近年、注目を集めている確定拠出年金を導入する企業が増えてきています。お勤め先で企業型確定拠出年金を導入するという方もいるのではないでしょうか。
しかしこの制度には、肝心のメリットや通常の退職金との違いなどが少し分かりにくいところもあります。今回は企業型確定拠出年金のメリットや拠出金(掛金)のルールなど、企業型確定拠出年金を理解する上で大事なポイントを詳しく解説していきます。

企業型確定拠出年金とは

確定拠出年金とは、企業や加入者が毎月一定額の掛金を拠出して、投資信託などの金融商品を購入し、自身で運用して60歳以降に受け取る年金制度のことを指します。従来の確定給付年金と異なり、運用の結果次第で将来受け取る年金の額が違ってきます。

企業型拠出年金の特徴は、企業が掛金を拠出し、従業員が自己責任で運用します。運用次第で受け取る額が変わるリスクを負う反面、会社が拠出した掛金が加入者の資産となるので、元本割れのリスクを負いません。

加入するメリットとは

企業型拠出年金に加入するメリットは、主に3つあります。

1.税制優遇措置が充実している
2.豊富な商品から自由に組み合わせて購入できる
3.社外(金融機関)に拠出金を積み立てているので、倒産しても保護される

1.税制優遇措置が充実している

企業型確定拠出年金には税制上の優遇があり、運用で得た利益が全額非課税となります。一般的な金融商品で得た利益は課税対象になり、20.315%が課税されるので税制優遇措置は大きなメリットです。受け取り時には、一時金(一括受け取り)であれば「退職所得控除」、年金で受け取る場合は「公的年金控除」が適用されます。拠出する掛金も非課税となります。

2.豊富な商品から自由に組み合わせて購入できる

確定拠出年金の運用商品は、安全性従事の「元本確保型商品」と収益従事の「投資信託」の中から好きな商品を組み合わせることができます。企業によって金融機関が決まっており、あらかじめ商品が用意されていますので、それぞれの商品の特徴をふまえて選ぶことが重要です。

3.社外(金融機関)に拠出金を積み立てているので、倒産しても保護される

企業型確定拠出年金は金融機関に積み立てているので、企業が倒産してしまっても運用資産は保護されます。

企業型確定拠出年金の拠出金(掛金)

企業型確定拠出年金では、企業が決まったルールのもとに掛金を拠出し、従業員はその掛金で運用を行います。
ここからは、拠出金(掛金)の「拠出限度額と掛金の拠出ルール」、企業の拠出する掛金に従業員自身が掛金を上乗せして運用できる「マッチング拠出」制度、最後に給与で受け取る一部を掛金として拠出するか、そのまま本来通り給与として受け取るか選択できる「選択制確定拠出年金」の3点について解説していきます。
実際にお勤め先でこの制度が導入されている方にとっては特に重要な内容なので、ひとつずつ詳しく見ていきましょう。

拠出限度額と掛金拠出ルール

企業型確定拠出年金の拠出額の上限は法律で定められており、これを超えて拠出することはできません。企業型確定拠出年金のみ採用している場合の上限額は月額55,000円、確定給付年金もしくは厚生年金を併用している場合は月額27,500円となります。

掛金の拠出は、「定額」「定率」「定額と定率の組み合わせ」のいずれかでルールを定める必要があります。「定額」は、勤務歴や貢献度などを考慮せず、一律の金額を掛金とするものです。

「定率」は、給料等の客観的な数字に一定率を掛けた額を掛金とするもので、給料もしくは退職金の規定などに定められた額を使用するのが原則となっています。

「定額と定率の組み合わせ」はこの2つの要件を組み合わせた制度です。

掛金を上乗せできる「マッチング拠出」

企業が負担する掛金に従業員自身が掛金を上乗せして運用する「マッチング拠出」という制度があります。より多くの掛金で資産運用がしたい方は、マッチング拠出の利用を検討するのも良いでしょう。マッチング拠出の掛金の掛金には上限があり、「従業員が拠出する掛金が、企業の掛金を超えない」「企業の掛金と、従業員の掛金の合計額が、掛金の拠出限度額を超えない」この2つの条件に収まる金額となっています。

前述した通り、掛金の合計額は法律で定められているので、これを超えることはできません。

企業型拠出年金制度を導入していてもマッチング拠出の制度を採用していない企業もあります。自分の企業ではマッチング拠出を利用できるのかどうか確認してみましょう。

受け取り方を選べる「選択制確定拠出年金」

「選択制確定拠出年金」とは、受け取る給与の一部を確定拠出年金に拠出して積み立てるか、現行のまま給与として受け取るか選択できる制度です。

選択制確定拠出年金制度を利用するには、労使合意に基づいて給与体系を変更する必要があります。掛金の上限は55,000円です。55,000円以内で、3,000円以上1,000円単位で拠出することができます。

また、拠出金の額はライフスタイルの変化に応じて金額を変更することが可能です。

選択制確定拠出年金には、社会保険料の軽減、転職や退職に伴う資産を持ち運べるなどのメリットがありますが、その反面「原則60歳までは資産を引き出せない」「社会保険料の軽減による各種給付の減額」など考慮する点があります。

まとめ

企業型確定拠出年金のメリットや拠出金の仕組み、ルールなどについて解説しました。メリットはもちろん、拠出金の上限額やルールもしっかり理解することは非常に大切です。マッチング拠出と選択制確定拠出年金の使い方によっては将来受け取る時の資産額に差が出てくるので、こちらも合わせて理解しておくと良いでしょう。
「企業型」と「個人型」どちらに加入するか悩んでいる方は、この記事の解説を基にじっくり比較検討してみてください。