定期預金などよりも利回りが高いことから人気のある「地方債」というものをご存知でしょうか。地方公共団体が発行しているため比較的安全性が高く、満期5年から30年までと幅広い期間の債券が発行されるので、安定的に長期運用で資産を増やすことができる魅力的な投資方法です。

今回は国が発行している国債、企業が発行する社債との違い、地方債の仕組みと運用のメリット、デメリットについて詳しく解説していきます。

地方債とは?

地方債とは地方公共団体が独自に発行する債券のことです。債券は投資家に対して買ってもらう「借用書」のようなもので、いわば「借金」です。地方債で発行した自治体の税収不足を補い、自治体の公共事業やインフラ整備、公営企業の水道光熱費の支払いに充てられます。また社会福祉や防災対策など日常生活に密着したところに利用されます。

地方債は証券会社や投資銀行で1万円から購入でき、固定金利で半年ごとに利子を受け取れます。2年債から30年債まであり、発行自治体により異なります。

地方債の仕組み

それでは地方債とはどのようなものか見ていきましょう。

個人で買える地方債には「全国型市場公募地方債(個別債)」と「住民参加型市場公募地方債」の2種類があります。

個別債は、都道府県などや市町村が発行して、誰でも購入できる債券です。一方で地方債は、発行する自治体に在住する住人および法人を購入対象にしています。

地方債のメリットは主に2つあります。まずひとつめは安全性が高いことです。地方債は自由に発行できる訳ではなく、財政赤字の状態では発行が制限されます。万が一、発行元が財政破綻したとしても、地方交付税などから利息や償還金が支払われる仕組みになっています。未払いになるリスクはかなり低いといえるでしょう。

ふたつめのメリットは金利の高さです。2018年の横浜市発行の債券の利率は、個別債の10年債で年率0.21%となっています。銀行の定期預金の利率が0.01%程度なので、比べてみると地方債は魅力的です。

国債や他の債権との違いは?

債券には地方債のほかに「国債」や「社債」などがあります。国債はその名の通り「国」が発行する債券で、税収不足で足りない分を補いたいときに発行されます。

ここまでは地方債と同じですが、用途と金融商品が異なります。地方債が発行元の地域のインフラや社会保障、防災対策などに使われるのに対して、国債は公共事業や貸付金の財源、国債の償還額に必要な資金調達に使われます。

国債には地方債と同じく、決められた利子を受け取る「利付国債」に加えて、利子の支払いが無い代わりに、発行価格(購入価格)が額面金額(償還金額)よりも安く販売される「割引国債」があります。

割引国債は満期を迎えたときに額面金額が償還されるので、購入時の発行価格との差額が利益になります。

また、社債は企業が発行する債券で、倒産などの金融リスクが高く、地方債より安全性が劣ります。

地方債運用のメリット・デメリット

地方債は満期まで保有していれば、リスクが限りなく少ない運用方法です。さらに地方債は銀行の定期預金よりも利率が高く、半年ごとに利子を受け取れ、満期を迎えれば額面金額が支払われます。このようなことから、投資初心者にはハードルの低い投資方法といえるでしょう。しかし地方債にもデメリットがあるので、その点は注意が必要です。ここからは地方債のメリットとデメリットについて解説していきます。

地方債のメリットは”利率”

地方債のメリットには安全性のほかにも、「利率」の高さがあります。「利率」とは、発行元が投資家に対して「売り出すときに支払う金利を決めたもの」を指します。この金利は、「表面利率」とも呼ばれています。例えば2018年の国債の利率は「5年債」で年率0.05%です。前述した通り、横浜市の年率は0.20%なので、国債よりも地方債を購入した方が利益を多く得ることができます。

また、地方債は株式のように市場で売買されるため「売買価格」が付いており、その価格は金利の影響を受けて毎日変わります。地方債は市場でも人気が高いので、売買価格が高くなる傾向があります。満期を迎える前に売りに出して、満期までに受け取る利子よりも高い利益を得ることも可能です。

地方債のデメリットも”利率”

地方債のメリットは高い「利率」ですが、これがデメリットになる場合があります。

地方債は満期前に売却できることから市場で売買されるため、市場の流動性が高ければ元本以上の価格で売却できる可能性があります。その一方で、流動性が低くなると元本割れの価格になる可能性もあります。

ひとつ例を挙げて解説します。利率1.5%の地方債が発行された後に、利率2%の地方債が新たに発行された場合、利率1.5%の地方債の方は運用面で不利になってしまいます。

例えば、利率1.5%の地方債を額面100円で購入したとして、価格が99.5円になった時点で売却すると売買価格が5円下落してしまい、当初に期待した運用益が得られないことになってしまうのです。

まとめ

債券と地方債のメリット、デメリットについて解説してきました。超低金利の定期預金に預けるよりは、地方債を購入して運用する方が将来に備えて資産を増やすことができるでしょう。3年・5年・10年などの長期運用すれば、償還までに利子を受け取り続け、かつ満期になれば元本も償還されます。保有している間に売却益が高くなると見込めれば、売却することも可能です。

地方債は自分の住む地域や応援したい地域の生活のために使われるので、地域貢献もできます。自分にも地域にも利益がある魅力的な投資です。ぜひ一度検討してみてはいかがでしょうか。