これまで厚生年金と共済年金に分かれていた被用者の年金制度が、平成27年10月に統一されました。厚生年金保険と共済年金の一元化でどのように共済年金の仕組みが変わっているかをごぞんじでしょうか。

官民格差の問題から共済年金の仕組みがどのように変わっているのか、どのようなメリットとデメリットがあるかなど、年金一元化について解説していきます。

被用者年金の一元化により、公務員の手続きが便利になりました

被用者年金一元化により共済年金の組合員も厚生年金保険の被保険者となり、それに伴い、厚生年金保険の被保険者の種類が4つの種別に分けられています。

従来の厚生年金保険の被保険者は第1号厚生年金被保険者、国家公務員共済組合の組合員は第2号厚生年金被保険者、地方公務員共済組合の組合員は第3号厚生年金被保険者、私立学校教職員共済制度の加入者は第4号厚生年金被保険者と呼び、それぞれが主に厚生年金保険の制度にそろえて統一されています。主な変更点について確認していきます。

被用者年金制度一元化によるメリットと相違点

前述のとおり、公務員の年金制度は厚生年金保険の制度にそろえて統一されています。統一されたことに伴い、共済組合などの加入歴と厚生年金保険の加入歴の情報が共有化され、年金の各種届け出がワンストップサービスで便利になっています。

しかし、公務員の方にとっては厚生年金保険の仕組みにそろえたことによるデメリットもあります。ここでは一元化による主な変更点について解説していきます。

届け出等受付のワンストップサービス

これまでは、共済組合の加入員は共済組合で、厚生年金保険の被保険者は年金事務所で、共済組合と厚生年金保険の加入歴が両方ある人は、それぞれ共済組合と年金事務所の両方で年金の請求手続きを行う必要がありました。

それが、平成27年10月以降に受給権が発生する人は、それぞれどちらの窓口でも受付ができるようになり、各種届け出の手続きや相談がワンストップサービスで行われるようになっています(統一前に権利が発生した共済年金に関する各種届け出は従来どおりです)。

統一後は、情報の共有化により一部添付書類も省略できるようになり、手続きが簡素化されています。

共済年金は、原則厚生年金にそろえて統一されました

統合による主な影響については以下のことが挙げられます。

1.被保険者の年齢制限

私学共済を除く共済年金の加入年齢に制限はありませんでしたが、厚生年金保険には上限があり70歳となります。

2.保険料率の引き上げ

これまでも段階的に引き上げられていたものの、厚生年金保険に比べ公務員共済と私学共済の保険料率は低い水準にありました。公務員は平成30年、私学教職員は平成39年まで保険料を段階的に引き上げ、厚生年金保険と同じ保険料になります。

3.障害給付の支給要件

障害給付の支給要件に、共済年金も私学共済年金も保険料の納付要件はありませんでした。統一後は、初診日の前々月までの保険料納付要件等厚生年金保険と同様の保険料納付要件を満たす必要があります。

4.遺族年金の転給

遺族年金の受給権者の先順位者が死亡などで失権した場合に次順位者に支給される転給制度が厚生年金保険にはないため、先順位者が失権しても次順位者には支給されなくなりました。

上記(1)から(2)に加え、在職老齢年金の支給停止の仕組みが厚生年金保険の制度に統一されたことにより、働きながら受け取る年金の支給停止金額が増加することもデメリットとして挙げられます。

職域加算廃止後の新たな年金払い退職給付とは?

共済年金の職域部分が廃止され、新たな年金として「年金払い退職給付」が創設されたことが、一番の大きな影響といえるでしょう。新しい退職給付は、半分は有期年金、半分は終身年金として原則65歳から支給され、民間企業の3階部分といわれる「企業年金」にあたるとされています。

有期年金は、10年または20年の支給を選択(一時金の選択も可能)することができます。保険料の発生や半分が終身年金ではなく有期年金になることを考えるとデメリットといえるかもしれません。改正の趣旨が民間被用者と公務員の公平性にあることもあり、厚生年金保険にそろえることで、先に説明した変更点を含めデメリットとなる部分が多くなっているとも考えられます。