「人生100年時代」と、今後長寿社会があたりまえになっていくであろうと予想される現代。医療費や老後の暮らしなど、リタイア後のことを考えると、厚生年金や国民年金など公的年金だけの受け取りだけでは不安が残りますよね。

そんな公的年金の次の年金として注目されているのが、確定拠出年金です。中でも老後を考えるなら知っておきたい、会社員が加入できる企業型確定拠出年金(DC)とはどういったものなのか、特徴と利用するメリットを紹介します。

「企業型確定拠出年金(DC)とは?」

将来高額な治療費がかかったり施設に入居したりと、どうなるかわからないからこそ、将来を見据えて特に金銭面で備えをしておくことが大切です。

将来のための金銭面の準備として知っておきたいのが確定拠出年金。厚生年金や国民年金などの公的年金とはまた違った性質の年金です。

この確定拠出年金には、大きくわけて企業型と個人型の2つがあります。そもそも確定拠出年金とはどういったものかというところから、企業型確定拠出年金における基本的なことまでみていきましょう。

■ 企業型確定拠出年金とは?

確定拠出年金とは、老後資金を形成するための年金制度のこと。働いている間に掛金を払い込んで、老後になってから一時金や年金としてお金を受け取るという点は、公的年金制度と大差ありません。原則的に解約ができないため、払い込んだ額を自由に引き出しできない点も、一般的な公的年金の性質と似ているといえるでしょう。

加入義務のある公的年金との違いは、運用の責任が自分にあること。公的年金の受給額はある程度決まっていますが、確定拠出年金を掛けて将来受け取れる金額は運用次第になります。また、公的年金の受給額は65歳からですが、確定拠出年金は10年以上の払い込みで60歳から受け取れるため、年齢的なメリットは大きいです。

なお、企業型確定拠出年金、DCといわれる制度は会社員のためのもの。確定拠出年金には、DCとは別に個人型確定拠出年金(iDeCo)もあります。

■ 個人型と企業型の違いは?

確定拠出年金には、個人型(iDeCo)と企業型DCがあると紹介しました。どちらも掛金を自分で運用するという基本的な部分は同じで違いはありません。個人型と企業型で異なるのは、加入対象者です。

個人型は個人事業主など企業型確定拠出年金に加入できない個人が対象ですが、企業型は原則会社員(公務員も加入可能)が対象です。ただしすべての会社員が加入できるわけでなく、会社が制度を利用している場合に加入が可能です。

なお、会社を通して加入するため、運用以外の納付や金融機関の選択まで会社が面倒をみることになります。自分で掛金を用意する個人型とは違い、会社が掛金を用意する点も企業型の特徴です。このような特性からか、通常の退職金制度を設けない代わりに企業型DCを導入している企業も少なくありません。

「企業型確定拠出年金にある税制優遇措置」

お金を貯める目的はさまざですが、会社が企業型DCを導入していて、かつ老後の資金という明確な目的があるならぜひこれを活用するべきです。その理由は、企業型DCには通常の貯金では得られないようなメリットがあるため。

特に税金面でのメリットが大きいので、お得にリタイア後のお金の準備をしたいなら活用しない手はありません。企業型DCの3つのメリットを確認してみましょう。

■ 企業型DCでの運用益は全額非課税になる

NISAのような税制優遇の口座を利用せずに、投資信託や株式などの金融商品を運用して利益確定した場合、運用益に対して20%(復興特別所得税含め20.315%)の税金が課せられます。運用益の約2割が税金として引かれるので、手元に残るのは約8割。せっかく利益をあげても、利益丸々自分のものになるわけではありません。

企業型DCについても、個人に選択権はあるものの、定期預金や投資信託など内容は原則税金が課せられるような金融商品です。しかし、税金の優遇措置によって運用益はすべて非課税にすることができます。利益があがったら再投資されるため、増えた資金をさらに投資に回して、複利を得ることが可能です。

もちろん掛金は会社が負担するものではありますが、給料としてカウントされないため掛金に対して税金が発生することもありません。

■ 退職所得控除・公的年金等控除が受けられる

運用中の掛金や運用益について税金がかからないと紹介しましたが、年金を払い込んで、実際に年金や一時金として受け取る場合もメリットがあります。一時金なら退職所得控除、年金支給なら公的年金等控除が受けられるためです。

もちろん企業型DCの他にも退職金や公的年金があれば加算されますが、ある一定額までは全額控除により税金を支払わなくて良いこともあります。例えば65歳以上の年金支給であれば、公的年金と合わせて年間収入120万円まで税金は発生しません。

収入が少なくなることが予想される老後、税金の負担が減ることで手元に残るお金が多くなるため、大きなメリットとなるのではないでしょうか。

■ 従業員拠出分の掛金が控除対象に

企業型DCの掛金は会社が負担するものだと紹介しました。しかし、従業員拠出分といって、希望すれば会社の掛金に上乗せして自己負担で掛金を増やすことができます。ただし会社負担分と合わせて月額55,000円まで(確定給付企業年金または厚生年金基金に加入している企業は月額27,500円まで)という決まりがあります。

個人型確定拠出年金の場合は、全額自己負担のため掛金すべてが税金の控除対象です。実は企業型DCも同じで、自己負担の掛金については税金の控除対象に含めることができます。会社員の場合は年末調整での控除適用によって、これまで支払ってきた余分な税金があれば還付を受けることも可能です。

将来の生活費を貯めているのにも関わらず、同時に税金面での優遇も受けられる制度はなかなかありません。無駄なくお金を貯めるなら活用しない手はないですね。

まとめ

企業型確定拠出年金、または企業型DCは老後の資金形成を考えるうえで有効な選択肢の1つです。特に税制面での優遇がいくつか受けられる点は、他の貯蓄とは違う大きなメリットとなるでしょう。

企業型DCは会社が掛金を支払うものなので、金銭的な負担がない点もポイントです。会社の掛金だけで物足りない場合、自分で上乗せして掛金を支払うこともできます。その際の自己負担の掛金も非課税。勤め先が導入しているなら、うまく活用する方法を考えてみましょう。