日本円の普通預金や定期預金よりも金利が高いことから、外貨預金をはじめてみたいと考えている人もいるかと思います。外貨預金の通貨にはさまざまなものがありますが、先進国通貨の中でも金利が高く設定されているのが、オーストラリアの豪ドルです。
日本と比べてずいぶん高金利の豪ドルは、本当に魅力的な通貨なのでしょうか?豪ドルの安全性、そしてこれからを考えてみましょう。
オーストラリアとはどんな国?
日本のずっと下に位置するオーストラリア。数ある先進国の中でも日本に近い位置にありますが、オーストラリアについてあまり知らない方もいるのではないでしょうか。オーストラリアといえば、エアーズロック、オペラハウスのような観光スポットなど、表面的な部分は有名ですが、金融資産の形成をベースで考えるのであれば、もっと深い部分を知らなくてはなりません。オーストラリアとはどんな国なのか、経済的な目線で見たときのオーストラリアの特徴をお話しします。
■資源豊かな国
日本からほど近い場所に位置する先進国、オーストラリア。世界で6番目に広い広大な土地には今も豊かな自然があり、豊富な資源を抱えています。中でも注目の資源が、石炭や鉄鉱石です。石炭は火力発電などのエネルギー資源として、鉄鉱石は住宅建設などさまざまな用途で利用され、世界各国に需要があります。
そして、こうした石炭などの豊かな資源が強みのオーストラリアは、これまで資源の輸出を中心に発展してきました。そのためか、資源の需要が世界的に高い場合はオーストラリア市場も好調ですが、世界経済の落ち込みによって資源の需要が減ると、オーストラリア市場も影響を受けやすくなります。
■中国などの経済の影響を受けやすい
オーストラリアは、資源の輸出を中心に発展した国だとお話ししましたが、輸出相手は3割を中国が占めています。日本もオーストラリアの輸出相手として代表的な国ではありますが、その割合は約14%。中国の半分にも及びません。
中国が大きな輸出相手国になっているということはつまり、オーストラリアも中国を中心とした国の経済の影響を受けやすいということ。実際に、オーストラリアの代表的な輸出相手国として名を連ねる中国や新興国の経済発展が勢いを失ってからは、オーストラリアの経済も成長にかげりを見せています。
ほかにも、オーストラリアのすぐそばにあるニュージーランドとの関連性も深いです。オーストラリアの資源の輸出国になっている面もありますが、オーストラリアと似たような経済状況もあって、お互い影響を受けやすくなっています。
豪ドルの通貨について
ここまで、オーストラリアとはどんな国か紹介してきました。オーストラリアという国自体を知ることももちろん重要ではありますが、外貨預金においてもっと重要なのが国の通貨である豪ドルの特性を知ることです。先進国の中でも金利が高いことなどから注目を集める豪ドル。どのような特徴を持つ通貨なのでしょうか。豪ドルの特性と気になる金利についてお話しします。
■豪ドル通貨の特性は?
オーストラリアの通貨はドルです。アメリカもカナダもドルですが、まったく違う通貨であるため、豪ドルとして区別しています。
豪ドルの特徴は、オーストラリアの経済と同じように、資源を消費する国、つまり石炭や鉄鉱石などのオーストラリアの資源を多く輸出する国の影響を受けやすいこと。オーストラリアから資源を多く輸入している国の経済状況があまり良くないと、輸入を渋るため、思うように輸出ができないオーストラリアの市場の勢いも落ち込んでしまいます。
ほかにも、輸出額に関係する石炭や鉄鉱石などの資源の価格の変動も豪ドルの価値に影響を与えます。輸出も資源の価値も好調であれば良いですが、資源の価値が落ち込む場合は豪ドルの価値も一緒に下落しやすいです。
■オーストラリアの金利について
豪ドルを語るうえで外せないのが、豪ドルの金利の高さでしょう。中国などの経済の影響でやや落ち着きを見せてきてはいますが、それでも先進国の中では高金利と位置付けられています。オーストラリアの金利の高さを活用して、金利差によるリターンを狙い、豪ドルを持つという投資も存在するほどです。
それではなぜ、オーストラリアの金利は数ある先進国の中でも高いのでしょうか。理由は、オーストラリアの金利政策にあります。オーストラリアでは、あえて政策金利を高い基準のままにしているのです。低金利政策がすすめられた日本とは大きな違いですね。
なお、オーストラリアは先進国のどの国を見ても金利が高いことから、市場が安定していると豪ドルは値が上がる傾向にあります。反対に市場が落ち着かない場合は売りの傾向になるため、豪ドルは市場の状況が大きく影響する通貨といえるでしょう。
豪ドルの安全性は?
金利の高さが魅力とされてきたオーストラリアの豪ドル。1.5%と今までの金利からすると下がってきてはいますが、まだまだ先進国では高い水準にあります。豪ドルの金利は、どれほど豪ドルの安全性を形作ってきたのでしょうか。また、金利が下がってきた今、豪ドルはまだ安全だといえるのでしょうか。豪ドルの現状とこれまで、そしてこれからを考えてみましょう。
■豪ドルの安全性
ここ10年の豪ドルの安全性は決して高いとはいえません。日本円とドルなどのようなほかの通貨ペアと比べたとき、レートの変動が激しく、ばらつきがあるためです。しかも、主要先進国とされる国の中でも豪ドルの安定のなさは目立ちます。
豪ドルが安定しないのは、資源に頼った経済であるためです。資源の輸出、資源の価格の影響を大きく受け、そのうえ市場も小さいことから、通貨の価値が大きく上下する要因になっています。
それでも豪ドルは、ほかの主要先進国と比べて金利が高いという魅力がありました。豪ドルの価値が大きく上下しても、金利の高さである程度はカバーできたのです。しかし、徐々に魅力的だった金利も下がってきています。豪ドルの安全性はどうかと考えたとき、安全性に不安があるというのが現状です。
■豪ドルチャートの推移は?
豪ドルの過去10年ほどの動きを見ていると大きく上下しているとお話ししました。実際何が影響して豪ドルの価値が上下したのでしょうか。2000年代に入ってからの豪ドルのチャートの動きを追ってみましょう。
まず、豪ドルが4割近く上昇した時期が2006年から2007年にかけてです。この時期は世界経済も上向きであり、オーストラリアの輸出に関係している中国、そしてインド、ブラジル、ロシアへの資源輸出が増えたことが、豪ドルの価値上昇に大きく起因しました。しかし、2008年にアメリカでリーマンショックが起こると、豪ドルも世界的な流れに沿って下落していきます。
再び豪ドルの価値が回復したのが2009年のことです。オーストラリアの主な資源輸出国である中国が大胆な景気政策を打ち出したことで、2014年まで豪ドルの価値も上昇しました。しかし、2014年からは中国の景気の落ち込み、原油値の落ち込みもあって、2018年前半においても豪ドル安は回復していません。
■注目指標は?
豪ドルの近ごろの変化を紹介しましたが、値動きに大きな動きがある瞬間がわかれば、もっと豪ドルは活用しやすくなるはずです。必ず値が動くわけではありませんが、豪ドルの大きな値動きに関係してくる指標が、毎月中旬発表のオーストラリアの「新規雇用者数・失業率」、年4回、1月、4月、7月、10月下旬発表のオーストラリアの「消費者物価指数」です。どちらもオーストラリアの経済状況を数字で示すものであり、豪ドルが今後どんな値動きをするかある程度予想させてくれます。
また、オーストラリアの豪ドルは中国経済とも大きく関係していると紹介しました。このことから、オーストラリアの豪ドルの動きを見るには、中国の指標も欠かせません。毎月1日発表の「中国製造業PMI」、年4回、1月、4月、7月、10月中旬発表の中国の「GDP成長率」も合わせて確認しておきたいです。
■2018年後半豪ドルはどうなる?
2014年以降、ずっと低調だった豪ドルは、今や金利1.5%という過去最低の利率にまで落ち込みました。豪ドルの強みであった金利の高さが崩れてきたためです。直近で政策金利1.5%が上昇する見込みは数年のうちにはないと考えられます。
しかし、悪いことばかりではありません。金利の回復はまだまだ先ですが、豪ドルの価値自体は回復の兆しを見せています。世界経済が数年のうちに回復するようすを見せていることもありますが、これまで資源の輸出に頼りきりだったオーストラリア経済に変化が訪れているためです。
アジアの国々に近い英語圏の国という強みを生かして、留学やインバウンドに関するサービスを強化してきており、それが経済回復の材料となっています。しかも、オーストラリア経済をけん引してきた肝心の資源の価値はほぼ底値といっても良いほどです。今後は上がるのみということ。2018年前半の滑り出しは良くありませんでしたが、2018年後半から豪ドルの回復が期待されています。
まとめ
ここまで豪ドルの過去の動き、そしてこれから期待されることを紹介してきました。現状、1.5%と豪ドルの金利としては過去最低になっていますが、それでも先進国の通貨としては高い金利を維持しています。しかも、資源価格がずっと低かったこと、オーストラリアがインバウンドに力を入れはじめていることから、これまで低調だった豪ドルは回復の兆しをみせてきています。豪ドルが安全かどうかは難しいところですが、今後数年は値上がりが期待できる通貨といえるでしょう。