そんな声を、同世代の方々からよく耳にするようになりました。実は、相続税をめぐるルールはここ数年で大きく変わっており、2026年もその移行期間のただ中にあります。この記事では、2026年時点で押さえておくべき相続税改正のポイントを、できるだけわかりやすくお伝えします。
相続税の基本は変わっていない
まず安心していただきたいのは、相続税の基礎控除(きそこうじょ:相続財産のうち税金がかからない金額の上限)は変わっていないという点です。
現在も「3,000万円+600万円×法定相続人の数」という計算式が適用されます。たとえば法定相続人(ほうていそうぞくにん:民法で定められた相続権を持つ人)が3人いれば、3,000万円+600万円×3人=4,800万円まで非課税です。
この基礎控除の枠内に収まる方は、相続税そのものを心配する必要はありません。ただし、「生前贈与(せいぜんぞうよ:生きている間に財産を譲り渡すこと)」を活用して節税を図ってきた方には、重要な変更点があります。
最大の変更点:生前贈与の「持ち戻し期間」が3年から7年へ
持ち戻しとは何か
相続税の計算では、亡くなる前の一定期間内に行った生前贈与を「なかったこと」にして、相続財産に加算し直す仕組みがあります。これを「持ち戻し(もちもどし)」といいます。
以前はこの期間が「亡くなる前3年以内」でした。つまり、3年より前に贈与した財産は相続税の計算に含めなくてよかったのです。しかし2024年の改正により、この期間が最終的に7年へと延長されることになりました。
2026年はどのルールが適用されるか
この変更は一度に切り替わるのではなく、段階的に移行しています。
| 亡くなった時期 | 持ち戻しのルール |
|---|---|
| 〜2026年末 | 従来どおり「3年以内」 |
| 2027〜2030年 | 移行期間(ハイブリッド計算) |
| 2031年以降 | 完全に「7年以内」 |
2026年中に相続が発生した場合は、まだ旧来の3年ルールが適用されます。しかし、2027年以降に相続が発生する可能性がある方は、今から7年先を見越した贈与計画を立てる必要があります。
延長分(4〜7年)には100万円の免除あり
7年ルールになると影響が大きくなりそうですが、救済措置もあります。延長された4年目〜7年目の贈与については、合計100万円までは相続財産への加算が免除されます。毎年少額ずつ贈与してきた方には、ある程度の配慮がなされています。
暦年贈与の活用はまだ有効か
暦年贈与とは
暦年贈与(れきねんぞうよ:毎年1月1日〜12月31日の1年間に受け取った贈与の合計が110万円以下であれば贈与税がかからない制度)は、長年にわたり相続税節税の定番手段として活用されてきました。
改正後も制度そのものは残っています。しかし、持ち戻し期間が7年に延長されたことで、亡くなる7年前から始めなければ節税効果が薄れるという点は意識しておく必要があります。
たとえば70歳の方が今から暦年贈与を始めた場合、77歳以降に亡くなれば7年前の贈与も持ち戻しの対象となります。「早めに始める」ことの重要性がより高まっているのです。
相続時精算課税制度の改正:使いやすくなった新しい選択肢
制度の概要
相続時精算課税(そうぞくじせいさんかぜい:生前に最大2,500万円まで贈与税なしで贈与でき、相続時にまとめて精算する制度)は、2024年1月から大きく使いやすくなり、2026年も引き続き改正後のルールが適用されています。
2024年改正の主なポイント
改正前は、一度この制度を選ぶと毎年110万円の暦年贈与の基礎控除が使えなくなるというデメリットがありました。しかし改正後は、年間110万円の基礎控除が新たに設けられ、この枠内であれば贈与税の申告も不要になりました。
具体的には次のような仕組みです。
- 2,500万円の特別控除:累計2,500万円まで贈与税がかからない(相続時に精算)
- 年間110万円の基礎控除(新設):こちらは相続時にも加算不要・申告不要
つまり、毎年110万円以内の贈与であれば、相続時精算課税を選んでいても完全に非課税で贈与できるようになったのです。暦年贈与との使い分けを検討する価値が高まっています。
注意!教育資金一括贈与の非課税制度が2026年3月末で終了
⚠️ 重要なお知らせ
子や孫の教育費を一括で贈与する場合に利用できた「教育資金一括贈与の非課税制度(最大1,500万円まで非課税)」は、2026年3月31日をもって終了しました。この制度を活用しようと考えていた方は、すでに手遅れとなっています。もし手続き中だった方は、金融機関に確認をとることをお勧めします。
2027年以降の注意点:賃貸不動産の評価方法も変わる
やや先の話になりますが、2027年1月から賃貸用不動産の評価方法が変わる予定です。
これまで、アパートや賃貸マンションを購入すると相続税評価額(そうぞくぜいひょうかがく:相続税を計算するときに使う財産の価格)が時価より大幅に低くなるため、節税対策として亡くなる直前に不動産を購入するケースがありました。
改正後は、死亡前5年以内に取得・新築した賃貸不動産については、通常の市場取引価格(時価)で評価されることになります。節税目的での直前購入は効果を失うことになりますので、不動産を活用した相続対策を考えている方は、早めに専門家へ相談することが重要です。
まとめ:2026年に知っておくべき相続税改正の要点
今回の改正のポイントをおさらいします。
- 生前贈与の持ち戻し期間が3年→7年に延長中(2026年中の相続はまだ3年ルール)
- 2027年以降の相続を見据えて、早めの贈与計画が重要
- 相続時精算課税に年間110万円の基礎控除が新設され、使い勝手が向上
- 暦年贈与は制度として存続しているが、持ち戻しリスクを考慮した長期計画が必要
- 教育資金一括贈与の非課税制度は2026年3月末で終了
- 賃貸不動産の直前購入による節税は2027年から制限される予定
- 相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×相続人数)は変更なし
今すぐできるアクション
- 自分の財産が基礎控除を超えるかどうかをざっくり計算してみる
- 暦年贈与を行っている場合、7年後の相続を想定したスケジュールを見直す
- 相続時精算課税制度が自分に向いているか、税理士に相談してみる
- 賃貸不動産での節税を検討している場合は、2027年の改正前に専門家へ確認する
相続税の節税対策は「早く始めるほど効果が高い」という原則は変わりません。法改正の内容を正しく理解したうえで、焦らず着実に準備を進めていきましょう。不安な点は、税理士や相続の専門家に相談するのが最も確実な一歩です。
