金の5~10%です。3,000万円の物件であれば150~300万円の手付金が必要ということです。契約から引き渡しまでに数カ月かかることから、先に一部を払うようになっています。この手付金は、最終的に頭金に充てられる費用です。

申込証拠金は購入申し込み時に支払うもの。手付金が売主へ支払うものであるのに対して、申込証拠金は不動産会社に支払うものです。中古物件の場合はこれがないこともあり、ある場合でも2~10万円が相場です。

不動産会社に支払うお金といえば、仲介手数料も忘れてはいけません。仲介手数料は物件価格の3.24%に64,800円を足した額が上限です。物件価格3,000万円なら、103万68,000円が上限ということになります。

さらに税金関連なら、家の購入で発生する不動産取得税、不動産登記のための登録免許税、土地や建物の所有者に課せられる固定資産税と都市計画税、売買契約書に貼る印紙税があります。固定資産税と都市計画税は1月1日時点の所有者に課せられるものなので、日割りで売主に支払うのが一般的です。

ローン契約関係にかかる費用

家のローンは住宅購入のために契約するものですが、銀行などとの契約の段階でも費用が発生します。まず銀行や保証会社に対する事務手数料です。固定で手数料が決まっていることもありますが、物件価格のうち2%などのように設定されていることもあるので、よく確認しておきたい部分です。例えば、固定の2万円と3,000万円の物件の2%(60万円)では大きく差が出ます。

そして、ローン契約において高額になりがちなのが、ローン保証料。ローンを滞納したときに保証会社が弁済する際の費用です。35年契約の場合は、一般的に1,000万円につき約20万円で設定されます。

このほかにも契約内容によって費用が発生することがあります。例えば契約者死亡や高度障害時のための団体信用生命保険料(団信)に火災保険料、ローン契約時の印紙税です。団信や火災保険に関してはローン契約の条件になることもあるので注意しましょう。

その他の費用

その他の費用には、新築マンションの購入でかかる修繕積立基金や管理準備金、一戸建ての購入などでかかる水道負担金があります。

新築マンションの購入に関わる修繕積立基金は、定期的に行われる大規模な修繕に充てる費用です。20~40万円程度で、マンション購入で毎月支払う修繕費積立金の負担を抑えます。管理準備金とは、マンションの管理組合に支払う費用のこと。清掃や消耗品の購入など内訳は多岐にわたり、数万円の支払いになることが多いです。

一戸建てなどの水道利用に関係するのが水道負担金。水道負担金の有無や金額は自治体によって異なるので、物件購入前に確認しておくと安心ですね。

その他、細かいところでは引っ越し費用や家具購入のための費用があげられます。住宅購入に関わる費用には高額なものもあるので、引っ越し費用やどうしても必要な家具がある場合は事前にリストアップして資金を確保しておくことをおすすめします。

家のローンの借り入れ前に考慮しておきたいこと

家のローンの返済額は、現在の状況や返済期間などを考えて設定すると思います。しかし、本当にそのまま契約を進めても問題ないでしょうか。返済期間や利息ばかりに目を向けてはいませんか。現実的に返済可能なプランで組んでいかないと、自分の首を自分でしめることになってしまいます。

家のローンを契約する前に確認しておきたい、毎月の返済額、ライフプランを考えた返済額設定の2つのポイントを紹介します。

毎月の返済額に無理がないか

家のローンを組む際にしっかり考えたいのが無理な返済計画になっていないかということです。持家があれば、ローン支払い終了後は家賃などの費用がかからないため、老後の生活は楽になります。自分の家だからこそ、自由度が高いのも魅力的でしょう。

しかし、無理な返済計画を立てると、そうした老後の夢も壊れてしまいます。生活に支障が出る他、いずれ払うことすら難しくなり、ローンを滞納し、家を売却しなければならない事態も考えられるためです。せっかく購入した家を、お金を理由に手放したくはないですよね。

ローンの返済期間を短くすることも大切ではありますが、毎月の返済に無理がないかバランスを考えることも同じように重要です。一般的に目安とされるのが年収の25%。年収400万円であれば、年間100万円はローン返済費用に充てても問題ないということです。年間100万円のプランなら、毎月約8万円を返済していく形になります。すでにアパートやマンションなどを借りて、新しく家を購入する場合は、現在借りている家賃を参考に無理でないか計画を立ててみるのもいいですね。

ライフプランの変化による収入の変化

もう1つ考えておきたいのが、ライフプランやライフステージの変化で将来的に収入や支出が変化する可能性です。例えば夫婦の場合、出産や育児によって一時的に収入が減る可能性があります。会社を辞めずに育児休暇を使う方法もありますが、会社で働いていたときの給与が満額支払われるわけではありません。

また育児が落ち着いても、子どもが大きくなると食費などの生活費や教育費の負担が増えていきます。各ライフステージの中でも子どもが成長して巣立つまでの期間に大きな支出が発生しやすいので、現在の収入や支出ではなく、一番支出の多い時期を起点に家のローンを考えた方が良いです。

先ほど、ローンの支払いは収入の25%が目安と紹介しましたが、ライフプランの変化を考えると、目安額ギリギリで設定していると後々生活が苦しくなる可能性があります。多少の余裕を持たせてローンの返済計画を考えることも大切です。

頭金はどれくらい用意すべきか

家を購入する場合、頭金は物件価格の2割くらいをみておいた方がベストだと紹介しましたが、実際は貯金とのバランスを考えて用意するべきです。できるだけ頭金として払っておくのも大切ですが、家購入を含め今後必要な費用を考えておかないと家計がマイナスになってしまうことがあります。

それでは頭金を作るときどのようなことに注意するべきなのでしょう。頭金を用意する前に知っておくべき2つの注意点をみていきましょう。

貯金をすべて頭金にしてはいけない

後々の返済のことを考えると、できるだけ頭金を用意しておきたいと思うものです。しかし、貯金すべてを頭金にしてしまうのはいろいろと問題があります。

確かに支払期間を減らしたり、毎月の支払いを抑えたりすることはできますが、貯金全額を頭金に回すと何かあったときに対処できません。例えば、病気やケガがあったときです。軽いものであれば良いですが、休職が必要になったとき、一時的に収入が激減してしまいます。貯金を切り崩して生活しようとなったとき、頭金のために全てなくなってしまっていては元も子もありませんね。

また、車の購入代や子どもの入学金など近い将来に大きな出費がある場合も注意が必要です。頭金として貯金をすべて使い果たしたことで、直近で必要なものにお金が使えなくなってしまいます。貯金がなく、どうしてもお金が必要な場合はカードローンなどの利用に走ってしまうかもしれません。そうなると、借入金に対しての利息が発生してしまうので、結果的に損をします。必要なお金は頭金に入れず残しておくことが大切です。

頭金として使って良いお金は?

貯金すべてを頭金に回すべきではないですが、頭金はどうやって作れば良いでしょうか。頭金に使えるお金を求めるには、まず頭金から除外したい3つの費用を知ることです。

1つは家を購入するために必要な費用。ローンに含まれない税金や手数料など現金で支払わなければならない部分です。

2つ目は万一のときの費用。病気やケガなど急なことで収入が絶たれてしまう時期があるかもしれません。会社員であれば生活費の3~6カ月分くらいは万一のために用意しておきたいです。

3つ目は、将来の生活のためのお金。老後の生活費ではなく、車の購入や子どもの教育費など、割と直近で必要なお金です。入学など大きなイベントがあるときは、ある程度のまとまった額を残しておく必要があります。

頭金として使える額は、家購入のために現金で払う分、万一のための分、近い将来のための分を差し引いた金額です。

仮に1,000万円の貯蓄があった場合、家購入の準備金100万円、万一のための費用200万円、将来のための費用200万円だとすると、頭金に回せるお金は残りの500万円になります。

年収別住宅ローンの借入金額の目安

頭金として用意できる金額が分かったところで、もう1つ気になるのが実際に借り入れできるローンの目安ではないでしょうか。頭金と借入額の目安を知ることで、実際にどのくらいの物件を購入できそうかが分かってきます。

年収によって組めるローンの金額は変わってくるので、年収400万円未満の場合、年収500~800万円の場合、年収1,000万円以上の場合でそれぞれ考えてみましょう。

年収400万未満のモデルケース

年収400万円の場合、年間のローン支払い額の目安25%は100万円です。生活に少しゆとりを持たせたいのであれば20%の80万円を目安にします。なお、家のローンの支払いには購入費の他に利息も含まれるので、利息を含めた計算が必要です。35年ローン、1.5%の固定金利で契約した場合の借入額は2,000~2,720万円が目安です。

2,700万円を借り入れた場合、300万円の頭金があれば3,000万円までの物件を購入することができます。頭金が500万円であれば3,200万円まで物件の選択が可能です。もし2,700万円借り入れた場合の利息は7,721,315円になるので月々約83,000円支払っていくことになります。2,000万円の借り入れであれば、月々のローン支払い額は約61,000円です。

年収300万円の場合、ローン借り入れ可能な額は、1,650~2,000万円にまで落ちます。同じように頭金を300万円用意しても2,000万円なら2,300万円、500万円なら2,500万円までの物件に限られてしまいます。年収が100万円違うだけで、購入できる物件の範囲は1,000万円くらい違ってくるのです。

年収400万円くらいの場合、頭金を増やそうとすると家を購入するまでの期間が長くなってしまいがちなので、どうバランスを取るかが難しいところですね。

年収500~800万円のモデルケース

年収500~800万円クラスは、日本の平均年収よりも少し年収が高いクラスです。年収500万円の場合、借り入れ目安の25%は年間125万円、20%なら100万円になります。ローンの契約を年収400万円のときと同じ35年、1.5%の固定金利で考えるのなら借り入れ可能額は2,720~3,400万円になります。月々の支払いは、2,720万円借り入れの場合約83,000円で、3,400万円借り入れの場合約104,000円です。

仮に3,400万円借り入れた場合、頭金300万円なら3,700万円まで、反対に4,000万円の物件を購入したいなら頭金600万円は用意しておくべきです。

飛んで、年収800万円だった場合は、25%計算で年間200万円、20%計算で年間160万円が目安です。借入額の目安は4,100~5,400万円。4,100万円借り入れの場合は月々約125,000円、5,400万円の場合は月々165,000円支払っていくイメージになります。

年収800万円クラスになると頭金として用意できる額も増えるので、頭金さえ用意できれば6,000万円や7,000万円クラスの物件を購入することが可能です。エリアにもよりますが、東京23区の新築マンションの相場は5,700万円くらいなので、年収800万円あれば無理なく購入できそうですね。

年収1,000万円以上のモデルケース

年収1,000万円になると借り入れ目安である25%は年間250万円、20%なら年間200万円になります。5,400~6,800万円が借り入れできる目安です。頭金さえ用意できれば1億円近い物件の購入も夢ではないですね。なお、月々の支払い額は、5,400万円の場合で約165,000円、6,800万円の場合で約208,000円になります。

仮に月々20万円だった場合、年収1,000万円の月々の手取りは60~70万円程度なので、だいたい3分の1をローン返済費用に充てることになります。年収1,000万円クラスになると教育費へのウエイトも高くなるので、頭金含めて7,000万円程度で考えておいた方が現実的かもしれません。ローン返済費用が多いと感じる場合は、借入額を減らして頭金を増やすか、物件のレベルを下げるかで考えてみましょう。他の年収と比べると選択肢の幅が広くなるのが、このクラスの特徴です。

なお年収はあくまで参考値。将来年収が下がりそうな場合、転職を考えている場合、教育費など別の支出を重視したい場合は、家のローンをもっと下げて契約した方が生活にゆとりを持てます。

まとめ

家のローンの借り入れ可能額は年収によって変わってきます。借り入れ可能額を目安に、どのくらいの物件を購入できそうか、頭金はどのくらい貯めるべきか計画を立てていきましょう。なお、ご紹介した借り入れ可能額は、あくまでも参考値。住宅ローンは長期借り入れになるため、借入期間中に転職した、病気になったなどの不測の事態が起こる可能性もあります。また、教育費など別のことにお金を使いたいと考える人もいると思いますので、参考にしながら自分の状況に合わせて考えることが大切です。

また、年収ごとの借入額はあくまで支払っていける金額であるため、実際の契約とは異なる場合があります。実際に金融機関で借り入れできる額を知りたいときは見積もりをとってもらいましょう。