個人の資産といったら何を思い浮かべるでしょう。家計簿をつけている人もいるでしょうから、預貯金や財布の中のお金がどのくらいか把握している人は多いのではないでしょうか。

しかし、資産は何もそうした現金ばかりではありません。土地や建物、保有している株式や生命保険も資産になります。実際に、そうした資産のすべてを把握できているでしょうか。自分の資産を守って活用する第一歩は、「資産管理」にあります。正しい資産管理について考えていきましょう。

「資産管理とは?」

資産管理をする前に知っておきたいのが、自分がどのような資産をどのくらい保有しているのかということ。資産がどのくらいあって、どのような状況かを知っておかないと管理のしようがありません。まずは、個人で管理する資産の種類を知って、保有する資産を整理してみましょう。資産の状況が分かれば、現状はもちろん将来の計画も立てやすくなります。個人資産の種類と注意点を確認してみましょう。

個人で管理すべき資産とは?

まず整理したいのが、銀行預金やタンス預金などの現金です。銀行預金なら通帳があるので、どのくらいあるか把握しやすいですね。銀行口座が多く、使っていないものがあれば、これを機にいくつかに絞って資産をまとめておくと分かりやすいかもしれません。

次に、株式や債券、投資信託などの有価証券です。中でも株式や投資信託は、現金と違い価値の変動が激しいもの。購入したときの価格と現在の価格が大きく違うこともあります。取得した日付と取得したときの金額、合わせて直近の価格を整理しましょう。株式や投資信託は価格が変動しやすいため、1カ月や1週間など期間を決めて確認するとよいですね。

そして、資産として見落としやすいのが貯蓄性のある生命保険。個人年金や定期保険など、満期金や年金がもらえる保険は資産に含まれます。ただし、払込額ではなく、支払いベースで現在の解約返戻金の額を確認しておきましょう。

なお、現金や有価証券、生命保険などの資産は流動資産といって1年以内に現金化できる資産です。長期的に保有する資産は固定資産といいます。

固定資産とは?

固定資産はすぐに現金化が難しい資産のことです。長期的な保有が考えられる土地や建物、車などがあげられます。企業であれば、耐用年数や減価償却(毎年費用としてあげる購入価格の一部)などしっかり管理しますが、個人の資産管理ではそこまできっちりする必要はありません。

しかし、土地の価格は変動しますし、建物や車は経年劣化で価値が下がってしまうため、取得価格を把握しておくだけでは不十分です。少なくとも、現在のだいたいの価値は把握しておきましょう。土地であれば、毎年送られてくる固定資産税の納税通知書で評価額を調べることができます。建物であれば近くの似たような物件、車であれば型式や年式が似た中古車の査定額を参考にしてみましょう。

いくらで購入したではなく、いくらで売れそうかを視点に考えるのが基本です。購入時は高かった家や車も、整理してみると思ったより評価額が安いと感じるかもしれませんね。

また、土地・建物や車以外に売却額が10万円以上になりそうな家具など高価なものがあれば、固定資産に含めて計算しましょう。

「資産管理が必要な理由」

資産の整理をすることで、自分の資産がどれくらいかより分かりやすくなりますが、資産を把握しただけでは十分とはいえません。資産を把握して、運用するまでが資産管理です。資産状況が分かっても、実際に活用しなければ意味がありません。

一般的だからという理由で資産管理の方法を預貯金やタンス預金に絞る人もいるかもしれませんが、実は安全なように見えてリスクもあります。資産管理が必要な2つの理由をみていきましょう。

正しい管理には金融リテラシーが必要

金融リテラシーとは正しく資産を管理することです。正しく管理するとは金融資産の種類や特徴を知って、万一のときに備えること。不測の事態が起きたとき、いかに自分の資産を守るかということです。

例えば、日本円で銀行預金をしている人は多いと思いますが、それだけに絞ってはいないでしょうか。預貯金は元本が減らないから安心と感じますが、実はインフレが起こると日本円の価値は下がってしまいます。現実には物価が上がり、今まで100円だったものが200円出さないと買えないイメージです。この場合お金の価値は1/2にまで下がってしまっています。

日本円での預金が安心だと感じるのは、バブル期からずっと緩やかなデフレの傾向が続いているためです。デフレは不況を示すので、いつかはインフレに転じる可能性があります。緩やかなインフレであればいいですが、ハイパーインフレといわれる急激な物価上昇が起こると100万円の価値が100円にまで落ちてしまう可能性もゼロではありません。

だからこそ、ただ資産を管理するのではなく、正しく資産を管理すること、すなわち「金融リテラシー」が重要なのです。

お金の管理は”リスク分散”が大事

現金を日本円の銀行預金だけに絞るのはリスクがあると紹介しました。同じく、日本円にあたる日本国債などもインフレが起きたときの対策になりません。

それではどうすればよいのでしょう。大切なのは、1つの方法に絞り込まないこと、日本円ばかりで現金を持たないことです。資産をさまざまな方法で運用するリスク分散が大切です。

より元本割れのリスクが少ない預金であれば、日本円の他、アメリカドルや豪ドル、英ポンドなど外貨預金を利用する方法があります。また、リスクは預金よりも高めですが、株式や不動産、投資信託などを利用すればより大きなリターンを望むことも可能です。

仮に、大きなインフレの波がきて、日本円の金融資産を全金融資産のうち半分持っていたとしても、残り半分はインフレから守ることができます。

もちろん、どの金融資産にもメリットやデメリットがありますが、複数組み合わせることによって自分の将来の資産を守れる可能性が高まるのです。老後の不測の事態も考えて、資産管理は正しく行いたいものですね。

「資産を管理する方法」

正しい資産管理と資産管理するべき理由を紹介してきましたが、実際のところどんな金融資産に手を出してよいか分からない、そもそも何があるかも分からない場合もあるでしょう。

まずは資産管理の種類を把握していないと、リスク分散したくてもうまくできません。銀行預金をはじめ、知っておきたい資産管理の方法とそれぞれのメリット・デメリットをみていきましょう。

銀行での定期預金・普通預金

資産管理の主流になっているのが、銀行の定期預金や普通預金です。大きなメリットはすぐに現金として手元に用意できること。定期預金の場合は解約が必要ですが、基本的に元本割れすることなく現金化ができます。海外だと金融機関によって対応が変わってきますが、国内であればコンビニなどすぐにATMを見つけられるのも利点でしょう。

デメリットは、利息によるリターンが少ないということ。普通預金利息1%の時代もありましたが、緩やかなデフレ状態が続いていることから金利0.01~0.001%(2018年6月現在)の銀行も少なくありません。金利0.001%の場合100万円預けても、税金1円がひかれて利益は9円です。1,000万円預けても85円(税金15円)にしかならないのでお金を増やす方法としては魅力に欠けます。

ただし、定期預金の場合は普通預金よりも金利が高くなっています。期限に縛られますが、余剰金は定期預金に回してみるのもよいでしょう。

さらに、銀行預金には外貨預金があります。日本円ではなく、アメリカドルなど外国通貨で預ける方法です。為替変動によるリスクはありますが、日本円よりも金利が高いものもあるので、分散投資の1つとして利用してみるのもよいですね。

保険・年金を利用する

銀行への定期預金や普通預金に次いで利用者が多いのが、保険や年金(個人年金)です。保険や年金のメリットは、もしものときの保証を受けられること。医療保険であれば、保険適用が難しい最先端医療の治療費を保険で払える可能性がありますし、高額な入院費用などを保険でカバーできます。

生命保険であれば家族への保障になります。契約に沿って保険料を払い込めば、万一の際に自分で払うのが難しい額をカバーできるのがメリットです。

また貯蓄型の保険や年金であれば、老後の生活費にプラスすることができます。なかなかお金が貯まらない場合は、こうした保険や年金を活用してみるのも方法の1つですね。

ただしデメリットは、保険会社が倒産する可能性があるということ。また、インフレによるダメージで元本割れする可能性があることです。銀行預金と同じようなリスクですが、銀行のように預金に対して1,000万円までの補償がない点には注意したいです。

資産運用する

資産を元手に、さらに資産を増やす方法です。株式投資や債券、投資信託、不動産投資などがあげられます。メリットは、資産をさらに増やせる可能性があるということです。うまくいけば年利2~3%程度の利益をあげることもできます。仮に100万円を年利3%で運用した場合3万円の利益です。さらに利益を含めて運用し続けることで、元手が増え、さらなる利益を得られる可能性があります。

しかし、「なんだか怖そう」というイメージからか、日本国内ではあまりメジャーな資産管理方法ではありません。確かに、100%はないので元本割れして損失が出る可能性もあります。大きく損をしないために守りの姿勢になるのもときには必要です。

しかし、守りの姿勢に徹して銀行預金や貯蓄性のある保険だけでは老後の生活に不安が残るのも確かです。これまでの資金運用は自分で選択して管理する必要がありましたが、AI技術の進歩で、自分に合った投資スタイルや投資先の割合を知ることができますし、少額から投資することもできます。過剰に不安を抱く必要はないでしょう。

また、資産運用の利益は確定したら税金の対象になりますが、年間120万円まで5年間有効なNISAや年間40万円まで20年間有効な積立NISAを活用することで一部非課税にすることもできます。制度を活用して少額から投資をはじめてみるのもよいですね。

まとめ

これから先、何が起こるか分からないからこそ、資産管理についてしっかり考えていくことが大切です。日本円での預金など金融資産が一部に集中している場合は、今一度自分の資金管理が適切か見直してみましょう。

老後の生活の不安を拭い去るためにも、守りばかりに徹するのではなく、資産を増やして老後の生活にゆとりを持たせることも考えていきたいですね。銀行では預金の他、資産運用なども扱っているので候補として考えるのもよさそうです。