老後の生活では、支給される厚生年金などの公的年金だけでは費用が足らず、貯金を切り崩して生活する人も少なくありません。このまま老後を迎えて公的年金だけで生活は成り立つのか、しっかり考えることが大切です。

公的年金だけで生活ができない場合は、プラスで私的年金を受け取ると生活に余裕が持てるようになります。中でも一生涯保障してくれる終身年金は便利なので、知っておくといいでしょう。個人年金としての終身年金の活用について見ていきます。

「終身年金とは?」

公的年金でカバーできない分については、私的年金で補っていくという方法があります。その私的年金の中のひとつとしてあげられるのが、個人年金保険。個人年金保険は、公的機関ではなく保険会社などで契約する保険商品のことです。

個人年金保険の場合は、公的年金とは違って受け取りの方法がいくつかあり、自分で比較して選ぶことができます。受け取りの種類として知っておきたいのが、終身年金・確定年金・有期年金の3つです。中でも、今回は一生涯保障が受けられる終身年金の特徴について見ていきましょう。

■終身年金の特徴

国民年金や厚生年金は、65歳から対象者が死亡するまで年金を受給できる終身年金です。個人年金保険にも、公的年金のように終身年金タイプのものがあります。

終身年金の大きな特徴は、生きている限り一生涯保障を受けられるということ。期限が決まっていないので、終身年金を契約することによって老後の不安を和らげることができます。また、受け取る年金額が途中で変わったり、給付が止まったりしないため、老後の生活設計がしやすいです。

なお、こうした終身保険は被保険者が長生きすればするほどお得になります。将来のことはわかりませんが、長生きする可能性を考えて、一度は加入を検討しておきましょう。

■確定年金との違いは?

終身保険は一生涯の保障が受けられるので、老後の生活の不安がある程度解消されるでしょう。しかし、平均寿命が長い日本において、終身年金を商品としてそろえている保険会社は限られているというのが現状です。

終身年金と別に個人年金保険でよく見られるのが、期間を定めた年金です。65歳から10年、15年などと年金の支給期間を決めるタイプのもので、有期年金と確定年金に分けることができます。

終身年金は被保険者が亡くなった時点で年金支給が終わってしまいますが、確定年金は被保険者の生死にかかわらず年金が支給されます。たとえば65歳から15年で設定して、途中の75歳で亡くなったとしても、はじめに契約した15年、つまり被保険者が80歳になるはずだった年まで年金の支給を受けることができます。

「終身年金のメリット・デメリット」

同じ個人年金保険であっても、終身年金と確定年金では性質が違うということをご紹介しました。個人年金の受け取り方次第で、老後資産の形成や老後の生活のしかたも変わってくるはずです。

仮に終身年金を選んだ場合、どのような老後となるのでしょうか。終身年金のメリット、そしてデメリットを知って老後の生活設計を見直してみましょう。

■終身年金のメリット

終身年金のメリットは、長生きした場合に役に立つことです。

健康に問題がないまま穏やかに老後を過ごせれば良いですが、実際にはそう簡単にいかないものです。長生きすれば、病気のリスクや介護が必要になるリスクが高まってきます。仮に介護施設への入居が必要となった場合、公的年金だけでその費用をカバーできるでしょうか。

被保険者が生きていれば補償を受けられ、家族の負担を抑えることができるという点で終身保険はメリットがあります。

なお、終身年金の支払いと元本回収は平均寿命を基準にしていることも多いです。そのため、90歳、100歳……と平均寿命よりも長生きすればするほど、元本より多く年金が支給される計算になります。

■終身年金のデメリット

終身年金のデメリットは、保険料が高いこと・すぐに亡くなってしまった場合に損をする可能性があることです。

長寿大国の日本において、被保険者の一生涯を保障する終身年金を提供することは、保険会社としても利益が減ってしまうリスクがあります。そのため、終身年金の毎月の保険料払込額は確定年金や有期年金と比べると高めになっており、確定年金の倍以上の金額になることも少なくありません。

さらに、長生きすればメリットが大きい終身年金ですが、一定期間保障の特約を付けない限り、被保険者が亡くなった時点で年金の支給は終わってしまいます。受給開始後すぐに亡くなった場合・平均寿命までに亡くなってしまった場合は、支払った保険料の方が多い計算になり、結果的には損となります。

「終身年金を活用する方法」

終身年金はメリットばかりの保険ではなく、デメリットもあることをご紹介しました。大切なのは、終身年金のデメリットをしっかり理解したうえで、メリットをどのようにして生かしていくかということ。続いて、終身年金を賢く活用するための方法を具体的に知っていただくため、3つのケース別に紹介します。

■年の差がある夫婦の場合

年の差があって、さらに年下の配偶者が年上の配偶者によって生計を維持しているような場合は、年下の配偶者に終身年金を掛けるのがおすすめです。特に年下の配偶者が妻であった場合、女性の方が平均寿命は長くなりますし、夫である男性が年上という時点で、男性の方が早く亡くなる可能性があります。

夫の収入によって妻が生計を維持している場合、年上の夫が亡くなれば老後の生活が厳しくなってしまうことも考えなくてはなりません。

なお、公的年金には老齢年金のほかに遺族年金もあります。

ですが、遺族基礎年金は18歳未満の子・または子のいる配偶者にしか支給されません。子どもが18歳以上だと支給されないので注意してくだい。

また、遺族厚生年金は夫の受給資格が25年以上にならないと支給されません。年の離れた配偶者が残された時の生活を考えると、年下の配偶者に終身年金を掛けておいた方が安心です。

■相続を心配する夫婦

相続税の基礎控除は以下のように計算します。

3,000万円+600万円×法定相続人数

相続税の支払いは、基礎控除の額よりも多い場合に発生する可能性があります。すべての人に支払い義務が発生するわけではありませんが、相続税が発生する可能性がある世帯では終身年金の活用が有効です。

なぜかというと、終身年金は被保険者の死亡によって支払いが終わるからです。

遺族に多くの保険金が残らないぶん、遺族の相続税の負担を軽減することができます。同時に老後資金の形成にも役立つので一石二鳥です。子や孫に積極的に生前贈与を行っていたとしても、終身年金を組んでおけばそこまで心配する必要もありません。

相続税の支払いが不安で、かつ終身年金の払込額が一括で用意できる場合、複数の終身保険に加入するなどをして、相続税の負担とならないよう資産を分散させることも考えましょう。

■一般夫婦・独身の場合

終身年金と確定年金、どちらにもメリットとデメリットがあります。一般的な夫婦・または独身の場合は、老後のリスクをどのように分散するかが大切。リスクをうまくカバーするために、終身年金と確定年金の両方を契約するのがおすすめです。

2つの年金を契約することによって、確実に受け取れる年金と、死亡時まで受け取れる年金の両方の恩恵を受けることができます。独身の場合は、老後も問題なく生活を継続できることが重要ですので、終身年金に多少ウエイトを置いても良いでしょう。

なお、夫婦で個人年金を利用する場合は、夫婦で別の保険会社と契約することをおすすめします。保険会社が破綻する可能性はゼロではないので、年金を受け取れなくなるリスクも分散しておきましょう。

まとめ

老後の資産形成を考えるなら、生涯にわたって年金を受け取れる終身年金を利用するのも選択肢のひとつです。しかし一生涯保障が続くと言っても、保険料が高額なことや、長生きしないと損をする可能性があることには注意が必要です。

それぞれの家庭の状況にもよりますが、個人年金を利用する場合は、終身年金だけでなく確定年金などの期限付きの年金とのバランスを考えて加入しましょう。どうして良いかわからない場合は、金融機関の窓口で相談してみるのもおすすめです。