フラット35で借り入れをした人も、新たにフラット35に借り換えすることができます。フラット35の特徴のひとつである固定金利は、借り入れた時期によっては現在と比べると高い金利で借り入れている場合もあります。

今回はフラット35への借り換えのメリットをいくつか例を挙げてシミュレーションし、どれだけ総返済額を減らせるか解説していきます。この記事を参考にフラット35への借り換えを検討してみてくださいね。

「フラット35借り換えのメリットは?」

フラット35からフラット35に借り換えるメリットは、借り入れ時の金利よりも借り換え時の金利が低かった場合、利子分の返済額が減額できることです。

フラット35は固定金利なので、経済状況が変化して金利が下がったとしても借り入れ時の金利で、完済するまで支払い続けなければいけません。しかし金利が下がった時点でフラット35へ借り換えをすれば、利子分の支払いを減らすことが可能です。

■ 金利変動リスクがない

変動金利で借り入れをした場合、経済状況の変化による金利の変動によって、ローンの総返済額が変わってきます。

変動金利の場合、借り入れ時の金利よりも金利が下がれば、利子の分だけ総返済額が減ります。しかし金利が上昇した場合、その分総返済額が大きくなってしまいます。さらに金利が急上昇した場合、「未払利息」が発生し、借り入れ時に想定していた金額よりも大幅に総返済額が増えるリスクもあります。

しかしフラット35は固定金利なので、このような金利の変動によるリスクがありません。経済状況の変化によって金利が下がった場合でも、借り入れ時の金利で返済しなければなりませんが、借り入れ時に返済期間と総返済額を確定できるので、将来の資産設計、返済計画を立てやすくなります。

■ 総返済額が減額・返済期間も短縮に

借り入れ金は毎月決まった日に返済をしますが、この返済とは別に自由に借り入れ金額の一部(もしくは全額)を返済することができます。これを繰上返済といいます。

毎月の返済には利息が含まれていますが、繰上返済の場合は返済額すべてが元金の返済に充てられます。それによって、支払う利息を軽減することができます。さらに繰上返済には手数料がかりません。資金に余裕があれば、繰上返済をすることで総返済額を減らすことができます。

「フラット35の借り換えに必要な手続きは?」

フラット35からフラット35に借り換えするためには、必要な書類を集めて新たに審査を受ける必要があります。審査に必要な書類は、住宅ローン借り換えの申込書や住宅の売買契約書、源泉徴収、本人確認書類など。多くの書類を集めなければならないので、時間と手間がかかります。さらに審査を受ける項目も新規でフラット35で受けた審査同様、厳しいものになっています。

しかし、ローンの支払総額を数十万減らすことも可能ですので、ここは手間をかけてでも借り換えの手続きをすることをおすすめします。

■ 借り換えに必要な審査

ここで、審査の主な条件を見てみましょう。主な条件は下記の6項目です。

●返済実績

返済の実績が1年以上あり、直近12カ月分を遅延なく正常に返済していれば条件を満たします。

●返済負担率(年収に占める借り入れ金額の割合)

年収400万を境に年収に占める借り入れ金額の割合が変わります。返済負担率は年収400万未満で年収の30%以下、400万以上で35%以下となっています。

●申込時の年齢

満70歳未満の人が対象です。

●住宅の床面積

居住している住宅の床面積が定められている以上の広さである必要があり、戸建てとマンションで変わります。戸建ては70平方メートル以上、マンションは30平方メートル以上の広さが対象です。

●借り入れ金

住宅購入時の借入額が100万円以上8,000万円以下で、「借り換え対象となる住宅ローンの残高」もしくは「住宅金融支援機構による担保評価額の200%」のいずれか低い額まで借り入れができます。

●借入期間

15年以上借り入れすることが条件です。

■ 借り換えに必要な書類

借り換え時には、申込書や売買契約書などの書類が必要です。なお必要な書類は借り入れ手続きをする金融機関によって異なります。

大きく分けると「申込書関連」「物件関連」「収入関連」「本人確認書類」の4つに分類することができ、それぞれ必要な書類を準備する必要があります。これらの書類は入手先が異なり、種類も多いので不足がないように注意が必要です。

●申込書関連

「住宅ローン借入申込書」「借り換え対象住宅に対する確認書」「印鑑証明書」など

●物件関連

「売買契約書・請負契約書」「敷地と建物の登記事項証明書(発行後1カ月以内のもの)」「火災保険証券」など

●収入関連

「源泉徴収票」「住民税課税証明書」「確定申告書」「所得税納税証明書」など

●本人確認書類

「住民票(発行後3カ月以内のもの)」「運転免許証またはパスポートのコピー」「健康保険証のコピー」

書類によって役所、法務局、保険会社、勤務先などで入手することになるので、時間がある程度かかることは念頭に置いた方が良いでしょう。

「フラット35からの借り換えでいくらお得になる?」

2009年8月まで、新規でフラット35を契約するときの金利は3.0%台でしたが、2009年9月以降に2%台なり、2013年以降は1%台に下がっています。2018年7月度の金利は1.34%なので、2009年以前に借り入れを行った人は借り換えを検討すると良いでしょう。

借り入れ時期によっては、金利が1%減ると返済総額を数十万減らすことができます。ここからは例を用いて返済額シミュレーションをしていきます。ぜひ借り換えの参考にしてください。

■ 2007年7月に金利3.2%で借りた場合

金利3.5%の時に借り入れをして、2007年7月に金利3.2%で借りた場合をシミュレーションします。

ローン残高は2,000万として、毎月の返済額、年間の返済額、返済総額を試算してみましょう。条件は下記のとおりです。

【借り換えによる差額】

毎月の返済額:115,991円(借り入れ時) - 112,932円(借り換え後) = 軽減額:3,059円

年間の返済額:1,391,892円(借り入れ時) - 1,355,184円(借り換え後) = 軽減額:36,708円

返済総額:27,837,985円(内利息支払額7,837,985円) - 27,103,708円(内利息支払額7,103,708円) = 返済総額の軽減額:734,277円

このケースでは借り換えをすることで、返済総額が734,277円も減らせます。

高い金利の場合、金利差が少なくても利息の支払額に大きな差が生じます。高金利で借り入れしてしまった場合は、借り換え時の金利でシミュレーションすることをおすすめします。(金融機関への事務手数料、印紙税・抵当権設定費用・登録免許税などは含んでいません)

■ 2012年5月に金利2.07%で借りた場合

次は金利3.32%で借り入れをしたとして、2012年5月に金利2.07%で借り換えをした場合のシミュレーションです。ローン残高は2,000万とし、毎月の返済額、年間の返済額、返済総額を試算しています。条件は下記のとおりです。

【借り換えによる差額】

毎月の返済額:114,150円(借り入れ時) - 101,841円(借り換え後) = 軽減額:12,309円

年間の返済額:1,369,800円(借り入れ時) - 1,222,092円(借り換え後) = 軽減額:147,708円

返済総額:27,396,030円(内利息支払額7,396,030円) - 24,441,701円(内利息支払額4,441,701円) = 返済総額の軽減額:2,954,329円

このケースでは、返済総額が2,954,329円も安くなります。借り換え手続きの手間を考慮しても借り換えをする方がお得です。(金融機関への事務手数料、印紙税・抵当権設定費用・登録免許税などは含んでいません)

■ 2014年4月に金利1.75%で借りた場合

最後に金利差0.05%の場合をシミュレーションしてみます。2014年に金利1.8%で借り入れをしたとして、2014年4月に金利1.75%で借り換えをした場合のシミュレーションをしました。ローン残高は2,000万で、毎月の返済額、年間の返済額、返済総額を試算しています。条件は下記のとおりです。

【借り換えによる差額】

毎月の返済額:99,293円(借り入れ時) - 98,825円(借り換え後) = 軽減額:468円

年間返済額:1,191,516円(借り入れ時) - 1,185,900円(借り換え後) = 軽減額:5,616円

返済総額:23,830,241円(内利息支払額3,830,241円) - 23,718,074円(内利息支払額3,718,074円) = 返済総額の軽減額:112,167円

総返済額が112,167円安くなります。このように、金利が0.05%下がっただけでも返済総額が減るのです。毎月の返済額の差は大きくはありませんが、15年以上の返済期間になると、トータルで10万程度軽減できます。

しかし、借り換えるとなると金融機関への事務手数料や印紙税、抵当権設定費用などの諸費用が必要になるので、実際には数万円の差になります。こういった費用と手続きの手間などは、借り換えするかどうかの判断材料にすると良いでしょう。

まとめ

フラット35からフラット35へ借り換えした際の総返済額をシミュレーションしました。新たに審査を受けなければならないため、必要書類を集めるのに手間がかかりますが、シミュレーションで見てきたように借り換えのメリットは非常に大きいでしょう。

固定金利は返済計画が立てやすいメリットがある反面、高い金利の時に借り入れをした場合、金利が低くなっても返済額に変わりがないデメリットがあります。高い金利の時に借り入れをした人は、ぜひ一度借り換えした場合のシミュレーションをしてみましょう。