「親から相続したアパートの収入があるけど、確定申告で何が経費になるの?」「相続した不動産を売却した場合の税金は?」相続した不動産を持つ方にとって、確定申告は毎年の重要な手続きです。3月15日の期限を前に、経費の範囲・申告方法・よくある疑問をわかりやすく解説します。
📋 目次
1. 相続した不動産と確定申告の関係
2. 賃貸として運用している場合:計上できる経費一覧
3. 減価償却費の計算方法
4. 相続した不動産を売却した場合の税金
5. 相続時の取得費・取得日の扱い(重要)
6. 申告に必要な書類と手続きの流れ
7. まとめ
1. 相続した不動産と確定申告の関係
相続した不動産に関して確定申告が必要になるのは、主に以下の2つのケースです。
ケース①:相続した不動産を賃貸に出している
家賃収入は「不動産所得」として、毎年確定申告が必要です(年間の不動産所得が20万円を超える場合)。
ケース②:相続した不動産を売却した
売却益(譲渡所得)が発生する場合は、確定申告が必要です。
💡 ポイント
相続した不動産が「空き家のまま」で収入も売却もしていない場合は、通常、確定申告は不要です。ただし固定資産税の支払い義務は発生します。
2. 賃貸として運用している場合:計上できる経費一覧
不動産収入から差し引ける経費を正しく把握することで、課税される「不動産所得」を適正に計算できます。
経費として計上できる主なもの
| 経費の種類 | 具体例・注意点 |
|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 年間の税額全額(賃貸用部分) |
| 管理費・管理委託料 | 管理会社への委託費用 |
| 修繕費 | 原状回復・維持のための修理費(資本的支出は減価償却) |
| 損害保険料 | 火災保険・地震保険(掛け捨て型は全額、積立型は一部) |
| 減価償却費 | 建物の経年劣化分(後述) |
| 借入金利子 | 不動産購入ローンの利息分(元本は経費にならない) |
| 広告宣伝費 | 入居者募集のための広告費 |
| 交通費 | 物件の管理・確認のための移動費 |
| 税理士報酬 | 不動産収入の申告に係る部分 |
| 通信費 | 不動産管理に使用した電話・インターネット費用(按分) |
経費にならないもの
- 元本の返済(ローンの元本部分)
- 所得税・住民税
- 相続税(ただし後述の取得費加算の特例あり)
- 私的な生活費(自宅部分の費用)
⚠️ 注意
自宅と賃貸が混在する建物(例:1階が賃貸・2階が自宅)の場合、経費は賃貸部分の割合に応じて按分する必要があります。
3. 減価償却費の計算方法
建物は時間の経過とともに価値が減少します。この減少分を毎年の経費として計上するのが「減価償却費」です。
計算式
減価償却費 = 取得費(建物部分) × 償却率
法定耐用年数と償却率
| 建物の種類 | 法定耐用年数 | 年間償却率(定額法) |
|---|---|---|
| 木造 | 22年 | 0.046 |
| 軽量鉄骨(2mm以下) | 19年 | 0.053 |
| 鉄骨造(4mm超) | 34年 | 0.030 |
| 鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 |
相続した建物の「取得費」の考え方
相続で取得した建物の減価償却の計算には、被相続人(亡くなった方)の取得費・取得時期を引き継ぐというルールがあります。
例えば、親が30年前に建てた木造アパート(取得費2,000万円の建物部分)を相続した場合:
- 木造の法定耐用年数:22年 → すでに耐用年数を超えている
- 耐用年数超過の場合の償却率:0.046(耐用年数の1.5倍=残存耐用年数で計算)
- 耐用年数超過の建物の減価償却費:取得費の5%を上限として計上可能な場合あり
⚠️ 注意
耐用年数超過の建物の減価償却計算は複雑です。正確な計算は税理士にご相談ください。
4. 相続した不動産を売却した場合の税金
相続した不動産を売却した場合は「譲渡所得税」が発生します。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 売却価格 ー(取得費 + 譲渡費用)
- 売却価格:実際の売却代金
- 取得費:不動産の取得にかかった費用(後述)
- 譲渡費用:仲介手数料・測量費・解体費用など売却のためにかかった費用
税率
| 所有期間 | 所得税率 | 住民税率 | 合計税率 |
|---|---|---|---|
| 5年以下(短期) | 30% | 9% | 39% |
| 5年超(長期) | 15% | 5% | 20% |
💡 ポイント
所有期間が5年を超えると税率が大幅に下がります。急いで売却する必要がない場合は、所有期間を考慮して売却時期を検討しましょう。
5. 相続時の取得費・取得日の扱い(重要)
取得費は「被相続人の取得費」を引き継ぐ
相続で取得した不動産を売却する場合、取得費は被相続人が実際に購入した金額(取得費)を引き継ぎます。
これは重要なポイントで、例えば親が30年前に1,000万円で購入した不動産を相続して3,000万円で売却した場合:
- 取得費:1,000万円(親の購入価格)
- 売却価格:3,000万円
- 譲渡所得:3,000万円-1,000万円=2,000万円(に税率がかかる)
取得費が不明な場合は、売却価格の5%を取得費とみなす(概算取得費)ことができます。ただし実際の取得費の方が高ければ実額を使う方が有利です。
所有期間は「被相続人の取得日」からカウント
売却時の所有期間(5年超かどうか)の判定は、相続発生日ではなく、被相続人が取得した日から計算します。親が30年前に購入した土地を今年相続して売却した場合、「長期(5年超)」として税率20%が適用されます。
相続税の取得費加算の特例
相続税を支払った場合、一定の要件を満たせば支払った相続税の一部を取得費に加算できる特例があります(取得費加算の特例)。
適用要件
– 相続等により財産を取得した者であること
– 相続税を支払っていること
– 相続開始の翌日から3年10ヶ月以内に売却していること
この特例を活用すると譲渡所得が減り、譲渡所得税の節税につながります。
⚠️ 注意
取得費加算の特例は要件・計算が複雑です。必ず税理士に相談の上で確定申告を行うことをおすすめします。
6. 申告に必要な書類と手続きの流れ
不動産所得の確定申告に必要な書類
- 確定申告書B(第一表・第二表)
- 不動産所得の収支内訳書
- 家賃収入の明細(賃貸借契約書・振込明細等)
- 経費の領収書・証明書類
- 固定資産税の納税通知書
- 減価償却費の計算根拠書類
不動産売却の確定申告に必要な書類
- 確定申告書B
- 譲渡所得の内訳書(土地・建物用)
- 売買契約書(購入時・売却時)
- 仲介手数料等の領収書
- 登記事項証明書
- 相続を証明する書類(戸籍謄本・遺産分割協議書等)
確定申告の期限
2026年の確定申告期限:3月15日(日曜)
期限を過ぎると無申告加算税・延滞税が発生する可能性があります。期限が迫っている場合は早めに着手しましょう。
7. まとめ
- 相続した賃貸不動産の家賃収入は「不動産所得」として毎年確定申告が必要
- 計上できる経費は固定資産税・管理費・修繕費・減価償却費・保険料・ローン利息など
- 相続した建物の減価償却は被相続人の取得費・取得時期を引き継ぐ
- 売却した場合の税率は所有期間5年超で20%(5年以下は39%)
- 取得費は被相続人の購入価格を引き継ぐため、長期保有の物件は注意が必要
- 相続税を支払っている場合は「取得費加算の特例」で節税できる可能性がある
- 確定申告期限は3月15日。書類準備を早めに進めること
相続した不動産の確定申告は、取得費の扱いや減価償却の計算が複雑です。特に売却を検討している場合は、事前に税理士へ相談することを強くおすすめします。
本記事の情報は執筆時点のものです。税制は変更になる場合があります。詳細は税理士または国税庁のウェブサイト(https://www.nta.go.jp)でご確認ください。
