「投資に興味はあるけれど、投資していいタイミングがわからない」とお悩みの人も多いのではないでしょうか。投資をしたくても踏み切れないのには、リスクもありますが、買い付けのタイミング、売却のタイミングがわからないという理由もあるかと思います。
そんな、投資をしてみたいけれども、ためらってしまう人にぴったりなのが、投資信託を積み立てる投信積立です。投信積立は何かというところから、利用のメリット・デメリットまでお話ししていきます。
「投資信託を積み立てる投信積立とは」
投資のための金融商品として、投資信託なら良く知っている人もいるかもしれませんね。それでは、投資信託を積み立てる投信積立はご存じでしょうか。金融機関などで取り扱われている商品で、投資信託よりもはじめるハードルが低いことから注目されています。
では投信積立とは何なのか、知っておきたい投信積立の基本的なことをお話ししていきます。
■投信積立とは
投信積立は、投資信託を積立方式で購入する金融商品のことです。投資信託のスポット購入は、自分のタイミングで投資信託を購入しますが、投信積立は契約で取り決めた日に購入を積み重ねていきます。金融機関によっても商品内容は異なりますが、基本的には毎月1回決まった日に、一定の額を指定の口座から引き落として自動的に積み立てていくタイプがメジャーです。
積立額の入金はほとんどが自動引き落としになるため、購入のタイミングを逃してしまう心配がありませんし、タイミングを自分で見極める必要もありません。商品によって異なりますが、毎月100円から積立できる商品もあり、少額からの投資で利用しやすいのもポイントでしょう。
■投資信託の仕組み
投信積立は、投資信託を積立方式で運用するものだと紹介しました。投信積立を知るには、投資信託の仕組みを知ることが先決です。まず、簡単に投資信託について整理してみましょう。
投資信託は、簡単に説明すると投資を運用のプロに任せることです。通常、投資信託の申し込みは、金融機関や証券会社で行いますが、投資信託を販売しているところが直接投資まで行なっていることはほとんどありません。販売店で契約のあった投資信託は、運用会社が販売店を通して投資者の資金を受け取り、さらに受託会社へ運用の指図をします。実際に資金の運用・管理をしているのは受託会社で、投資信託では販売店、運用会社、受託会社の3つの会社がかかわってくることになります。
3種類の会社が出てくると少しややこしくなりますが、要は自分で運用・管理をせずに、運用・管理を第三者であるファンドなどに任せるということです。投資信託の利用者は手数料を一部支払う代わりに、運用による利益を受け取れるようになっています。
■投資信託は何で運用されている?
投資信託は、集められた資金をもとに受託会社が運用・管理していきますが、運用方法は投資信託ごとに異なります。株式をメインにしたものであったり、債権をメインにしたものであったり、株であっても外国株に比重を置いたもの、新興国株に比重を置いたものなどがあります。
いずれもひとつの株式にすべての投資資金を費やすことはなく、複数の投資先があり、資産が分散されているのが特徴です。投資先や投資比率は投資信託ごとに異なるため、投資信託を選ぶ楽しみもあるでしょう。
なお、投資信託に絶対はありませんが、一般的に債権の比率が多い方が安定した投資に、株式の比率が高い方がリターンを狙った投資に向いています。
■投資信託の種類
投資信託は、株式や債券などさまざまな金融商品で運用されるとお話ししましたが、投資信託を投資対象で分けた場合、国内・海外株式型、国内・海外債券型、国内・海外REIT型、コモディティ型、バランス型に分けることができます。
REITは不動産投資、コモディティは先物取引対象である原油や貴金属、穀物など商品への投資のことを指します。バランス型は株式や債券などバランスよく取り入れたタイプの投資信託です。
ここまで、対象の金融商品ごとに投資信託の種類を紹介してきましたが、もうひとつ知っておきたいのが投資信託の運用姿勢の種類です。運用姿勢の種類には、市場全体の値動きと連動させて投資をするインデックス型、ファンドマネージャーがポートフォリオを決めるアクティブ型があります。アクティブ型は投資に積極的なタイプです。運用のしかた、手数料がかかわってくるので、投資信託の種類として合わせて押さえておきましょう。
「投信積立のメリットは?」
ここまで投信積立の基本的なことや投資信託のことについて解説してきましたが、基礎はともかく、実際のところ利用してみてどうなのかという部分が何よりも重要なのではないでしょうか。特に投信積立がはじめてなら、リスクを抑えたい気持ちもあるので、気になるものです。
ここでは、投信積立を利用することについて、7つのメリットをお話ししていきます。
■少額から投資可能
近ごろは、割と少額からでも投資できるような金融商品が増えてきましたが、全ての金融機関で少額投資に対応しているわけではありません。株や投資信託の投資では、購入可能な単元数(100株、1000株など)が決められており、まとまったお金がないと投資できないこともあります。
株価によって異なるため一概にはいえませんが、少なくとも10万円、できれば100万円を見ていた方が良いでしょう。投資しなければならない金額が多いと、はじめて投資する場合はどうしてもリスクが頭にあって、投資をためらってしまうものです。
しかし、投信積立の場合は投資可能な額が低めに設定されていることが多く、毎月1万円から、金融機関によっては、毎月1,000円、あるいは100円から投資できることもあります。一括で預けるのはなんだか怖い気がしますが、毎月少しずつなら多少のリスクを気にせずに無理なく利用できます。
■売却益を出すことができる
投信積立の対象となる、株式や債券、あるいは不動産などは、景気や国の財政状況、あるいは企業の経営状況などによって価値が変動していきます。必ずしも利益が出るとは限りませんが、状況次第では利益を出すことも可能です。
投信積立で順調に利益が出て売却すれば、これまでに積み立ててきた分から手数料を差し引いた分が利益として確定します。
低金利の続く現代において、普通預金などにただ預け入れるだけではあまり資産は増えていきません。もちろん投信積立でも利益が出ないことがありますが、うまくいけば年利2~3%など、口座に眠らせておくよりも資金が増やせる可能性があります。
■分散投資ができる
投資をしていくうえで結構重要になってくるのが、分散投資です。分散投資とは、さまざまなタイプの金融商品に複数投資して、資産を分散させる投資方法のこと。
たとえば、株式であれば会社の成長を見込んで1つの会社の株をまとめて買うという方法もありますが、大きなリターンが見込める半面、リスクも大きくなってしまいます。投資した企業が順調に成長すれば、その分投資額も増えていきますが、経営状況が悪化したり、倒産したりすると、せっかく投資した額に対して大幅な損失が出てしまいます。
そうしたスポット買いで大きな損失を出さないためにも、複数の金融商品を持ってリスクを分散させようというのが分散投資の考え方です。投信積立の場合は、複数の金融商品に投資されるため、少額の投資でも自動的に分散投資の恩恵を受けることができます。
■ドルコスト平均法ができる
ドルコスト平均法とは、一定の周期ごとに、一定額の金融商品、あるいは一定口数の金融商品を購入することを指します。
たとえば一定額の金融商品をドルコスト平均法で購入するとします。毎月1日に5,000円分ずつ購入していった場合、毎月1日の積立投信の額が同じであることはほぼないといっても良いでしょう。そうした場合購入金額は変わらないので、購入する口数が変わってくることになります。
購入する口数は積立投信のそのときの価値によって変わっていくため、価値が高ければ購入する口数は少なめ、価値が低ければ購入する口数は多めになります。するとどうなるかというと、安いときに購入した口数が多くなるため、積立が長期化するほど価値は平均化されていくのです。コストが平均化するため、価格が上下するリスクに強くなります。
■目標までの計画を立てやすい
投信積立は、分散投資ができること、ドルコスト平均法が使えることもあり、長期的な投資に向いた金融商品だといえます。もちろん多少のリスクはありますが、毎月積み立てることによって少しずつ目標に向かって資産形成ができるでしょう。
元本が保証されるものではありませんが、債券中心の投資信託など選ぶ商品次第では、株式投資などよりも安定的に資産を積み立てていけます。つまり、目標までの計画も立てやすいということ。毎年ある程度の利息がつくと仮定して目標の期日までに一定のお金を貯めたい場合は、毎年の積立額がわかる減債基金係数を利用して試算してみると良いです。
■手間がかからない
株式などの金融商品は、自分で投資する商品を見つけて、買い付けて、売却してという手間がかかります。しかも、買い付けや売却のタイミングが重要なので、これまでの値動きを見たり、企業の経営状況を分析したりしなければなりません。その分、手数料がカットされますが、働きながら投資をするのは、慣れるまで大変です。
しかし、投信積立の場合はサービスにもよりますが、口座出金、買い付けなど毎月自動で行ってくれるものも多いです。あらかじめ期日を指定しておけば、売却、買い付けの商品まで指定できるものもあります。自分で考えて作業するのは投資信託の商品選びくらいで、ほとんど自動でできるため手間がかかりません。
■複利効果を期待できる
投信積立は、元金と利息の合計に対して利息を付ける複利で運用することができます。たとえば元金100万円で利息2万円の場合は、102万円に対して利息がつくため、元金のみで計算する単利に対して2万円多く利息の計算に含めることができるという仕組みです。
もともと長期投資向きの投信積立は、利益があがれば複利でどんどん資金が増えていくので、単利で計算したときよりもより多くの資金確保が叶います。好調の場合、投信積立だと利益が膨らんでいくというのは、この複利効果も理由のひとつです。
「投信積立のデメリットは?」
ここまで投信積立のメリットについてお話してきました。分散投資ができる、ドルコスト平均法が使えるなど、魅力的な部分もあり、実際に利用したいと思った人もいるかもしれませんね。しかし、投信積立のメリットという側面だけで契約するのは早計です。
投信積立を利用する前に知っておくべき、投信積立のデメリットを5つ紹介していきます。
■販売手数料や運用コストがかかる
投信積立は、株式などの金融商品と比べて手間のかからない金融商品ではありますが、それは運用する会社があってのこと。手間がかからない分、販売店に払う販売手数料、ファンドに支払う信託報酬などが発生します。投信積立の商品によっては、手数料1%を超えることもあるので、せっかくの利益が出ても額次第ではすべて手数料に消えてしまうかもしれません。
また、商品にもよりますが、このほかに売却コストにあたる信託財産留保額、換金手数料、監査報酬などの費用が発生することがあります。こうした取引にかかるコストは各商品の目論見書(もくろみしょ)に記載されていますが、しっかり確認しないと「こんなはずではなかった」と後悔することになるかもしれません。どんな費用が発生するかは契約前にしっかり確認しておきたいものですね。
■短期間でのリターンには向いていない
投信積立は、基本的に毎月一定額を積み立てていくものなので、1回で50万円、100万円などと積み立てていける人は稀でしょう。特に投信積立をはじめたばかりなら、手探りの状態ですから、まずは数千円、数万円からはじめることが多いはずです。
そうすると、投資している金融商品の価値が大幅に上がったとき、あまり恩恵を得られないデメリットが発生します。たとえば、50万円スポットで買い付けした場合、2倍になれば100万円ですが、積立投信で5万円積み立てたものが2倍になっても10万円にしかなりません。
実際、積立投信は口数で購入していくタイプが多いため、価値が上がってもダイレクトに価格に響くわけではないですが、短期間での大きなリターンは投信積立では見込めないでしょう。
■価格変動する要因が分かりづらい
投資信託の価格変動は、商品にもよりますが、株式などの金融商品と比べてわかりづらいです。理由は、投資信託がさまざまな投資先を持っている金融商品であるため。ある程度決まった属性の投資信託であれば、まだ価格変動の要因がつかめるかもしれませんが、バランス型などは特に、何が理由で価格が上下しているのかわかりにくい部分があります。
株式であれば、企業の経営状況が悪化したから、日経平均株価が下がったからなど理由付けできますが、後で投信積立を見直したいと思ったときにやっかいです。
■譲渡益や分配金に課税対象
投信積立に限らず、投資信託や株式投資など投資商品にはつきものですが、売却したときの譲渡益、分配金を受け取ったときの利益に税金がかかってきます。投信積立にかかる所得税は、国税15%、地方税5%、2037年12月31日までは復興特別所得税0.315%がかかるため、利益に対して合計20.315%の税金を支払わなくてはなりません。
実は、よく利用されている普通預金や定期預金の利息も税金が差し引かれた額が利息として入るようになっています。ただし、投信積立はリスクがあるという面もありますので、「これだけ利益が出た」と喜びもつかの間、税金で約2割は持っていかれることを頭に入れておかないとショックが大きいかもしれません。
■元本割れの危険性
これも、投信積立に限らず、金融投資全般にいえることですが、投信積立は普通預金や定期預金のように元本が保証されません。元本とは、もともとの積立額のことなので、元本が保証されないということは、運用状況次第で積立額よりも価格が下回ってしまうかもしれないということです。
これが一時的なものであれば良いですが、右肩下がりの状態が続くと、損失を確定する損切りを覚悟しなければならないでしょう。しかし、どの投信積立がどんな動きをするかわからないものの、積立対象や積立の割合でどのくらいのリスクがあるかはある程度予測できます。一般的に新興株式などはリスクが高く、不動産や債券などはリスクが低いです。
単におすすめの商品としてあがっていたからという理由で選ばずに、しっかり商品の内容や目論見書を見て、納得した上で商品を選ぶようにしましょう。
「投信積立をお得に活用するには」
ここまで、投資信託のメリットとデメリットを紹介してきましたが、多少のデメリットはあるものの投信積立は投資初心者にぴったりの金融商品です。投資をはじめたいなら利用しない手はないでしょう。それでは、どうすれば投信積立をお得に利用できるのか、考えたい2つの方法を紹介します。
■NISAを活用する
NISA(ニーサ)とは、少額投資を対象にした非課税制度のことです。NISA口座で取引した金融商品については、一定額まで非課税にできます。通常、投信積立を利用して利益が確定すると20.315%の税金がかかるので、非課税になるのとならないのでは大きな違いがありますね。
通常のNISAは、年間120万円の投資額まで、最大5年間非課税枠を利用できます。もっと長期的な積立投資を考えるのであれば、2018年1月にはじまった「つみたてNISA」を活用してみると良いかもしれません。非課税枠は年間40万円までの投資額に抑えられますが、非課税枠の範囲内であれば、最大20年間非課税で運用することができます。ただし、つみたてNISAは、金融庁厳選の投資信託になるため、2018年8月20日時点で158本のうちからしか選択できません。選択の範囲が狭まるため、自分に合った方法で利用してみましょう。
■iDeCoを活用する
iDeCo(イデコ)とは、個人向け確定拠出年金のことです。私的年金の一種で、自分の資産を自分で運用して、老後の資金を形成しようというもの。iDeCoには、定期預金と投資信託があり、毎月一定額を積み立てていく方法なので、投信積立として活用できます。
iDeCoの大きなメリットは、毎月拠出する額全額を所得税の控除に含められること、運用中の利益がすべて非課税になることです。拠出額については、自営業者などの第1号被保険者なら年間816,000円まで、第2号被保険者の会社員なら年間144,000~276,000円まで所得控除ができます。税金面ではかなりお得な制度だといえるでしょう。
ただし、あくまで老後の資金形成を目的としたものなので、拠出した額は原則60歳を超えるまで受け取ることができない点には注意しましょう。
まとめ
金融投資というと、どうしても難しいイメージが先行してしまいますが、初心者でも扱いやすい金融商品は増えています。中でも長期的な資産形成に向いているのが、投資信託を積み立てる投信積立です。ただし、当たり前ですが万能な金融商品ではないので、メリットとデメリットを理解したうえで活用しましょう。投信積立をはじめるなら、お得な非課税制度のあるNISA、iDeCoがおすすめです。