金融商品の1つに投資信託があります。投資信託は、プロに運用を任せられるのが魅力。少額投資からの投資でも、多くの投資家から資金を募っているため自動的にリスク分散ができるので、投資が初めての人でも比較的とっつきやすいです。

金融商品として魅力的な投資信託ですが、実は投資信託をはじめるとさまざまな税金を支払っていることが分かります。実際どのような税金を支払っているのか、確定申告は必要なのか、投資信託と税金のことについて確認していきましょう。

投資信託にかかる税金は?

投資信託には、公社債投資信託と株式投資信託があります。公社債投資信託は公債と社債を運用している投資信託で、株式投資信託は株式を運用している投資信託です。運用の内容から違いますが、実はそれぞれ解約や分配があったときにかかる税金も異なります。該当する税金が違うことによって、課税の方法などが変わってくるので注意しましょう。公社債投資信託と株式投資信託、それぞれの税金の種類を解説します。

公社債投資信託にかかる税金の種類

公社債投資信託は、国債と社債などややリターンは少ないものの、ローリスクな金融商品を扱った投資信託です。解約した場合は利子所得、運用期間が終わり償還された場合も利子所得となります。いずれも公社債の利息にかかる所得です。分配金があった場合も利子所得になります。どの利益であっても利子所得としてまとめられるので覚えやすいですね。

なお、利子所得の税額は2037年まで復興特別所得税が加算されるため、利息に対して20.315%かかります。復興特別所得税がなくなる2038年からは所得税15%、地方税5%の合計20%です。公社債投資信託の利子所得はいずれも源泉分離課税で利益等が確定した時点で源泉徴収されます。純粋に公社債だけの投資信託であれば基本的に確定申告などの手間がないのがポイントです。

株式投資信託にかかる税金の種類

株式は会社が資金調達のために発行しているものです。そのため、株式の売買は譲渡と表現するのが適切です。解約や償還があった場合は株式に対する権利を手放したものとして譲渡所得で計算します。譲渡所得の税金は、利子所得同様2037年まで20.315%。申告分離課税なので原則確定申告が必要ですが、契約した口座によっては確定申告をしなくてもよい場合があります。

株式投資信託の分配金(配当金)は配当所得に該当するものです。名称は配当所得ですが、分配金も譲渡所得などと同様税率20.315%で計算します。税率は公社債投資信託、株式投資信託ともに同じですが、所得の名称や課税の方法が少し異なるので注意しましょう。

譲渡損益がプラスの場合にかかる税金は?

(株式)投資信託の譲渡(解約)が発生した場合、プラスになったかマイナスになったかで課せられる税金は変わってきます。利益が出た場合どのくらいの税金がかかるのでしょうか。以下の状況で譲渡した場合、譲渡損益、分配金、トータルリターン、税金をそれぞれ求めてみましょう。

(例)1,000口あたり10,000円の投資信託Aを申込手数料2%で10万口購入。

半年後保有していた投資信託Aを1,000口あたり12,000円で解約した。

譲渡時に発生した信託財産留保額は0.2%、保有期間中300円の分配金があった。

譲渡損益のシミュレーション

譲渡損益は、解約時の価格から購入時の価格を差し引いて求めます。

解約時の価格

(12,000円-12,000円×0.2%)×10万口÷1,000口=1,197,600円

信託財産留保額は譲渡時のペナルティのようなもの。解約時の基準額から差し引いて計算します。

購入時の価格

(10,000円×10万口÷1,000口)+(10,000円×100×2%)=1,020,000円

購入時の基準額と申込手数料を含めた額が購入時の価格です。申込手数料の計算にある100は購入した10万口を基準の1,000口で割った数値です。

譲渡損益

1,197,600円-1,020,000円=177,600円

譲渡損益は、購入したときと譲渡したときの基準額だけでは計算しません。申込手数料や信託財産留保額などの手数料を含めて計算します。今回はプラスになった場合のシミュレーションなので、購入価格よりも譲渡価格の方が高いです。譲渡によって利益を確定していることが分かります。

分配金のシミュレーション

分配金とは、投資信託を保有している期間に出資した投資家に支払われるものです。毎月分配型など、分配金が支払われるような内容だと、分配金が解約までに発生することがあります。例にある保有期間中に300円の分配金があったというのは、基準価格に対しての分配金です。そのため分配金を計算する場合は、保有している口数と基準口数を考えて計算する必要があります。

300円×10万口÷1,000口=30,000円

例の場合、分配金として発生した額は30,000円です。

購入代金は、申込手数料合わせて1,020,000円だったので、購入代金に対して2.9%の分配金があったことが分かります。

トータルのリターン

トータルリターンとはすべての利益の合計のことです。

まず1つ目のリターンが譲渡益の177,600円。購入価格に対して11.5%の利益です。

さらに分配金の30,000円も利益に含まれます。

例の場合トータルリターンは譲渡益と分配金を合わせた207,600円です。購入価格に対してトータルで20.6%の利益が出ています。例では、譲渡益も分配金もプラスになりましたが、そもそも投資信託はリスクのある金融商品です。毎回プラスになるとは限りません。プロが運用していても、突然の相場変動などでトータルではプラスになっても、期間中マイナスが出ることもあります。

かかる税金

税金が発生するのは、解約したとき、分配金があったとき、運用期間が終了したときの3つです。今回は解約(譲渡)と分配金が発生しているので、解約と分配金で税金がかかることになります。

・譲渡益にかかる税金

177,600円×15.315%(所得税)=27,199円

177,600円×5%(住民税)=8,880円

27,199円+8,880円=36,079円

・分配金にかかる税金

30,000円×15.315%(所得税)=4,594円

30,000円×5%(住民税)=1,500円

4,594円+1,500円=6,094円

譲渡益にかかる税金は36,079円、分配金にかかる税金は6,094円でした。トータルして、42,173円税金として支払うことが分かります。

ちなみに税金が控除された後の実際の手取りは以下の通りです。

(譲渡益)177,600円-36,079円=141,521円

(分配金)30,000円-6,094円=23,906円

合計 141,521円+23,906円=165,427円

手取りベースでみた場合、手にする利益は165,427円です。

譲渡損益がマイナスの場合にかかる税金は?

投資信託を保有してプラスになった場合を紹介しましたが、いつもうまくいくとは限りません。解約したときの価格が購入価格を下回ってマイナスになることもあります。マイナスになった場合も税金は発生するのでしょうか。以下の例をもとにシミュレーションしていきましょう。

(例)1,000口あたり10,000円の投資信託Aを申込手数料2%で10万口購入。

半年後保有していた投資信託Aを1,000口あたり9,000円で解約した。

譲渡時に発生した信託財産留保額は0.2%、保有期間中300円の分配金があった。

■譲渡損益のシミュレーション

マイナスの場合は譲渡損が発生します。譲渡損の求め方は、譲渡益と同じで「譲渡価格-購入価格」。計算方法は譲渡でプラスになったときと同じです。譲渡価格と購入価格それぞれ計算してみましょう。

解約時の価格

(9,000円-9,000円×0.2%)×10万口÷1,000口=898,200円

計算方法はプラスのときと同じです。ちなみにプラスのときと同様、信託財産留保額が計算に含まれていますが、これは償却まで保有していなかったときのペナルティで、度重なる譲渡によって顧客の流出を防ぐための費用です。償却まで保有していたときは発生しません。

購入時の価格

(10,000円×10万口÷1,000口)+(10,000円×100×2%)=1,020,000円

購入時の基準額に申込手数料をプラスして求めます。

譲渡損益

1,020,000円-898,200円=▲121,800円

譲渡損益の出し方もプラスになったときと同じです。今回は、購入時の価格に比べて解約した金額が少なく、マイナスになっています。

分配金のシミュレーション

300円×10万口÷1,000口=30,000円

分配金の計算も投資信託でプラスになったときと同じです。

ちなみに分配金とは、運用収益の分配のこと。例では分配金が発生したことになっていますが、銀行の利子とは違うため、毎月分配型の投資信託であっても、毎月分配金があるとは限りません。運用状況によっては以前の分配よりも少なかったり、支払いがなかったりすることがあります。

また分配金があった場合、運用成績の一部が支払われる形になるため基準価格は下がってしまいます。ただし、分配金が支払われたときの運用成績がよければ基準価格を維持したままの場合もあります。例では、解約時に基準価格が下がっていますが、運用成績の悪化だけでなく、分配金の発生も要因の1つかもしれませんね。

トータルのリターン

譲渡損益▲121,800円、分配金30,000円が投資信託Aでの運用結果でした。トータルリターンは、すべての運用成績を合計したもの。例では、譲渡と分配が発生しているので、2つを合算させます。

▲121,800円+30,000円=▲91,800円

トータルリターンは▲91,800円です。なお、運用成績がよかったかどうか、譲渡損益、または分配金だけでみてしまうのは誤り。トータルリターンこそが、投資信託の成績を示しています。もしトータルリターンが事前に分かるのであれば、投資信託選択の際に運用状況を確認しておきたいですね。

なお、今回はトータルリターンがマイナスになったので、確定申告をすることですでに確定した分配金の税金から還付を受けることができます。

かかる税金

・譲渡損益にかかる税金

なし

・分配金にかかる税金

30,000円×15.315%(所得税)=4,594円

30,000円×5%(住民税)=1,500円

4,594円+1,500円=6,094円

譲渡損益はマイナスになったので、所得税は発生しません。そのため、投資信託の運用でかかる税金は分配金の6,094円になります。しかし、トータルリターンもまたマイナスが発生していました。▲91,800円がトータルリターンなので、分配金で計算した税金も還付申告すれば取り戻すことができます。

ちなみに税金が控除された後の実際の手取りは以下の通りです。

(譲渡益)▲121,800円

(分配金)30,000円-6,094円=23,906円

合計 ▲121,800円+23,906円=▲97,894円

手取りベースだと▲97,894円、分配金の税金6,094円が戻ったと考えると手取りは▲91,800円です。

確定申告が必要なケースは?

投資信託の税金や計算について紹介してきましたが、実際自分で計算して確定申告する人は少数派かもしれません。投資信託を利用するにあたって証券口座を開設しますが、口座には、源泉徴収ありの特別口座、源泉徴収なしの特別口座、一般口座があるためです。一般的には、手間がかからない源泉徴収ありの特別口座で開設するため、証券会社で納める税金が計算され、代わりに税務署への納付が行われています。それでは具体的に確定申告が必要な場合とそうでない場合を確認していきましょう。

確定申告が必要なケース

確定申告は投資信託を保有しているからといって必要になる訳ではありません。確定申告の可能性が出てくるのは、投資信託を解約するなどして利益があった場合。利益があってかつ、源泉徴収されない特定口座、または一般口座で契約している場合は確定申告が必要です。

源泉徴収のない特定口座や一般口座は、利益が確定した時点で税金分が差し引かれないので、自分で税額を確定申告し、納付しなければなりません。ただし自分で確定申告する場合であっても、証券会社などが発行している年間取引報告書を使えば、必要な情報は記載されているので、思ったよりも簡単に確定申告を済ませることができます。

確定申告が必要ないケース

確定申告が必要ないのは、源泉徴収ありの特定口座を利用している場合です。原則、利益があると譲渡確定で源泉徴収されるので、自分で別に確定申告をする意味がありません。

ただし確定申告が必要なくても、確定申告をした方が税金的にお得な場合があります。例えば、ある証券会社Aの運用結果はプラス50万円だったのに、Bは▲20万円だったときです。投資信託は損益通算できるので、通算して利益30万円で、払い過ぎた税金の還付を受けることができます。他にも、これまでの譲渡損で繰り越し控除を受ける場合は確定申告するべきです。

このように、特定口座の源泉徴収ありを選択した場合は確定申告が基本的には必要ないですが、複数の会社にまたがって運用している場合、損失があった場合は確定申告で税金が戻ってくることがあります。

まとめ

投資信託は、解約(譲渡)、分配、償還、それぞれ利益があった場合税金が発生します。ただし一般的に投資信託を利用するための口座は源泉徴収ありの特定口座が選択されている場合が多く、確定申告しなくてもよいことがほとんどです。

しかし、損失が出た場合、損益通算したい場合などは確定申告が必要です。確定申告にあたって証券会社などが発行する年間取引報告書が必要なので、届いたらしっかり保管しておくようにしましょう。これから投資信託をはじめる場合は、合わせて口座選びも大切です。