「株や投資信託で損が出たけど、確定申告すれば税金が戻ってくるって本当?」「NISAの損失は損益通算できるの?」投資をしている方なら必ず知っておきたい「損益通算」と「繰越控除」の仕組み。3月15日の確定申告締め切りを前に、正しく理解して税金を取り戻しましょう。


📋 目次
1. 損益通算とは?基本的な仕組み
2. 特定口座(源泉徴収あり)の場合の手続き
3. 損益通算できる組み合わせ・できない組み合わせ
4. NISAの損失は損益通算できない!注意点
5. 繰越控除とは?3年間損失を繰り越す方法
6. 確定申告の具体的な手順
7. まとめ


1. 損益通算とは?基本的な仕組み

損益通算とは、複数の口座や金融商品で生じた利益と損失を合算して、税金を計算し直す手続きです。

基本イメージ

例えば、A証券で20万円の利益が出て、B証券で15万円の損失が出た場合——

  • 損益通算なし:A証券の20万円に課税(約4万円の税金)
  • 損益通算あり:20万円-15万円=5万円に課税(約1万円の税金)

差額の約3万円が戻ってくる(または節税になる)という仕組みです。

投資の税率

上場株式・投資信託等の売却益・配当金にかかる税率は約20.315%(所得税15.315%+住民税5%)です。

💡 ポイント
複数の証券口座を持っている方・年に一度も確定申告をしていない方は、損益通算で税金が戻ってくる可能性があります。まず年間の損益を整理してみましょう。


2. 特定口座(源泉徴収あり)の場合の手続き

多くの投資家が利用している「特定口座(源泉徴収あり)」では、証券会社が自動的に税金を計算・納付してくれます。

特定口座の年間取引報告書を確認する

毎年1〜2月頃に、証券会社から「年間取引報告書」が郵送またはオンラインで発行されます。この書類に1年間の損益がまとめられています。

確認すべき項目 内容
上場株式等の譲渡所得 株・投資信託等の売却損益
上場株式等の配当所得 配当金・分配金の受取額と源泉徴収税額
源泉徴収税額 すでに差し引かれた税金の合計

複数の証券会社がある場合

特定口座は証券会社ごとに独立しています。A社で利益が出てB社で損失が出ていても、確定申告しない限り損益は通算されません。複数口座をお持ちの方は必ず損益通算の検討を。


3. 損益通算できる組み合わせ・できない組み合わせ

すべての損益が通算できるわけではありません。組み合わせのルールを正しく把握しましょう。

✅ 損益通算できる組み合わせ

利益の種類 通算できる損失
上場株式の譲渡益 上場株式・ETF・上場REITの譲渡損
株式投資信託の譲渡益 株式投資信託の譲渡損
上場株式等の配当金 上場株式等の譲渡損
FXの利益(くりっく365) FXの損失(同一市場内)

💡 ポイント
上場株式の配当金と株式の譲渡損を通算できる点は見落としがちです。配当金から源泉徴収された税金が戻ってくる可能性があります。

❌ 損益通算できない組み合わせ(主なもの)

できない組み合わせ 理由
株式の損失 ↔ 不動産所得の利益 異なる所得区分のため
株式の損失 ↔ 給与所得 申告分離課税と総合課税は通算不可
NISA口座の損失 ↔ 特定口座の利益 NISA損失は損益通算の対象外
株式の損失 ↔ 公社債(債券)の利益 2016年以降は通算可(特定公社債等のみ)

⚠️ 注意
損益通算のルールは複雑で、金融商品の種類・口座の種類によって異なります。不明な点は証券会社の窓口や税理士にご確認ください。


4. NISAの損失は損益通算できない!注意点

新NISAで発生した損失は、特定口座・一般口座の利益と損益通算することができません。これはNISAの最大の注意点の一つです。

具体的なケース

例えば、新NISA口座で30万円の損失が出て、特定口座で20万円の利益が出た場合——

  • 通算はできない:特定口座の20万円に対して通常通り課税(約4万円の税金)
  • NISA口座の30万円の損失は「なかったこと」として扱われる

なぜ通算できないのか

NISAは「利益が非課税」という特典がある代わりに、損失も税務上は存在しないものとして扱われる制度設計になっています。NISAで損失が出た場合の税務上の救済措置はありません。

💡 ポイント
NISAは長期・積立・分散を前提にした制度です。短期の値動きに一喜一憂せず、長期保有を基本とすることが損失リスクを下げる最善策です。


5. 繰越控除とは?3年間損失を繰り越す方法

その年の損益通算をしても損失が残った場合、翌年以降3年間にわたって損失を繰り越すことができます。これを「繰越控除(損失の繰越控除)」といいます。

繰越控除の仕組み

2024年に50万円の損失が出て、損益通算後も30万円の損失が残ったとします。

  • 2025年:利益20万円 → 繰越損失30万円と相殺 → 課税ゼロ(残り損失10万円)
  • 2026年:利益15万円 → 繰越損失10万円と相殺 → 5万円に課税
  • 2027年:通常通り課税(繰越期限切れ)

3年間で最大限に活用できます。

繰越控除を受けるための条件

  • 損失が発生した年に確定申告を行うこと(申告しないと繰り越せません)
  • 翌年以降も毎年確定申告を継続すること(途中で申告を怠ると繰越が途切れます)

⚠️ 注意
損失の繰越控除は「申告しなければ権利が消える」仕組みです。損失が出た年は必ず確定申告を行いましょう。


6. 確定申告の具体的な手順

ステップ1:年間取引報告書を集める

利用しているすべての証券会社から年間取引報告書を取り寄せます(2月頃までに届きます)。

ステップ2:損益を集計する

各証券会社の損益を一覧にまとめ、損益通算できる組み合わせを確認します。

ステップ3:確定申告書を作成する

国税庁の「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)を使うと、画面の案内に従って入力するだけで申告書が作れます。

必要な書類
– 各証券会社の年間取引報告書
– マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
– 源泉徴収票(給与所得がある場合)
– 配当金の支払通知書(配当の申告をする場合)

ステップ4:申告・納税または還付

  • 還付の場合:申告後1〜2ヶ月程度で指定口座に還付されます
  • 追加納税の場合:3月15日(2026年)までに納付

💡 ポイント
e-Tax(電子申告)なら、マイナンバーカードがあれば自宅から申告・送信まで完結します。税務署の窓口の混雑を避けられます。


7. まとめ

  • 損益通算とは複数口座・複数商品の損益を合算して税金を計算し直す手続き
  • 複数の証券口座を持つ場合、確定申告をしないと損益は通算されない
  • 上場株式の譲渡損は配当金とも通算できる(見落としがち)
  • NISA口座の損失は損益通算の対象外。この点は制度の大きな注意点
  • 損失が残った場合は繰越控除で翌年以降3年間に損失を繰り越せる
  • 繰越控除は損失年に必ず申告しないと権利が消える
  • 確定申告の期限は2026年3月15日(日曜)。e-Taxで自宅から手続き可能

投資の損益通算・繰越控除は、正しく活用すれば大きな節税につながります。今年損失が出た方は、期限(3月15日)を忘れずに申告しましょう。

本記事の情報は執筆時点のものです。税制は変更になる場合があります。詳細は税理士または国税庁のウェブサイトでご確認ください。