将来受け取ることになる退職金の運用について考えていますか?いきなり大きなお金が手元に来たときにどうしたらいいか悩んでしまうという方も少なくありません。そこで焦って多額のお金を投資にまわしてしまうことは大変危険です。

投資を始めるときに十分な金融知識がなければ、資産を増やすどころか運用に失敗して元のお金を大きく減らしてしまう可能性もあります。そのようなリスクを回避する運用方法に「退職金定期預金」というものがあります。今回は、この退職定期預金を詳しく紹介していきます。

「退職金定期預金とは?」

退職定期預金とは、その名の通り退職金専用の定期預金のことを指します。通常の定期預金よりも金利が高く、定期預金と同じく元本保証されているのでまとまったお金を運用するには最適なプランです。退職後のライフプランを考える上で、しっかりとした資産設計を立てることはとても重要で、まず最初の入り口としておすすめできる安全な運用方法です。

ここではどれだけ金利が高いのか、どういった人が対象になるのかを詳しく解説していきます。

■退職金定期預金の特徴は高い金利

退職金定期預金は、銀行の定期預金よりも高い金利が特徴です。現在、多くの銀行の定期預金の金利は年率0.001%の超低金利ですが、退職定期預金は定期預金よりも高く設定されています。年率2.0%を超える高金利の定期預金を扱う銀行もあります。

通常の定期預金と退職金定期預金でどれだけ差が出るか、実際に計算してみましょう。ここでは、預け入れ300万円の3カ月満期で受け取れる利子の計算をしてみます。

• 退職金定期預金 年率3.0%(3カ月)の場合

300万×0.03×90日÷365日=2万2,191円

• 定期預金 0.1%(3カ月)の場合

300万 × 0.001 × 90日 ÷ 365日 = 739円

2万2,191円 – 739円 = 21,452円

なんと退職金定期預金の方が、2万1,452円も多く利子を受け取れます。退職金定期預金は退職後の資産設計に影響を与える金融商品といえます。

■対象となる人は?

退職金定期預金なので、前提条件として退職金を受け取る人が対象です。さらに、預け入れる銀行によって条件が定められています。多くの銀行では、下記のような条件が設けられています。

• 退職金の受け取りから1年以内に申し込むこと

• 該当する銀行に退職金の振込指定予約、預け替えすること

• 一定金額以上を預け入れること(300万以上など)

• 「退職所得支払証明書」など、退職金の受取金額を確認できる書類を提出できること

• 退職定期預金に初回申し込みであること

• 店舗での申し込みのみ受け付け

このほかにも銀行によって条件が設けられている場合があります。例えば地方銀行に預け入れる場合は上記の条件のほかに、その地域に在住していることなどが挙げられます。

預け入れを予定している銀行の条件もしっかりと確認することが大切です。

「退職金を預ける銀行を選ぶポイント」

退職金定期預金の期間は1年しかないので、退職金を預ける銀行を選ぶときは、少しでも高い金利の銀行を選ぶことがポイントです。手間のかかることですが、退職後の資産設計をする上でとても重要ですので、しっかりと調べましょう。

そして多くの銀行では、退職金定期預金のプランは3カ月と短期間のものが主流になっているので、満期が来たら次の銀行に預け替えすると高い金利で運用し続けることが可能です。1カ所だけではなく複数の銀行を候補に入れておくと良いでしょう。

■金利が高い

銀行によって金利に大きく差があります。0.5%~1.0%の銀行が多いですが、年率2.0%を超える銀行も複数あります。それらの高金利の銀行は地方銀行で、居住地域限定の条件がある場合もありますが、退職金の受取口座の予約のみという条件がゆるいところも存在します。

全国の地方銀行の金利と条件を丹念に調べていくと、思わぬ高金利でゆるい条件の銀行を見つけられるかもしれません。ちなみにメガバンクでは数年前に退職金定期預金の取り扱いを中止しているところもあり、1銀行だけ年率0.5%で退職金運用プランを提供しています。

地方銀行を見ると、例えば年金受取指定のみで申し込みができる条件がありますが年率2.0%の銀行もあり、その差は1.5%もあります。銀行によって金利に大きな差があることがわかりますね。少しでも金利が高い銀行を探して賢く運用しましょう。

■短期運用がおすすめ

退職金定期預金は満期を迎えた後、自動継続で通常の定期預金に切り替わります。通常の定期預金の金利は下がってしまうので、満期を迎えたらすぐに解約をして、別の銀行に預け直すと良いでしょう。そうすれば次の銀行で再び高い金利で運用できます。

退職金定期預金を利用できるのは、退職金受け取りから1年と決められているので、ぎりぎりまで複数の銀行で短期運用を繰り返すのが賢い運用方法でしょう。

退職金定期預金は、3カ月の短期運用プランが多いので、3カ月×4回契約という方法をとると高金利で運用できます。プランによってはもう少し長い期間のものもありますが、いずれにせよ、1年間を無駄なく高金利で運用できるように計算して、短期運用することをおすすめします。

退職金定期預金は退職後の資産設計に大きく関わります。どの銀行でどの程度の金利なのか、預け入れる前にじっくりと計画を練るためにも、退職前から十分に下調べをしておきましょう。調べてもよくわからないときには専門家を頼るのも賢い選択です。

「退職金定期預金を預ける注意点」

通常の定期預金よりも金利が高く、魅力的な退職定期預金ですが、定期預金よりもかなり高く金利が設定されていることには主に2つの理由があります。それは「退職金定期預金」を入り口にして長期で運用してもらうこと、そしてもうひとつが、他の投資商品を同時に購入してもらうためのきっかけにしていることです。

特に後者は、「投資信託」「外貨預金」と同時購入を勧められることが高い金利の条件になっているケースがあるので注意が必要です。

■投資信託・外貨預金と同時購入を勧められる場合

退職金定期預金の申し込みは、原則店舗での申し込みです。オンラインでの申し込みには対応していません。ですので、実際に銀行の窓口へ行って申し込みする必要があります。そこで退職定期預金の申し込みをする際に、同時に投資信託や外貨預金の購入を勧められる、または退職金定期預金とそれらがセットになっている場合もあります。

このときの投資配分は、退職定期預金が総申込金額の50%以下、残りの50%以上を外貨預金や投資信託に充てるという感じです。

投資信託の場合、「販売手数料」といって購入時に手数料がかかるものが多いです。高いものだと3~4%くらいの手数料が発生するものもあります。購入時手数料が高い投資信託を選んでも退職金定期預金の利率は変わりません。むしろ手数料の分だけマイナスが大きくなってしまいます。投資信託や外貨預金は投資ですので、当然リスクを伴います。

最初からそれらで運用を考えているのであれば購入しても構いませんが、そのつもりがないのであれば、退職定期預金のみ申し込みましょう。

■退職金運用が目的

退職金は第二の人生を安心して過ごすための大切なお金なので、自分の意志で賢い使い方を選びましょう。

前述したようなセット販売がない場合でも、銀行としては退職金定期預金を投資信託や外貨預金などに切り替えてもらう前段階として考えている場合もあります。

勘違いして欲しくないのですが、投資信託などの投資自体は悪いことではありません。老後のためには資産に少しでも働いてもらって増やすことは重要です。

しかし投資をする前に、ひとつ知っておいて欲しいことがあります。それは、若いときに資産運用で失敗しても働いた収入でカバーすることができますが、定年退職後はそれができないことです。リスクを伴う投資商品を購入するのは、金融知識を付けた後でも遅くありません。まずは元本や利息が保証され預金が保護される定期預金を利用して、退職金を運用することをおすすめします。

まとめ

退職後の資産設計では、退職金をうまく運用できるかが重要になってきます。少しでも資産を増やして、さらに運用額や運用の選択肢を増やすことで第二の人生を不安なく過ごすことができます。

その最初の段階である退職金定期預金の運用で躓かないよう、賢く選びたいものです。今回は退職金定期預金のメリットや銀行を選ぶポイント、注意する点を解説してきました。ぜひこの記事を参考に、お得な退職定期預金を使って大事な資産を運用してください。