「親から不動産を相続したが、住む予定はない。このまま持ち続けるべき?それとも売った方がいい?」という悩みを持つ方は非常に多いです。答えは一概にどちらが得とはいえません。この記事では、相続後に不動産を「持ち続ける」場合と「売却する」場合のそれぞれの税金・費用・メリット・デメリットを整理して解説します。


📋 目次

  1. 相続不動産をめぐる2つの選択肢
  2. 不動産を「相続のまま保有」する場合の税金・コスト
  3. 相続した不動産を「売却」する場合の税金
  4. 売却時に使える3つの節税特例
  5. 「保有」vs「売却」比較一覧表
  6. 相続から売却までの流れ(7ステップ)
  7. まとめ・判断の目安

1. 相続不動産をめぐる2つの選択肢

不動産を相続した場合、大きく分けて次の選択肢があります。

選択肢 概要
①そのまま保有する 自分が住む・賃貸に出す・空き家のまま管理
②売却する 現金化して相続税の支払いや老後資金に充てる

どちらが有利かは不動産の評価額・利用予定・相続人の状況・税金によって異なります。


2. 不動産を「相続のまま保有」する場合の税金・コスト

相続税

不動産を相続した際にかかる税金が相続税です。重要なのが「不動産の評価額は時価より低く評価される」という点です。

  • 路線価地域の土地:時価の約80%で評価(地価公示価格等を基準)
  • 建物:固定資産税評価額(時価より低い)
  • 現金で相続するよりも相続税の評価額が低くなるため、不動産で相続する方が節税になるケースがあります

また、小規模宅地等の特例を適用できる場合、住宅として使っていた土地(330㎡まで)の評価額を最大80%減額できます。

保有コスト(毎年かかるコスト)

費用 内容
固定資産税・都市計画税 毎年1月1日時点の所有者に課税。土地の場合、住宅用なら軽減措置あり
管理費・維持費 建物の修繕・清掃・草取りなど
火災保険料 任意だが実質的に必要

⚠️ 注意:2023年4月から相続登記が義務化され、相続から3年以内の登記が必要になりました(義務化は2024年4月施行)。未登記のまま放置すると10万円以下の過料の対象になる可能性があります。


3. 相続した不動産を「売却」する場合の税金

売却時にかかる主な税金は次のとおりです。

① 譲渡所得税(所得税+住民税)

不動産を売って利益が出た場合にかかる税金です。

計算式:譲渡所得=売却金額 −(取得費+譲渡費用)

  • 取得費:被相続人が不動産を購入したときの費用
  • 譲渡費用:仲介手数料・印紙税など売却にかかった費用

税率は「所有期間」で決まります:

所有期間 税率(所得税+住民税)
5年以下(短期譲渡所得) 39.63%
5年超(長期譲渡所得) 20.315%

💡 重要:所有期間は「被相続人が取得した日から引き継ぐ」ため、親が長年住んでいた実家なら、相続直後に売却しても長期譲渡所得(約20%)が適用されるケースがほとんどです。

② その他の費用

費用 内容
登録免許税 相続登記時:不動産評価額の0.4%
印紙税 売買契約書の記載金額に応じて発生
仲介手数料 売却価格の3%+6万円+消費税(上限)

4. 売却時に使える3つの節税特例

相続した不動産を売却する際は、以下の特例を活用することで大幅な節税が可能です。

特例①:取得費加算の特例

相続税の申告・納税をした人が、相続開始から3年10ヶ月以内に売却した場合、支払った相続税の一部を取得費に加算できます。これにより譲渡所得が減り、税負担が軽くなります。

特例②:空き家の3,000万円特別控除

親が住んでいた家(空き家になったもの)を相続から3年以内に売却した場合、譲渡所得から最大3,000万円を控除できます。

※相続人が3人以上の場合は、一人あたりの控除上限が2,000万円に減額されます(令和6年1月1日以後の売却分から)。

適用期限:令和9年(2027年)12月31日までの売却

特例③:居住用財産の3,000万円特別控除(マイホーム売却)

相続後に自分が住んで、その後売却した場合は「マイホームを売った時の特例」(居住用3,000万円控除)が利用できる可能性があります。

⚠️ 注意:特例①と特例②はどちらか一方しか選べません。どちらが有利かは税理士等の専門家に相談して判断することをおすすめします。


5. 「保有」vs「売却」比較一覧表

比較項目 保有し続ける 売却する
相続税への影響 評価額が低いため節税になりやすい 売却益に新たに譲渡所得税がかかる
毎年のコスト 固定資産税・管理費が継続発生 売却後はコストなし
現金化 できない まとまった現金を確保できる
将来の価値 地価上昇なら資産価値が増える可能性 売却時の価格で確定
子への相続 不動産のまま残せる 現金として残せる
リスク 空き家問題・修繕費の負担 売却タイミングの見極めが必要

6. 相続から売却までの流れ(7ステップ)

売却を検討する場合、大まかな流れは次のとおりです。

  1. 遺産分割協議:相続人全員で不動産の扱いを話し合う
  2. 相続登記:法務局で名義変更(相続から3年以内に義務)
  3. 相続税の申告・納付:相続開始から10ヶ月以内
  4. 不動産査定:複数の不動産会社に査定依頼
  5. 売却活動・売買契約:買主と価格・条件を決定
  6. 引渡し・決済:残代金受取・登記移転
  7. 確定申告:売却翌年の2〜3月に特例適用と合わせて申告

💡 節税のベストタイミング:空き家の3,000万円控除などを活用するなら、相続開始から10ヶ月後〜3年10ヶ月以内に売却するのがベストとされています。


7. まとめ・判断の目安

  • 不動産の相続は現金より評価額が低いため、相続税面で有利になることが多い
  • 売却する場合、長期譲渡所得(約20%の税率)の適用を確認することが重要
  • 空き家の3,000万円特別控除は売却時の大きな節税チャンス(期限は2027年末)
  • 特例②と特例①は併用不可のため、どちらが有利かを事前に計算する
  • 固定資産税・管理費が毎年発生するため、空き家を長期放置するのはコスト面でも不利
  • 判断が難しい場合は相続専門の税理士への相談を強くおすすめします

本記事の情報は2026年3月時点のものです。税制・制度は変更される場合があります。実際の税金計算・特例適用については税理士などの専門家へのご相談をおすすめします。税務・法律の最終判断はご自身および専門家の責任のもとでご確認ください。