「住宅を購入したい」と思ったとき、利用を考えたいのが住宅ローンでしょう。手元に住宅購入資金が無くても住宅が購入できる便利なシステムです。ただ、そんな住宅ローンも無限にお金が借りられるわけではありません。あくまでも借金なので、年収次第で借入可能額は変わってきます。

どのくらい住宅ローンを利用できるかというのは、購入する住宅の目安にもなるのでぜひとも知っておきたいところですよね。今回は、そんな住宅ローンの借入可能額の考え方と計算方法についてお話していきます。

金融機関が審査する借入可能金額の計算方法

住宅ローンの借入可能額は、住宅ローンでお金をどこまでお金を借りられるかの額です。それぞれの金融機関で、一定の基準をもとに決められています。

一般的なローンと共通する部分もありますが、住宅ローンは金利が変動することもあるため、年収に対する限度額や既存の借入金だけでなく、金利を考慮した計算になるのが特徴です。それでは住宅ローンの借入可能額はどうやって決まるのか、ポイントと計算方法を紹介します。

■借入額の計算に必要な条件は?

金融機関の借入可能額は、「審査金利」「返済負担率」「既存の借入」の3つの条件でだいたいが決まります。シミュレーションとなぜ差が出てしまうのか、計算に必要な条件それぞれの内容を見ていきましょう。

・審査金利

実際の住宅ローンで設定されている固定金利や変動金利とは違い、金融機関が審査時に用いる金利のことです。金利の変動を見越した設定になっているため、3~4%程度が目安で、通常の金利よりも高くなっています。ただし、一部の金融機関では審査金利でなく借入金利を基準に審査するケースもみられます。

・返済負担率

年収に対する住宅ローン負担の割合です。近年の年収の平均に近い400万円を目安に、400万円未満を30%、それ以上を35%とするのが一般的。金融機関によっては40%で計算することもあります。

・既存の借入

車のローンなどほかの借入がどれくらいあるかも審査の対象になります。

■借入可能額の計算方法

実際の借入可能額はどのくらいになるのでしょうか。国税庁による「平成28年分民間給与実態統計調査結果」から平成28年度の会社員の平均給与約420万円を使って計算していきましょう。

まず、年間の借入限度額を算出します。返済負担率35%だったとして計算してみましょう。

420万円×35%(返済負担率)=147万円(年間借入限度額)

年間の借入限度額がわかったら、借入金の年間の返済額を差し引きます。ここでは車のローン、月々5万円支払っていたとして計算していきます。

147万円-60万円(年間の借入金返済額)=87万円

年間の借入限度額から借入金を差し引いた額を12カ月で割り、月々の限度額を出していきます。

87万円÷12カ月=72,500円(月々の借入限度額)

100万円を借入予定の年数をかけて返済した場合、審査金利を使うと月々の支払いがいくらになるか計算します。

たとえば、審査金利3%で100万円を30年返済にした場合、月々の支払い4,216円です。

月々の借入限度額を、100万円を借りて審査金利で返済した場合の月々の支払額で割り、さらに100万円をかけて借入可能額を出します。

72,500円÷4,216円×100万円=17,196,395円

年収420万円、年間60万円の借入金返済あり、30年ローンを組んだ場合の借入可能額は、約1,700万円です。厳しめに計算しましたが、金融機関によって審査で用いる数字が違うため借入可能額は変動します。

住宅ローンの借入可能額を増やす方法は?

ここまで、住宅ローンの借入可能額と、計算方法についてお話ししてきました。計算例は厳しめに計算したときの例ですが、年収420万円(借入金あり、借入期間30年)で借入可能額1,700万円は少し少ないと感じる人もいるのではないでしょうか。これが郊外であればまだしも、都会など地価の高いところであれば十分とはいえません。

仕方ないと諦めるほかないのでしょうか?実は、住宅ローン借入可能額計算の仕組みを利用して、借入可能額を増やすこともできます。借入可能額を増やす3つのテクニックを見ていきましょう。

■収入を合算する

住宅ローンの借入可能額の計算で、年収420万円の例を紹介しましたが、あくまでも契約者1人の年収で計算した場合です。実は、契約者本人だけでなく、新しく建てる家に同居する家族の年収も含めることができます。いわゆる収入を合算するわけですが、仮に本人以外の組み込める収入が420万円だった場合、単純に倍、3,400万円まで借入できることになるので大きな差です。

ただし、本人以外の家族については年収がそのまま計算に含まれるわけではありません。金融機関によって対応は異なりますが、契約者本人の2分の1だったり、正社員でなければならなかったり、収入合算のためにはいくつかの条件があります。収入を合算して契約したい場合は、各住宅ローンの内容をしっかり確認する必要があるでしょう。

■借入期間を延ばす

はじめに15年、20年などのように借入期間を短めに設定している場合は、借入期間を延ばす方法も視野に入れてみても良いかもしれません。借入期間を延ばすことで、月あたりの負担額が少なくなるためです。少なくなった分は借入可能額に加算され、実質的に借入可能額を増やすことができます。

ただし、借入可能金額を延ばすことには問題もあります。定年退職後など、老後に差し掛かると支払っていけなくなるかもしれない問題です。借入可能額を延ばす方法ももちろん有りですが、将来的に問題のない範囲で期間の設定をすることをおすすめします。

■住宅ローン以外の借り入れを減らす

住宅ローンの借入可能額の計算では、既存の借入金の額も影響してくると紹介しました。逆手に取ると、既存の借入金をできるだけ減らした状態で住宅ローンの審査に臨めば、少しは借入可能額を増やせる可能性があるということです。

しかし、意外に盲点となりやすいのがクレジットカード。審査によってはキャッシング枠が響くこともあるため、使っていないならキャッシング枠はなくしましょう。

まとめ

住宅ローンの借入可能額は、ほかのローン商品と違って金利も含めて額が決まります。金利は厳しめの設定のため、思った金額よりも借りれないことも少なくありません。収入を合算する、既存の借入金を減らすなどして、思った額に満たない場合はできる限りの調整をしてみましょう。多少は住宅ローンで借りたい額に近づけるはずです。