住宅ローンの返済期間は、どのくらいが一般的だと思いますか?やはり高額な買い物になるので35年でしょうか。

しかし、60歳を定年と考えて60歳までに返済したい場合は、25歳でマイホームを購入しなければなりません。25歳でマイホームと考えると、現代の考え方としてはまだまだ早いと感じるのではないでしょうか。

それではマイホームの購入時期を遅くすれば良いのかというと、今度は本当に支払っていけるのかという問題が発生してしまいます。35年ローンは実際のところどうなのか、実情と解決方法を紹介します。

「35年ローンは昭和の遺物?」

35年の長期住宅ローンは、月々の支払い額を抑えることができますし、短期で住宅ローンを組むよりもワンランク上の住宅を購入できる夢が広がります。しかし、35年ローンは時代錯誤の昭和の遺物。今や現代の生活スタイルには合わないものなのかもしれません。35年ローンで本当に住宅ローンを組んでも問題ないのか、35年ローンの問題点について洗い出していきましょう。

35年ローンの前提は35年の安定収入があること

住宅ローンを35年で組むのはそう珍しいことではないでしょう。しかし、35年という縛りは今の現代社会にとって似つかわしくないものです。そもそも35年ローンというのは、経済が発展途上だった昭和の時代だったから成り立ったようなもの。35年同じ会社に勤めて、さらに年々給与も増えていってと、安定した収入があったからこそ崩れなかったものです。

それでは現代は、昭和と比べてどうでしょうか。さまざまな政策が行なわれてはきましたが、経済は伸び悩み鈍化しているのが現状です。決して昭和の方が良かったというわけではありません。昭和あたりは経済発展のポテンシャルが高かったため、経済も急成長していきました。しかし、現代はある程度豊かになり、ものにもサービスにもあふれた時代です。今後、昭和のような経済の伸びは期待できません。

また、昭和と比べると働き方もずいぶんと変わってきました。正社員が当たり前だった時代から、正社員や非正規社員、フリーランスなどさまざまな働き方へシフトしてきています。さらに正社員として働いていても安心できるわけでなく、早期退職で職を失ったり、会社の問題発覚による事業縮小などで転職を余儀なくされたりするケースもあります。昭和では当たり前だった安定も今や昔の話です。

40歳で購入したら完済は75歳に

35年ローンの問題は、住宅購入者の年齢にも問題があります。昭和であれば20代や30代でマイホームを持つことは珍しくなかったかもしれません。しかし現代社会では、20代など若いうちからマイホームを持つ人は多くないのが現状ではないでしょうか。

マイホームを建てられるだけの将来設計ができない、晩婚化しているなどさまざまな問題もあるでしょう。それだけ、マイホームの購入時期が遅くなるということは、住宅ローンの支払いも退職後にかかる可能性があるということです。

なお、マイホームの購入者の年齢で多いのが30代後半から40代にかけて。40歳でマイホームを購入したとして、35年ローンにすると完済するのは75歳のときです。

60歳で退職するとしたら、60歳から75歳の間は年金だけでどうにかしていく必要があります。厚生年金加入者の場合、年金の支給は夫婦で約20万円が平均です。仮に住宅ローンの支払いが月10万円だとして、残りの10万円で2人の生活は維持できるでしょうか。水道光熱費、通信費、交際費、治療費など、さまざまな支払いで生活がきつく感じる可能性もあります。再就職できたとしても、退職前の給与より大きく下がってしまう覚悟をしておく必要があるでしょう。

終身雇用制度、退職金はあてにならない

年金や再就職による給与でどうにかならない場合は、退職金を使えば問題ないと考える人もいるかもしれません。しかし、住宅ローンの残高分、例えば1,000万円単位で退職金を支払ってくれるような企業はどれ程あるでしょう。中小企業など、会社によっては退職金の制度すらないところもあります。

そしてもう1つ気にしておかなくてはならないのが、会社の終身雇用制度です。昭和のころは、とにかく人材が不足していたこともあり、人材を育成して長く働いてもらうために終身雇用制度を取り入れている企業も多くみられました。しかし、現代は終身雇用制度がもはや崩壊したといっても過言ではありません。

終身雇用制度どころか、安定していた大企業でも経営悪化などが原因で、社員に早期退職を勧める会社がみられます。当たり前に同じ会社でずっと働いて、リタイアするときは十分な退職金をもらってといった、昭和では当たり前だったことも今では期待できないのです。安定した収入や雇用なしに、さらには退職金の額もそこまで期待が持てないとなると、35年ローンを組んでしまうのはリスクの高いことだとわかるでしょう。

「住宅ローン契約前に考えておきたいこと」

35年の長期ローンが老後の生活を厳しくする可能性を紹介しました。しかし注意する必要があるのは、35年ローンだけではありません。35年でなくても、契約によっては退職後に返済がかかってしまいそうなケースもあるかと思います。

住宅ローンを組みたいと思った場合、まずどういった点を考えなければならないのでしょう。住宅ローンの契約前に確認しておくべき4つのポイントをみていきましょう。

繰り上げ返済ができる資金があるのか

35年ローンなど、もし住宅ローンの返済がリタイア後に差し掛かってしまったら、そのまま順当に支払うのではなく、繰り上げ返済を活用する方法があります。基本的に繰り上げ返済は、返済期間を短くできるほか、利息の支払いも抑えることができるのでお得です。住宅ローンを組んで10年以内など、住宅ローンの控除の関係で損してしまうケースもありますが、デメリットになるのは一部のケース。

しかし、返済期間的にも、利息の支払い的にもメリットのある繰り上げ返済も、そもそも資金がなければ返済にまで持っていくことができません。住宅ローンが生活を圧迫して、一向に返済のための積み立てができない状況だと意味がないということです。

普通、金銭的に余裕があれば住宅ローンを組む前に頭金として用意するでしょうから、住宅ローンを組む前に繰り上げ返済のための資金を用意するのはあまり現実的ではないかもしれません。繰り上げ返済できる資金があるかどうかは、今後の将来設計的に日々の暮らしで繰り上げ返済のためにお金を積み立てていけそうか、理想ではなくより現実的に考えることが大切です。

退職金が支払われるのか

60歳や65歳を超えて住宅ローンの契約を結ぶ場合は、退職金が支払われるかどうかも確認しておきたいところ。同じ会社でずっと働く昭和のころは、退職金がスタンダードとなっていましたが、中小企業だと退職金のない会社も増えてきています。実際、退職金の有無は法律に触れないため、退職金がなくても会社的に何の問題もありません。まずは、退職金の平均額を調べる前に、退職金があるかどうかを確認しておきましょう。

仮に退職金制度が勤務先にある場合は、どのくらいもらえるか知ることも大切です。厚生労働省の「平成25年就労条件総合調査結果の概況」によると、勤続年数20年以上で45歳以上の人の退職金の額は1,100~1,900万円程度でした。しかし、従業員30名に満たない企業は調査対象から外れている点、勤続年数が20年以上である点に注意する必要があります。

最近では、昭和のころのように1つの会社に長く勤めあげるのではなく、転職を繰り返す人も決して珍しくありません。厚生労働省の調査にあるような退職金をもらえるとは限らないのです。

また退職金と聞くと一時金で一気にもらえるイメージがあるかもしれませんが、企業によっては年金払いのこともあります。企業年金といわれる、確定給付企業年金、厚生年金基金、確定拠出年金は年金タイプなので注意しましょう。

教育費や養育費は増えていく

教育費とは学校教育にかかる学費や塾の費用などのことで、養育費とは食費や衣服代、病院の治療費など子どもを育てるためにかかる費用のことです。子どもが小さいときはそこまで教育費や養育費の負担はありませんが、成長するにつれてかかる費用は増えていきます。

幼児教育の無償化や高等教育の無償化の実施など、公立の学校を中心に教育費の負担を抑える制度は充実してきました。うまくいけば教育費はある程度軽減できるかもしれませんが、養育費はなかなか削れません。さらに、子どもを私立学校に通わせる場合は、公立学校よりも費用の負担が重くなることを頭に入れておく必要があるでしょう。

住宅ローンを契約する場合は、子どもが小さいときを基準にしていては、後々支払いがきつくなる可能性があります。年齢とともに昇給が期待できた昭和であれば良かったのですが、今後年収が順調に上がる可能性は絶対とはいいきれません。不測の事態により、昇給がほとんどなくなってしまう可能性もあります。

住宅ローンの契約を考えるなら、現在の給与と今後教育費や養育費が増えることを見越した支払い計画を立てていくことが大切です。

定年後に返済する資金はあるのか

35年などの長期住宅ローンにより、返済が老後に差し掛かったために老後破産に追い込まれてしまう人もいます。老後破産をすると、せっかく購入したマイホームも手放さなければならないかもしれません。

もし定年後も住宅ローンを支払い続けるような契約をするのであれば、定年した後もしっかり返済する資金は用意できるのか確認しておきましょう。まず、老後の資金になる退職金についてですが、できれば定年後の返済資金としてカウントしない方が賢明です。35年後の未来のことは予想ができません。転職によって退職金が減る可能性がありますし、ずっと会社に勤めていても予期せぬ倒産で退職金がなくなってしまう可能性もあります。

定年後の返済については、公的年金の額、確定拠出年金など私的年金の額など、老後ある程度確実に支払われるだろう資金をベースに考えるべきです。なお公的年金の受給額については、平成30年時点で厚生年金加入者の夫婦2人で20万円程度が平均となります。60歳以上のシニア世帯の月の支出平均は27万円程度なので、公的年金では足りず、ましてや住宅ローンの支払いができない可能性も考慮しなくてはなりません。老後の返済は安易に考えず、現実ベースで考えるべきです。

「自分に合った返済計画が必要」

ここまで住宅ローンの契約前に考えたいことを紹介してきましたが、周りに35年ローンで契約している人が多くても流されないことが大切です。35年ローンが悪いわけではありませんが、家庭ごとにどのように返済していったら良いかは異なります。35年ローンがメリットになるとは限りません。

自分の仕事の状況、家庭の状況に合った返済計画を立てることが大切です。35年ローンに縛られない、近年増加傾向にある返済計画の変化についてみていきましょう。

20年以下の返済計画が増加している

時代錯誤の35年ローンではなく、20年以下の返済期間に設定する住宅ローン利用者が増えているといいます。

先に住宅ローンの利用、つまりマイホームの購入者は30~40代にかけて多いと紹介しました。仮に住宅ローンを契約した年齢が40歳だとして20年の住宅ローンを組んだとすると、60歳までには住宅ローンが完済する計算です。早期退職でなければ基本的には60歳で定年退職になるでしょうから、定年までに住宅ローンを返済できることになります。

定年後の返済資金については退職金や公的年金などを紹介しましたが、どれも基本は老後の生活のための資金であって住宅ローン返済に適しているとはいえません。20年以下の住宅ローンで老後の負担がなくなることによって、金銭面はもちろん精神的な余裕も生まれるのではないでしょうか。

また住宅ローンでお金を貸し出す金融機関にとっても、返済期間が短いほど滞納のリスクが減りますし、早くお金が戻ってくるメリットがあります。そのため、35年ローンで組むよりも、20年以下で住宅ローンを契約した方が金利はお得になることもあります。返済期間の面でも、返済総額の面でもメリットがあるので、20年以内に返せる金額の範囲で物件選びをすることも1つの方法です。

10年以下での完済も増加している理由は?

20年以下の住宅ローンの契約に加えて、10年以下で住宅ローンを返済する人も増えてきているといいます。住宅ローンの返済を早めに済ませる人が増えてきているのは、老後の不安が大きいため。大きな病気にかかってしまったり、介護が必要になったり、老後資金だけでは住宅ローンの返済が間に合わない可能性があります。

また、資産に対して住宅ローンの負債額が過剰になる債務超過による、自己破産に追い込まれるリスク、マイホームを手放すリスクもゼロではありません。将来を楽観視できないからこそ、今のうちに不安要素を消しておこうと考える人も多いのです。

これでますます35年ローンに縛られる意味はないと感じられるのではないでしょうか?なお、10年以下の住宅ローンの返済については賛否あります。住宅ローン控除によって、所得税と住民税において借入金額の一部が減税されるためです。特に低金利下であるほど、住宅ローン控除の恩恵は大きくなります。

ただし短期返済は、返さなければならないという精神面での負担から解放されるメリットもあるので、税金面のメリットにこだわらず、早めに返済してしまうのも良いでしょう。自分の生活スタイルに合わせるのがおすすめです。

「住宅ローンが破綻しないための対策」

35年ローンだと期間が長すぎて老後に差し掛かるリスクがありますが、短期返済もあまりにこだわりすぎると生活が厳しくなるなどのデメリットがあります。修正できなくなると、やがて住宅ローンが支払えなくなり、破綻してしまう可能性もあるでしょう。

そもそもマイホームのために住宅ローンを契約したはずなのに、念願だったマイホームを失ってしまったのでは意味がありません。住宅ローンを適切に支払っていくためにはどうすれば良いか、最終的に確認しておきたい3つのポイントを解説します。

年齢から返済期間を決める

住宅ローンの返済期間を決めるときは、まず年齢から逆算して考えることが大切です。返済期間については、定年を予定している年齢を基準に考えます。例えば定年60歳だとして、現在37歳だとすると、返済期間の最大は23年です。はじめから35年ローンありきで考える必要はありません。年齢から返済期間を考えることによって、返済終了が75歳などおかしなことにはならないはずです。

また、返済期間の上限を定年予定の年齢に設定することによって老後の不安もなくなります。退職金は住宅ローン返済にあてられるか、年金や貯蓄で住宅ローン返済ができるか、あれこれ考える必要がありません。

老後に関しても、退職金の額、公的年金や私的年金、老後の貯蓄がそのまま生活費として使えるので、多少は余裕を持って生活することもできるでしょう。また、住宅ローンの支払いが老後に重ならないので、住宅ローンによる老後破綻をせずに済みます。せっかく現役時代に住宅ローンを滞りなく支払ってきても、老後破綻によって水の泡になるのは避けたいですよね。

期間延長も視野に入れ短期返済を設定する

住宅ローンによる負担を減らすためにも短期返済することは大切です。しかし短期決済だけに目を向けていると、思わぬトラブルがあったときに対処できない可能性があります。もちろん過剰に支払い期間を長くすることは利息の無駄ですから避けたいですが、きっちり余裕なく設定すると何かあったときに支払いが大変です。

例えば、住宅ローンの返済を20年にしたとして、20年の間に子どもの留学などで思わぬ出費があったり、病気になったり、転職したりして一時的に支払いが厳しくなるかもしれません。何が起こるかわからないこそ住宅ローンの契約は慎重になるべきです。

単に期間を長く設定して繰り上げ返済していくという方法もありますが、金利面で無駄が出る可能性があります。選択肢としては、期間延長についても考えておきたいです。期間延長とは、契約後に当初よりも期間を延長させて住宅ローンの支払いをしていくこと。この期間延長については、金融機関によって条件がさまざまです。

まずは期間延長する場合どういった手続きが必要なのか、何の書類を用意しておくべきなのか、もしものときに慌てて時間を無駄にすることがないように確認しておくようにしましょう。

民間銀行ローンでピッタリの商品を探す

35年ローンが必ずしも良くないとはいいません。固定金利のため、若いうちからマイホームを持つ人や今後の日本の財政状況次第ではメリットもあるでしょう。しかし、多くの人は30代や40代などある程度落ち着いてからマイホームを持つ人が多いはずです。

35年ローンで契約したら将来支払いがままならなくなってしまいます。このように住宅ローン返済不能のリスクを考えると民間の銀行で住宅ローンを探すのがおすすめです。

民間の銀行であれば、住宅ローンも豊富にあるので、自分の希望に合わせた商品も見つかる可能性が高くなります。さらに融資の判断は各銀行に委ねられているため、交渉次第では難しいと思っていた新築住宅の住宅ローンも組めるかもしれません。

ほかにも、民間の銀行で住宅ローンを組むと住宅購入費だけでなく、住宅購入にかかる諸経費も住宅ローンに含められる可能性があるので、初期費用を抑えたい人にもおすすめです。

周りも使っているからと、35年ローンではじめから考えるのではなく、民間の銀行の住宅ローンも比較して自分に合った住宅ローンで契約しましょう。

まとめ

35年ローンは老後破綻のリスクもあるため、老後の生活を考えるなら民間の銀行での住宅ローン契約をおすすめします。住宅ローンは金利に注目しがちですが、期間の延長や繰り上げ返済など細かい部分も重要。

資料だけではわかりにくい部分もあるので、銀行の窓口を活用して相談することをおすすめします。住宅ローンの相談をうまく活用して、自分に合った住宅ローンを契約しましょう。