将来の貯蓄を考えると、今の国民年金だけでは充分とはいえないと考える方もいると思います。資産を増やす計画を数年単位ではなく、何十年先を見据えて考えている場合には、確定拠出年金という投資方法もあります。これは国民が全員加入する年金とは異なり、個人や企業が加入をするタイプの年金型投資となっています。どんな種類があるのかについてをご説明し、そのメリットとデメリットについても紹介していきます。

年金だけじゃ足りない?確定拠出年金の役割

日本の年金には国が運営するものと、個人や企業で加入する種類の年金があります。基本的に全員加入する義務があるものですが、毎月国が運営する年金では足りないと感じ、将来の積立をしておきたいという方が個人的な意思で国の年金とは別に加入することもできます。

個人や企業が加入する年金は確定拠出年金と呼ばれ、老後のためにしっかりと貯蓄をしておきたい方などに向いています。

支払いや受け取りは国民の年金と同様で、毎月支払いをおこない一定の年齢になると受け取ることが可能です。確定拠出年金は大きくわけて個人で加入するものと、企業が従業員に対して加入させる企業型にわけられます。

個人型確定拠出年金(iDeCo)

個人型は国がおこなっている年金とは異なり、年齢をむかえると案内が来るというものではなく、自らが申し込みなどをおこなう必要があります。また、毎月支払う金額を決めて負担しなければいけません。すべて自分でおこなう個人型はiDeCoと呼ばれます。また毎月支払った分は確定申告で税金の控除対象とすることが可能です。

企業型確定拠出年金(企業DC)

一方、企業側の確定拠出年金は企業側が加入をおこない、毎月の支払い金額を決めることになります。毎月支払うお金は企業側が全額負担するケースもあれば、従業員の給料から引かれるケースもあります。企業が主導して加入、給料からの支払いをおこなうため、個人の判断で企業に加入してもらうということはできません。個人の負担がある場合でも給料から引かれることになるので、手取り収入から生活費を考えている場合には家計への影響が少ないです。

確定拠出年金の節税メリット

確定拠出年金のメリットとして、毎月少額からはじめることができること、そして節税方法のひとつとしても考えることができるという点があります。また受け取りできる期間をむかえたら、基本的に支払った分の金額は戻ってくることもメリットです。基本的には一定の年齢に達したら受け取ることができるのですが、高齢になったときだけではなく障害者認定となった場合や死亡した場合にも一時的にお金を受け取ることも可能となっています。

掛金が全額所得控除

毎月の支払い金額は税金の控除の対象になるという面があります。個人型の場合、確定申告で確定拠出年金の毎月の支払いをすべて所得税控除として申告することが可能です。企業がおこなってくれる年末調整でも企業側に申告すれば確定申告をしなくても済む場合もあります。種類としては保険料控除のなかで小規模企業共済等掛金控除という種類のさらに個人型又は企業型年金加入者掛金という種類にあたります。

運用益が非課税

確定拠出年金が税金の対象となるのは毎月の支払い額だけではありません。長期間積立をするともともと投資している金額からの利益がでることになりますが、この利益分も税金の対象とはなりません。安定した積立の投資をおこなう方で、利益が税金対象になることが気になるという方でも安心できます。

受取時も一定額まで非課税

支払いだけでなく一定年齢で収入が入る分の金額についても所得、つまり収入となるため税金が増えるのではないかと気にする方もいるのではないでしょうか。ですが受け取る際も、公的年金等控除という分類にあたるので、課税の対象とはなりません。一時的に受け取った場合は退職所得控除という対象になるので、一定金額までは同様です。障害認定された際の給付金、また死亡となった場合にも所得税や住民税は課税されません。ただし死亡の場合、相続した親族は相続税の対象となってしまいます。

確定拠出年金の給付のタイミング

確定拠出年金のお金を受け取るのは主に4つの種類です。年金という言葉から一定年齢をむかえたときのみと思ってしまう方もいますが、国が運営するのと同様で高齢となったとき以外にも受け取れる条件があります。万が一のときがあったときのため、加入する前に認識しておきましょう。障害認定となった場合や死亡のときが対象となるので、生命保険の代わりになるという考え方もできます。

老齢給付金

一定年齢になったら受け取れるお金を老齢給付金といいます。2018年現在では原則60歳以降から70歳までの間が受け取ることのできる期間となっています。また60歳以上とはなりますが、毎月の支払いをスタートしてからの期間によっても受け取りの開始年齢は異なります。

加入年数の通算と受けられる年齢は以下のとおりです。

10年以上:60歳

8年以上〜10年未満:61歳

6年以上〜8年未満:62歳

4年以上〜6年未満:63歳

2年以上〜4年未満:64歳

2年未満:65歳

加入の年数が短いほど受け取れる開始年齢は低くなります。

障害給付金

70歳になる前でも、政令で定める高度障害となった場合に支払われます。高度障害とは障害基礎年金の受給者で1、2級に該当する方になります。加入している年齢や、加入の期間は問いません。支払い方法は老齢と一緒で一時的に受け取ることもできれば、毎月受け取る方法を選ぶ、あるいはそれぞれを組み合わせることも可能です。

死亡一時金

加入者が死亡となってしまった場合には、遺族に対して死亡一時金が支払われることになります。残された遺族が請求をおこなう必要がありますので、加入していることを家族に分かるようにしておく必要があるともいえます。受け取る人は事前に配偶者や子ども、両親など受け取る人を指定することも可能です。もしも指定をしていなかった場合には、法律での相続順位のとおりに受け取ることになります。相続する金銭のため、受け取ることができるものの相続税の対象になる点は注意しましょう。

脱退一時金

いくつかの条件はありますが、脱退した場合に一時金を受け取れるケースがあります。

・加入していた期間が3年以下

・支払っている金額から出されていない分が25万円以下(細かい算定方法があります)

・最後に年金の資格がなくなってから2年以内

・国民年金保険料の支払いが免除になっている

・障害給付金を受けていない

・企業型で脱退一時金を受給していない

他にもさまざまな細かい条件はありますが、脱退一時金を受け取ることができ、そのお金は退職金として税金対象外となります。

確定拠出年金の注意点

安定した将来の貯蓄になる確定拠出年金ですが、注意するべき点はあります。個人型であれば一定の年齢にならないと受け取りができないことと、場合によっては毎月支払っていたお金が減ってしまうケースもあるということです。下記で詳しく解説します。

個人型の場合、引き出せるのは原則60歳から

個人型であれば60歳以降、企業型であれば、設定された年齢や期日以降にならないとお金を受け取ることができません。そのため将来的な投資となるので、数年で利益を出したい場合には向いていない投資方法となります。

元本を下回るリスク

確定拠出年金では、定期預金の他に投資信託を使用して資産を増やすことも可能です。しかし投資信託をおこなう場合には失敗すると損が発生することとなり、毎月支払っていたお金よりも受け取れるお金が少なくなってしまうことがあります。

まとめ

確定拠出年金のメリットはなんといっても税制面で優遇される部分にあります。他の方法の投資で収入を得ることができたけど、その分税金も大きくなってしまうこともあるのです。毎月の支払いから利益、受け取りの金額まで非課税の対象となるメリットを大きく利用することで、投資分の利益だけでなく出費の節約にもつながります。どのように運用していくかは一度、プロに相談するのがよいでしょう。