「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」を提出しているでしょうか。公的年金について、所得税が源泉徴収となる方には毎年送られています。

これは、翌年の2月以降に支払われる年金から源泉徴収される所得税の計算のために必要な申告書です。提出を忘れるとどのような影響があるかを正しく理解して、年金受給者の方は忘れずに提出するようにしましょう。

年金には税金がかかるときとかからないときがあります

障害年金や遺族年金は非課税となりますが、老齢や退職を事由とする年金には所得税がかかります。年金金額から公的年金等控除額を引いた金額が、雑所得として所得税の対象となりますが、公的年金等控除や配偶者控除、扶養控除、障害者控除など各種控除金額の合計金額より年金金額が少ない場合には、税金はかかりません。

しかし、支払われる年金金額から源泉徴収するときに、扶養親族等申告書を提出していないと、税金が高くなる可能性があるので注意が必要です。

公的年金等の受給者の扶養親族等申告書の提出は忘れずに

年金を支払う際には、年金から所得税を源泉徴収することが法律で定められています。扶養親族等申告書を提出することにより、配偶者控除や扶養控除、本人だけではなく配偶者や扶養親族が障害者であった場合の控除など各種控除を受けることができるようになります。

しかし、扶養親族等申告書を提出しない場合には、扶養控除や障害者控除など各種控除を受けられず、提出した場合よりも多くの所得税が源泉徴収されることがあるので、注意が必要です。

公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出しよう

すでに説明しましたが、扶養親族等申告書は、公的年金について所得税が源泉徴収される方に毎年送付されます。年金には一定金額の控除が認められており、公的年金等控除額として、65歳未満の方は最低70万円、65歳以上の方は最低120万円の控除が受けられます。

基礎控除の38万円を含めると、65歳未満の方は108万円、65歳以上の方は158万円を超える年金を受け取る場合に、所得税および復興特別所得税が源泉徴収されるのです。そのため、老齢または退職を支給事由とする年金を受けている方のうち、年金額が65歳未満で108万円以上、65歳以上で158万円以上ある方に扶養控除等申告書が送られているのです。

公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出しないと?

それでは、提出した場合としない場合でどのように違うかを計算式で確認してみましょう。

(1)扶養親族等申告書を提出した場合

源泉徴収税額=(年金支給額-社会保険料-各種控除額)×合計税率(5.105%)

※合計税率とは所得税率5%と復興特別所得税(所得税額の2.1%)の合計になります。

(2)扶養親族等申告書を提出しない場合

源泉徴収税額={年金支給額-社会保険料-(年金支給額-社会保険料)×25%}

×合計税率(10.21%)

扶養親族等申告書を提出しないと、各種控除が受けられないうえに、合計税率が10.21%と税率が高くなることから、源泉徴収される税金が多くなる可能性があることがお分かりいただけるかと思います。

提出すれば確定申告は不要ですか?

公的年金等の収入が400万円以下であり、かつ、その公的年金等の全部が源泉徴収となる場合で公的年金等に係る雑所得以外の所得金額が20万円以下のときには、所得税の確定申告は必要ありません。しかし、医療費控除や生命保険料控除がある方や控除対象の扶養親族が途中で増えた方などは、税金の還付を受けるためにも確定申告をするのが良いでしょう。

また、年の途中で扶養親族等の人数が減少するなど、扶養親族等申告書の内容に変更が生じた方や年金以外の収入がある方、公的年金を2ヵ所以上から受給している方も確定申告をする必要があります。具体的な計算については、税務署に相談するようにしましょう。