小学校、中学校、高校、大学と子どもが大きくなるにつれて教育費はかさんできます。子どもが大きくなったときのことも考えて計画的に資金を形成されているかと思いますが、子どもの希望で私立学校に変更になったなど、ときには計画から外れて、教育費が膨れ上がることもあるでしょう。
そんなとき、もし手元に教育費として捻出できる資金がなかったらどうしますか?奨学金のほかに考えたいのが、教育ローンの利用です。そもそも教育ローンは何かということから、国と銀行で販売されているそれぞれの教育ローンについて、メリット・デメリットをご紹介します。
教育ローンとは?
子どもが小さいうちはあまり問題視していなくても、大きくなると次第に教育費がかかるようになり、家計の大きな負担になってしまうことがあります。進路によっては多額の教育費がかかるかもしれません。しかし、できることなら子どもには自分で決めた進路を歩んでもらいたいものですよね。
金銭面で子どもの進路をサポートする際、考えたいのが教育ローンの活用です。そもそも教育ローンとはどんな目的のローンなのか、同じ教育資金を得るための奨学金と何が違うのか、教育ローンについて紹介します。
■教育ローンとは?
教育ローンとは、子どもの教育費を目的としたローンです。目的は教育関連に限定されており、学校の授業料や入学金、通学に必要な住居での敷金・礼金、引っ越し費用などに利用できます。中には教育費の範囲を広げて、修学旅行や部活や習いごとにまで活用できる教育ローンもあります。
対象の教育課程に関しては、幼稚園から大学まで、学校の種類も公立・私立を問わないとしているケースも多いです。ただし、対象となる教育費の用途は金融機関や商品によって変わってくるので注意しましょう。
なおいずれのケースでも、使用の範囲は子どもの教育に限られ、子どもの教育に関係のない住居費や生活費、車の購入費などに充てることはできません。本来の目的である教育費として利用を確認するために、教育ローンによっては学校から発行される納付証明証書などを提出しなければならないこともあります。
また、ローンの申し込みをするのは、教育を受ける本人ではなく、保護者です。保護者が責任をもってローンの契約を行い、返済も保護者に義務があります。一部学生が申し込める教育ローンもありますが、年齢制限があるなど条件もあるので、基本的に保護者が借りるものだと考えた方が良いでしょう。
■奨学金との違いは?
十分な資金がない場合、教育に充てるお金を捻出するために奨学金を利用する人もいるかと思います。奨学金も同じ教育費を目的にしたものですが、教育ローンと何が異なるのでしょうか。
まず、奨学金と教育ローンは、責任を負う人が違います。教育ローンは、先ほどご紹介した通り基本的には保護者が責任を負って返済するものですが、奨学金の利用で責任を負うのは学生である本人です。本人が、大学などを通して奨学金の申し込みを行い、奨学金は学生本人の口座に振り込まれる形で貸し付けられます。学生に直接貸し付けられるので、返済の責任を負うのも学生です。
しかし、学生の場合は保護者と違って職についていないため、学校を卒業して就職してから、本格的に返済していくことになります。
また、教育ローンは金融機関の審査によってローンが利用できるかが決まりますが、奨学金は金融機関とはまた違った形で貸し付ける人を判断しています。奨学金で重要な要素となるのは、一定の学力があることと、家計支持者の1人が一定以下の収入であることです。家計で教育費を捻出することが難しい優秀な学生に、将来返済の約束をして貸し出すというのが奨学金です。なお、奨学金の場合は家計支持者の年収がさらに一定以下の場合、無利子で貸し出されることがあります。
■教育ローンはどこから借り入れできる?
同じ教育費を目的としたものでも、奨学金と教育ローンは全くの別ものです。奨学金は利益を優先しない大学や教育機関、都道府県や民間の団体などが主導して実施しているものです。
一方、教育ローンはそうした奨学金を運営する団体とは全く違う組織が実施しています。日本政策金融公庫といわれる国の教育ローン、または銀行や信販系の会社などがサービスを展開しています。借り入れは、日本政策金融公庫の窓口、銀行などの窓口で可能です。
ほかにも、信販系の会社などと提携して、大学などの教育機関自体が教育ローンを展開しているケースもあります。
■教育ローンの比較ポイントは?
教育ローンがどのようなローンなのか、だいたいのサービス像は見えてきたかと思います。それでは、教育ローンを比較する際、どのような部分を見ていくべきなのでしょう。知っておきたい3つのポイントを紹介します。
・金利はどうか
教育ローンに限らずローンを契約する際に確認しておきたいのが、金利がどのくらいかということです。金利は、総支払額や毎月の支払額に影響します。可能な限り低い金利に抑えておきたいものです。銀行では、教育ローンを利用しやすくするためキャンペーンによって金利を優遇していることもあるので、調べて比較してみましょう。
・使用の範囲はどうか
教育ローンは教育費などを目的としたローンですが、どこまでを教育費として含めるかは金融機関によって変わります。入学金など限られた学費の支払いであれば使用範囲は狭くても問題ないですが、何か特定のことに利用したい場合は、使用の範囲が問題ないか、希望の用途は含まれているか確認しておきましょう。
・返済の期間はどのくらいか
返済期間は、国の教育ローンで15年、銀行などの民間の教育ローンなら10~16年程度です。ある程度長めに設定されています。ただしあくまでも目安なので、計画的に返済するためにも期間設定に無理がないか確認しておきたいです。
国の教育ローンのメリット・デメリット
国の教育ローンは、一般教育貸付ともいわれ、JFC(日本政策金融公庫)がサービスを運用しています。幼稚園児や小学生は対象外ですが、中学卒業以上の子どもの教育費であれば、学校に支払う教育費のほか、学校に通学するために借りた住居の費用、通学費、パソコンなどの費用、留学費用など幅広い用途で活用可能です。
充実したサービス内容だけでなく、35年以上の貸し出し実績があり、昔から利用されているのもポイントでしょう。それでは国の教育ローンは民間と比べてどうなのか、メリットとデメリットを紹介します。
■国の教育ローンのメリット
国の教育ローンの魅力は、金利がお得に設定されていることです。2018年9月時点の金利は、1.76%。半分とまではいかないまでも、民間の教育ローンの金利と比較するとだいぶお得です。しかも固定金利なので、ローン返済開始から教育ローンの支払いが完了するまで金利が上がることがありません。お得な金利で安定感のある教育ローンです。
たとえば入学金のみなど高額な借り入れでなければ金利はそこまで影響してきませんが、大学入学、授業料の支払い、大学近くへの引っ越しなどとなればそれなりにまとまったお金が必要になります。場合によっては、100万円、200万円単位で教育費が必要になることもあるでしょう。そんなとき、金利の低さは大きなメリットとなります。金利がお得な分、返済の負担が減るのでお得にお金を借りることができるでしょう。
■国の教育ローンのデメリット
国の教育ローンのデメリットは、条件が絞られることです。あくまで国の教育ローンは、家庭の経済状況によって希望する教育を十分に受けられない人のためのものです。そのため国の教育ローンには、銀行など民間の教育ローンにはない、世帯年収の条件があります。子ども1人なら世帯年収790万円(一定条件に該当する子ども2人以内の世帯での条件緩和で990万円まで可)、自営業などの事業所得者なら490万円までが上限です(※世帯年収の条件は子ども数で変わってきます。)。
ちなみに世帯年収というのは、世帯全体の年収のこと。夫の年収600万円、妻の年収400万円の場合、個人では上限を超えていませんが、世帯年収としては1,000万円になります。条件である世帯年収790万円(※990万円)を超えてしまうため、この家族の場合は国の教育ローンを利用することができません。
また、国の教育ローンは上限額が十分でない点もデメリットとしてあげられます。2018年9月時点の借り入れ上限額は350万円。海外留学の場合は一定の条件付きで450万円まで利用できますが、子どもが大学などに入学するとなると十分な額とはいえないかもしれません。仮に、大学で年間100万円の学費がかかったとして、6年間通った場合600万円は準備しておかなくてはなりません。子どもの希望する進路、利用の目的によっては国の教育ローンでは費用をまかなえない可能性もあります。
銀行の教育ローンのメリット・デメリット
教育ローンには、国の教育ローンのほか、民間の教育ローンもあります。民間の教育ローンの中でもおすすめなのが、比較的金利負担の少ない銀行の教育ローンです。
教育ローンを取り扱っている銀行は多く、用途や借り入れ上限などサービス内容がさまざまあります。銀行の教育ローンは、国の教育ローンと比べたときどのような特徴があるのでしょうか。銀行の教育ローンのメリットとデメリットについてご紹介します。
■銀行の教育ローンのメリット
銀行の教育ローンのメリットは、国の教育ローンと比べて商品が豊富で、自由度が高いことにあります。まず限度額の幅広さです。国の教育ローンは原則350万円と上限が決まっていますが、銀行の教育ローンなら、上限1,000万円を超えるサービスを提供していることもあります。350万円だと大学の費用をまかなうのに心もとないですが、1,000万円以上借りられる可能性があれば、進路や教育の選択肢も広がりますよね。
また、借りられる上限額だけでなく、利便性も銀行の教育ローンのメリットにあげられます。カードローンタイプを取り入れている銀行もあり、必要なときに個人の限度額の範囲内で何度もお金を借りられるので、継続的に教育費が必要なときに便利です。民間だからこそ実現する細やかなサービス、商品の豊富さが国の教育ローンと比較したときの魅力です。
■銀行の教育ローンのデメリット
銀行の教育ローンのデメリットは、国の教育ローンと比べたとき、金利が少し高く設定されていることです。銀行の場合、2%後半から5%程度が金利の目安です。国の教育ローンの金利は1.7%程度なので少し金利に開きがあることがわかるでしょう。
金利が高いということは、国の教育ローンと比べると利息の負担が大きいということ。返済期間が長ければ、その分毎月の負担は減らせますが、借り入れの期間が長ければ長いほど利息の合計額は増えてしまいます。借入期間が長くなるほど、比例して国の教育ローンと比べたときの負担が重くなるので注意したいです。
まとめ
子どもの教育費の準備には奨学金だけでなく教育ローンがあります。そもそも、奨学金は子どもが責任をもって返すもの、教育ローンは保護者が借りて返済するものなので内容は異なります。子どもの将来に負担をかけず教育費を用意するなら、教育ローンがおすすめです。
ただ、教育ローンといっても国の教育ローンと銀行の教育ローンとでは異なります。金利がお得なのは国の教育ローンですが、年収などの条件に縛られたり、上限額の設定が十分でなかったりデメリットもあります。より自由な選択ができる銀行の教育ローンがおすすめです。利用範囲がわからないなど、利用に不安がある場合は、金融機関の窓口を利用して相談してみましょう。