住宅購入を視野に、住宅ローンとはどんなものか見ていく中で、「金利がだいぶ違うな」と思ったことはありませんか。もちろん金融機関によって設定している金利が違うということもありますが、金利の差は固定金利と変動金利で表示されている金利の種類が違う場合があります。

住宅ローンの契約で知っておきたい変動金利について、金利の考え方と計算方法、住宅ローンをお得に借りるために知っておきたいポイントまで見ていきましょう。

住宅ローンの変動金利の仕組み

住宅ローンの金利の計算のしかたには、大きく分けて変動金利と固定金利があります。変動金利の方がお得だからという理由で決めたり、反対に固定金利の方が安定しているからという理由で安易に金利を設定したりすると、後で後悔することになるかもしれません。

後悔する前に知っておきたい住宅ローンの金利について、変動金利を中心に詳しく解説していきます。

■ 変動金利とは?

変動金利は、住宅ローンの返済期間中に金利が変わるタイプ。国の政策金利や、金融機関が優良企業向けに設定している短期型の短期プライムレートなどが目安になっていることから、そのときどきの金利の状況が住宅ローンの金利に影響します。

ただし、毎日金利が見直されるわけではなく、金利変動のタイミングはだいたい半年に1回です。半年前とあまり短期プライムレートなどが変わっていなければ、金利は変更されないこともあります。住宅ローンの多くは数十年単位で組まれるので、将来的な予測ができない方法といえるでしょう。

なお、将来的に予測ができないということは、今後金利が上がる可能性もあるということ。いきなり金利が跳ね上がって支払っていけるのかという不安があります。しかし、そんなときのために変動金利のうち元利均等返済では激変緩和措置が設けられています。

激変緩和措置が適用されるのは、元金と利息の合計額が変動しない元利均等返済の場合です。急な変動があっても5年間は支払額を据え置きできるようになっており、利息の割合を増やすことで、5年間同じ支払額のままにできます。大きな変動があっても、ひとまず5年間は猶予があるということです。

しかも、5年後に金利が上昇する場合も、激変緩和措置によって上昇前の金利の1.25倍に収まるように設定されます。もちろん、金利が上がれば負担額は増えますが、思った以上には金利が跳ね上がらずに無理なく支払いができるでしょう。

■ 固定金利との違いは?

ここまで変動金利について紹介してきましたが、変動金利と対照的な金利の計算には、固定金利もあります。固定金利は、住宅ローンを契約し、支払い続けていく期間中ずっと金利が変わらないタイプです。

固定金利は、金融機関が将来の金利の変動を見越して設定するため、市場金利など金融機関全体の金利が低金利のときは変動金利よりも高めに設定されます。反対に、景気がよいときは変動金利よりも固定金利の方が設定は低めです。

なお、一般的に、固定金利といえば期間中ずっと金利が変わらない全期間固定金利を指すことが多いですが、固定金利には変動金利の特徴も合わさった期間選択型固定金利もあります。期間選択型固定金利は、5年、10年など、契約時に決めた期間の間だけ固定金利で計算していく方法のこと。固定する期間が短いほど、期間選択型固定金利の場合は金利が低くなる傾向にあります。

■ 変動金利住宅ローンを選ぶメリットは?

変動金利住宅ローンのメリットは、低金利の現代において、お得に住宅ローンを利用できることです。実際に、現代の住宅ローン利用者の多くが変動金利を選んでいることから、低金利の時代において変動金利がお得なことがよくわかります。トータルすると低金利の間は、固定金利よりも利息の支払い総額が少なくなるため、変動金利で契約した方が利息の支払いはぐっと抑えられるでしょう。

そして、利息の負担が軽くなることでのメリットは、固定金利で契約するよりも早く返済できることです。元金均等返済の場合はあまり影響がありませんが、元金と利息を合わせて毎月一定額を支払う元利均等返済の場合は効力を発揮します。

特に元利均等返済の場合は、どうしてもはじめの方で支払う利息が多くなってしまいます。利息が多いと、その分元金がなかなか返済できないため、低金利の現代で金利が低く設定されている変動金利は大きなメリットとなるでしょう。

■ 変動金利住宅ローンを選ぶデメリットは?

ここまで、変動金利住宅ローンを選ぶメリットを紹介してきましたが、必ずしも住宅ローンは変動金利の方がよいわけではありません。変動金利注意しなければならないのが、住宅ローン契約後の金利の上昇です。

金利が上昇したといっても0.01%のように多少の上がりであれば問題ないのですが、上げ幅が大きくなると毎月の支払額に影響してきます。そうした影響を考えて、元利均等返済には激変緩和措置が設けられていますが、万能ではありません。

たとえば金利が上がっても5年間は据え置かれるといいましたが、金利が急激に上昇すると、利息が毎月の支払額の範囲内に収まらないことも考えられます。この毎月の支払額を超えた利息のことを未払い利息といいますが、未払い利息はあふれ出た期間中ずっと積み立てられていきます。一括で払うか、分割にするか、あるいは住宅ローンの支払いを一旦止めてもらい未払い利息だけを精算するか選択できますが、予想外の出費になることは間違いないでしょう。

変動金利を計算する方法

ここまで住宅ローンの変動金利とは何か、どのようなメリットやデメリットがあるか解説してきました。変動金利と固定金利の違いについてはある程度把握できたことでしょう。

ただ、仕組みを知っても支払額がどのくらいになるかは個別の契約次第なのでわかりません。ここでは、変動金利を選択した場合の住宅ローンの計算方法について解説していきます。

■変動金利を計算する方法は?

変動金利は、固定金利とは違って短い周期で金利が見直されるものだということを紹介しました。そのため、変動金利式住宅ローンの計算を正確にするのはほぼ不可能です。まだ、数年先ならある程度は予想できるかもしれませんが、住宅ローンで契約する10年、20年先の未来は誰にも予想できません。

とはいったものの、ある程度の目安でもいいから知りたいものですよね。そこで活用したいのが、各金融機関で用意されている住宅ローンの返済シミュレーションです。詳しく条件を入力できるタイプのものなら、変動金利の上昇率を自分で設定して計算できます。

しかし、金利の変動については先に紹介したように予想できません。現代は低金利が続いているので、変動値を入れるなら、金利が上昇するものとして仮に計算するべきでしょう。しかし、今度はどのくらい変動するのかという問題が発生してきます。

対策としては、バブルのような大幅な変動はないと仮定して、5年ごとに前の金利から1%上がると仮定して計算してみると、金利上昇を見越した計算ができますよ。激変緩和措置では、元利均等返済の場合5年の据え置きから金利を上がるときは前の金利の1.25倍となっているので、1.25倍をベースに厳しめで考えるのもよいでしょう。

■ エクセルを使用した変動金利の計算方法

先に紹介した金融機関のシミュレーションは、変動金利での支払額をざっくり知るのに便利ですが、そこまで精度は高くありません。設定できる範囲が限られているためです。もっと詳しく変動金利を使った住宅ローンの返済の計算をしたいなら、エクセルを活用しましょう。計算の手順を紹介します。

1.まずは項目の入力から

まずは必要な項目から入力していきます。変動金利の住宅ローン返済をシミュレーションする場合は、「金利」「(月々の)返済額」「(支払)利息」「(返済)元金」「残高」の5項目で十分でしょう。各列の1番上に、左端1マスを空けて5つの項目をそれぞれ入れていきます。1列目の行には、支払いの回数を入れていきましょう。

2.各項目に計算式を入れていく

「金利」にははじめに適用される金利を、「返済額」「利息」「元金」「残高」は、関数を使って計算式を入れていきます。ここでは、金利はB列、返済額C列、利息D列、元金E列、残高F列、2行目の計算式を入れると仮定して計算式を紹介します。

まず返済額は、以下のように計算式を入れます。

=PMT(B2/12,420,35000000)

※3行目以降は、35000000の部分を前月の残高F2に指定。

PMT関数は一定利率の毎月のローン返済額を求められる関数で、計算式の例は、35年払い(420カ月)、3,500万円を借り入れた場合のものです。

利息の計算も関数を使えば簡単です。以下のように借入額に金利をかけ、12カ月で割って求めます。

=35000000*B2/12

元金、残高も関数を入れると後が楽です。

・元金の計算式(返済額から利息を差し引く)

=C2-D2

・残高の計算式(借入額から元金を差し引く。3行目以降は前の残高から元金を差し引く。)

=35000000-E2 (3行目以降は =F2-E3)

後は自動で計算できるように、セルの左下のマスの部分にカーソルを合わせ、数式を下に引っ張ってコピーしていきます。

3.変動金利のシチュエーションを考え金利を変えてみる

ここまでエクセルでの計算方法を紹介しましたが、これでは金利が一定で固定金利のような計算になってしまいます。「金利」の部分を5年ごとにプラス1%にするなどして金利を動かしてみましょう。ただし、金利変更の際、返済額のPMTの部分の計算が変わってしまうため、設定の変更を忘れずに。

PTMは、以下の式に変更します。

(例)61カ月目の計算を再計算する場合

=PMT(61B/12,420-60,F60)

※金利を12カ月で割り、全体の420カ月から60カ月が経過、前回60カ月目の残高をもとに計算する場合です。

金利計算からわかるローンのお得な借り方

ここまで、変動金利式住宅ローンの金利の計算方法とシミュレーションのしかたを紹介してきました。具体的な数字がわかると、変動金利がいかに金利の変動に弱いか、どのくらい返済額が上がるかが実感できるでしょう。住宅ローンをお得に借りるには、2つのポイントを意識することが大切です。

■ 繰り上げ返済は早いほど良い

繰り上げ返済とは、まとまった額を毎月の返済とは別に、金融機関に返済すること。繰り上げ返済は当初の計画外の返済になるため、利息はかからず、全て元金の返済に充てられます。残高が2,000万円で500万円の繰り上げ返済をする場合は、繰り上げ返済後1,500万円に残高が減る仕組みです。

特に変動金利など将来が見えない返済方法を選択したなら、繰り上げ返済は早いほど良いでしょう。なお、繰り上げ返済後は、返済期間を縮めるか、あるいは返済期間をそのままに据え置き、毎月の返済額を抑えるかのどちからが選択できます。

変動金利による金利上昇のことを考えると、繰り上げ返済後は、返済額をそのままに期間を短縮した方がお得です。期間を短縮した方が金利上昇のリスクを抑えられますし、返済期間が短くなる分、予定よりも早めに返済が完了するので心にも余裕が生まれます。

■ 自己資金は多いほど良い

ここまで、繰り上げ返済は早いほど良いと紹介してきましたが、住宅ローン契約前から繰り上げ返済の資金を用意した方が良いといっているわけではありません。繰り上げ返済は、あくまで返済中にお金に余裕が出てきた場合の話。

住宅ローン契約の段階で、金融機関から借り入れる額はできるだけ抑える方が良いです。理由は、借りた額に応じて金利の影響が大きくなるため。住宅購入の際に負担する自己資金はできるだけ多めに用意しておきましょう。

住宅の購入資金を、全て住宅ローンで用意することもできますが、住宅ローンの期間が長くなるリスク、変動金利なら途中で金利が上昇するリスクがあります。数あるリスクを回避するためにも自己資金は多いほど安心です。

まとめ

住宅ローンの契約中に金利が変わる可能性のある変動金利は、予想しづらく実際の確定した返済総額がわからないという欠点があります。しかし、金融機関のシミュレーション、エクセルを活用すればある程度の試算は可能です。低金利の今は、固定金利よりもお得に借りられるので、シミュレーションや作成したエクセル表と見比べて最終的に返済方法を決めていきましょう。お得に借りるための、繰り上げ返済、資金の準備もしておくと安心です。